第3話 ユーキ1/2
シリアス終了です。
ここからは割とほのぼのした回が続くのでゆっくり楽しんでいってね!
「朝か……。いや、日も高いし昼か」
瞼の裏側も照らすほどの明るい陽射しによって、オレは目を覚ました。
ギーグを倒した後、オレは川辺にキャンプした。
テントも何もない、木の根を枕にしただけの雑なキャンプだが。
陽射しを手で遮ってみると、服が大分ブカブカになっているのが分かった。
吸血鬼化の影響でここまで体が縮んでしまったのか。
結構気怠さが残っているのは体型の変化に体力が追いついていないからだろうか。
朝食として携帯食料を口に放り込む。
それは前世での固形栄養食を思わせる直方体の形をしている。
あれと違って味も匂いがほぼしない上に、水無しでは飲み込めないほどパサついている。
控え目に言って不味い。
その上、ブカブカな袖が引っかかって食べづらい。
水筒の水を飲みながら携帯食料3個を腹に収め、面倒な食事を義務的に終えた。
食事後、オレは現状整理をする事にした。
まずは服を脱ぎます。
……別にいやらしい意図は一切ない。吸血鬼化の進行がどの程度進んでいるかを確認するためだ。
視線を下に向けると、オレの体は予想外の変化を迎えていた。
「え!? 女になってる!?」
そういえば、ギーグはオレの事を女顔だの、坊主とは呼べないなど言っていた。
……あの時点で女性化の兆候も見られたのか。
苦節16年を共にした、我が息子は別れを告げる事なくオレの元からいなくなった。
尋常じゃないほどのショックを受けたが、突然変異だから仕方ないと飲み込んだ。
「銀髪だったから薄々分かっていたけど、やっぱりリリシアっぽいな」
今の自分の姿を確認するため、川面を覗き込んだ。
銀髪に翠の瞳。彼女と共通の特徴を確認した後、吸血鬼の象徴とも言える部位を確認する。
「イー」と発音しながら口を開くと、可愛らしく立つ八重歯が見えた。
こんな所まで彼女にソックリになっていて思わず苦笑が出た。
顔だち自体ははオレの遺伝子が残っているようだ。
全体的に可愛い女性らしい物になっているけれど。
体型の方は……ただでさえ薄いリリシアの胸をまな板になるまで擦り下ろしたような絶壁だ。
というか体のパーツが全て小さい。
ちんまいという言葉が似あうほど、全体的に小っちゃい。
四肢やお腹は筋肉のキの字も見られないほど肉が落ちており、代わりに程よく脂肪がついている。
全体的にほっそりしているのに、触ればぷにぷにとした弾力が返ってきた。
……控え目に言って少女、有識者からすると幼女とも呼べる外見になってしまっている。
「いや、リリシアに似ているのはともかく、何だってこんな小っちゃくなっているんだ!?」
リリシアはちょっと小柄で150cm前後の背丈ではあったけど、それでも14~15歳だと分かる体型だった。
どこの辺りがと言われると、ウエストやヒップの艶めかしい曲線がだ。
胸は……お察しだ。
「さらば、オレの身長よ……」
元々チビだったオレは、ここ1年で急成長して176cmまで急激に伸びた。伸びたのだ……。
目算でしかないが、今のオレはきっと140cmほどの背丈もない。
ただでさえ地球にいた頃は低身長で揶揄われ、異世界でそれを克服した途端にこれだ。
知人全員より頭一つ分低い身長は流石に屈辱的だ。
別の意味で、もう皆の下に戻れなくなった。
アイツらの事だから、きっとこんな姿を見たら全力でおちょくるだろう。
特にリリシアとシェリアからは禿げ上がるほどに頭を撫でられる。
色んな意味で絶望し、四肢を地についた途端。
木陰の方から、小枝を踏む音が聞こえた。
「誰だ!」
音源の方向に振り返り、即座に火の矢を6本展開する。
相手には抵抗の意思がないのか、木陰から即座に飛び出して両手を上げてきた。
木陰から出てきたのは、14歳くらいの少年だった。
戦意がない事をアピールするためなのか、ブンブンと左右に首を振っている。
「ああ、急な物音でビックリしたんだ。ゴメンな」
そういってオレは火の鏃を収める。
急に攻撃されそうになったら誰だって驚くだろう。
「オレはちょっと旅をしていてな、今はちょっとキャンプから目覚めたばかりだったんだ」
とりあえず自己紹介をしようと、気さくに声をかけてみる。
だが、彼は。
「おーい? 聞こえてるかー?」
もう一度声をかけるも、再び反応なし。
もしかして小さくなった影響で肺活量が下がり、声量が足りていないのだろうか。
声を届かせるために近づこうとしたら、彼はようやく口を開いた。
「……へ」
「へ?」
「へ、へ、へ、変態だー!」
あ、全裸なの忘れていた。
TSしたら裸を見られるのはTSっ娘の基本スキル、古事記にもそう書いてある。