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第8話 憎めない奴ら

サブタイトル、前書き、後書きなんてフレーバーに過ぎないのに、どうしても考えすぎてしまう。

しれっと小洒落た事を書ければ最高にCoolなんですけどねぇ。

 友達になった後、オレたちは個々の目的のために行動し始めた。

 オレの目標は物資補給だ。

 そういう訳で村の道具屋に向かったのだが……。


「げっ、嬢ちゃんは……」

「あ、こんにちは」


 そこにいたのは、アレクに突っかかっていたハイネルという人だったか。

 正直に言うと彼にあまり良い印象は無かったので、バツの悪い笑みを浮かべる事しかできなかった。


 店内を見回すと、店というよりは一軒家の中に大量の農具が置いてあるといった印象だ。

 ほとんどが使い古された様子で、新品のものは数えるほどしかない。

 村という狭いコミュニティだから、販売ではなく修繕の方が需要があるのだろうか。


「一応聞きたいのですが、剣ってここで扱っていますか?」

「剣というか武具全般がないな。全く売れないからな」


 当たり前と言えば当たり前だ。

 武器は人や魔族と戦う時、つまり戦争の中でしか需要がない。

 緊急時ならともかく、村で武器を取る必要性は少ない。

 (くわ)や斧など、武器として使えなくもない農具もあるが、専用の武器とは使い勝手が違う。


「狩猟用のナイフでいいので売ってもらえませんか?」

「分かった。これだ」


 そう言って渡されたのは、石の刃で作られたナイフだ。

 ()は動物の骨でできており、削ってできた曲線が指にちょうどよく合う。

 切れ味はともかく、取り回しは便利そうだった。


「そういえば嬢ちゃんはご立派な剣を持ってたけど、あれはどうしたんだ」

「あれは戦闘では使えないんですけど……大切な物なので」


 貴重品(国宝)なので間違ってはいない。

 大切な物というフレーズと、オレが一人旅をしているという境遇から盛大な勘違いをしたのか、ハイネルさんは若干涙ぐんでいる。

 両親は別の世界だけど、存命中だぞ。失礼な。


「そうか、その歳で嬢ちゃんも苦労してるんだな……」

「だ、大丈夫ですよ、結構苦労には慣れてますから。それと、呼び方はユウでいいです」

「いいんだ。無理はしなくてもいいんだぞ、ユウちゃん!」


 もう誤解は収まりそうにないし、放置しておくとしよう。

 機会があれば、ちゃん呼びは是正したいけれど。


 ハイネルさんは意外と気さくな人のようだ。

 アレクへの態度が辛辣なので、人のよさそうな笑顔、泣き顔に困惑してしまう。


「なあユウちゃん、確か昨日はアレクの家に泊まったんだよな?」

「はい、そうですけど……」

「悪いことは言わんが、アイツと付き合うのはもうやめとけ」

「……どういう意味ですか」


 またこの雰囲気だ。

 アーガス村の人たち特有の、アレクを排斥しようとする動き。

 何があって、アレクは孤立してしまったのだろうか。

 それを聞いておきたいので、ハイネルさんの言葉に耳を傾ける。


「どういう意味も何も」

「邪魔するよ」


 続きをハイネルさんが話そうとしたタイミングで、一人の老人が家に入ってきた。


「おっと、先にこっちの対応をしていいか? ユウちゃん」

「いいですよ」

「悪いな」


 ハイネルさんと老人は、 今年の麦の収穫量は期待できるだとか、キーニスさんの家畜の調子が悪いだとか、村の現状を共有している。

 会話内容から、老人がオーキスという名で、アーガス村の(おさ)だという事も分かった。

 そう言った話に参加するという事は、ハイネルさんは村全体の監督役といった所だろうか。


「これで共有すべき案件は一通り話しましたな」

「ああ。ところでハイネルは、そこの彼女と何を話していたのかな?」

「……アレクに関する事を、伝えようとした所でしたよ」


 ハイネルさんから気まずそうな雰囲気が流れる。

 神妙な面持ちで納得したオーキス村長は、オレとハイネルさんにこう言ってきた。


「その件については、私から話してもいいか?」

「いいですよ、オレ……私も聞きたかった所ですから」

「長い話になるだろう。この後、時間は空いているかな?」


 とはいっても、物資の補充以外に別段する事はない。

 ただ買い忘れをしてもいけないので、補給を先にしてしまいたい所だ。


「じっくり話を聞きたいから、旅の補給が済んでからでいいですか」

「ああ、もちろんだ」


 ハイネルさんから道具を買う用事はもうない。

 食料品の買うため、ここは一旦失礼した。


 道すがら、アレクという少年の事を思い返す。

 控え目な性格だけど、優しい少年。

 それが彼から受ける印象だ。

 嫌われる要素はあまり見受けられない。


 アレクは過去にオレ以外の友人ができた事がないと言っていた。

 口振りからして、同年代の子と交流すらなかった様子だ。


 子供は無邪気で奔放だ。

 放っておけば勝手に遊んで友情が芽生えるのが子供社会の常だ。

 そうならなかったなら、そこに横やりを入れた大人たちの思惑がある訳だ。


 そこまでしてアレクを孤立させたい村人たちの意図は何なのだろうか。

 ジクジクと消えない悪寒が、肌から離れなかった。


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