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第十九話「山頂」

反省を終えて山登りを再開する。


ここからは、山頂まで続くなだらかな登り坂である。


もっとも、なだらかな登り坂とは言ってもゴツゴツとした岩の上を歩いて行くので、しっかりと足元を確認して歩かなければ岩に足を取られて転んでしまうだろう。





山頂の台地へと続く丘陵を、のんびりと歩いて行く。


地面の岩は太陽の光を浴びて暖かく、その武骨な質感に足ツボをマッサージされているかのような感覚を覚える。


足元を確認しながら歩いていたので気が付いたのだが、この岩山の石の質は標高に応じて変わってくるようだ。


石の種類自体は麓から頂上にかけて同一の花崗岩で構成されていると思われるが、山の中腹を過ぎたあたりから岩の表面にひび割れが目立ってきている。


花崗岩は、含有している鉱物の熱膨張率の違いから、温度差による風化を受けやすい石だと言われている。


この岩山には、太陽光を遮る木々すら生えてないのだ。


昼間に強く熱せられた石が、夜間に急激な冷却を受けることは想像にかたくない。


昼夜の温度差が激しく、それに伴う風化の影響を強く受けているのだろう。






「少し暑くなってきたかな。」


山の気温は100m登るごとに0.6度が下がると言われているのに、平地よりも山の上の方が暑く感じるというのは不思議な感覚である。


青空を見上げて、太陽の位置を確認する。


太陽の位置から考えれば、今が昼の2時くらいだろうか。


昼の2時と言えば、日中で一番気温が高くなる時間帯である。


日没までに残された時間は、およそ3時間から4時間といったところか。


なるべく早く登頂して、乾いた木々を集めて火を起こそう。


夜が訪れるのは早いのだ。






山頂に向けて登山を続ける。


緩やかな傾斜の先には、頂上である台地の稜線が見えている。


岩山の裾野からは確認できなかったのだが、中腹から頂上にかけての岩の風化は激しい。


むしろ、山頂に近づくにつれて岩の風化が激しくなっている。


岩山の岩を見れば、どの岩にも各所に深いひび割れがあり、最近崩れたであろう新鮮な断面すら見ることが出来る。


中腹を越えて急勾配の坂や崖が無くて本当によかった。


ボロボロに風化した急勾配の坂や崖を登ることもご免こうむりたいが、このように岩の風化が激しくなってくると、崖崩れや落石の危険が高まるので急な斜面に近づくだけでも危険なのだ。






それでは、どうして山頂に向かうに連れて急激に岩の風化が進んでいるのだろうか。


同じ剥き出しの岩山だというのに、どうして麓の岩だけ風化を免れているのだろうか。


この山の標高は、おそらく300m前後といった所だろう。


そのような小山であるというのに、どうして頂上と麓で岩の質にこれだけの差異が生じているのだろうか。


気のせいだろうか、岩山を登るにつれて気温がどんどん高くなっているように感じる。


さりとて、もうすぐ頂上である。


多少の疑問は後で考えよう。


今登っているのが最後の坂道なのだ。






そして、頂上である台地に辿り着き、僕は言葉を失った。


台地の上に広がっていたのは、どこまでも続く赤土の荒野だったのである。

【持ち物】

白い布

蔦の命綱


【スキル】

木登りLv.1

崖登りLv.0

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