第三夜
「じつは・・・桃、男の子だったので~す!」
ガタン!!
まるなは椅子から転がり落ちた。
「おおお男の子????!!!!桃ちゃんが?!」
パソコンの画面のコメントも一斉にUPされていく。
「桃ちゃんが男の子?!」
まるなは座り直し、画面に思いっきり顔を近づけて桃の顔を食い入るように見た。
「確かに・・・髪を切って化粧を落とせば、線が細い美少年に見えるかな・・・?」
むしろ、言われてみればそっちの方がしっくりくる。
「驚かせてごめんね。でもさ、桃も15歳じゃん?そろそろ、女の子じゃ通用しなくなると思ったんだ。体もごつくなるし、声も低くなるでしょ?・・・気持ち悪いよね。
だから、これからはしばらくお休みして、ちゃんと男の子になって帰ってきたいと思いまーす!」
ピーピーピー
まるなのラインがせわしなく着信を知らせる。きっとこの動画を見た友達グループからだろう。
「男の子・・・・いいな・・・」
まるなはショックが治まると、ものすごく羨ましくなった。
「きっと桃ちゃんは身長も伸びて、筋肉もついて、カッコイイ男の子になるんだ・・・。いいな・・・ボクもそうなったらいいのに・・・」
自分の姿を鏡に映す。
お人形みたいな顔、小さくて痩せているのに胸だけが大きくて、どこからどうみえも女の子にしか見えない。
嬉しくもないのに男の子からはやたらとモテて、そのせいで大好きな女の子からは嫌われてしまう。
しばらくしてちょっと落ち着いたので、ラインの返信をしようとスマホを見ると、いつもの顔ぶれの中にまぎれて、まったくしらない人からメッセージが届いていることに気付いた。
「”k”って誰だろ?友達登録したっけ?」
”k”・・・(キミを本来の姿に戻す方法がある)
”まるな”・・・(本来の方法?)
まるなは思わず返信していた。
”k”・・・(キミは本当は、こことは違う世界に男の子として生まれるはずだった)
「えっ!」
”まるな”・・・(どういうことですか?!)
”k”・・・(キミをその世界に連れて行くことはできる。)
「その世界・・・って・・・。こことは違う世界・・・?どんな世界?」
”まるな”・・・(それは、どんなところなんですか?)
”k”・・・(それは自分で確かめるしかない。そこに行きたいか?)
なぜかまるなの中で、この人を疑う気持ちはなかった。
”まるな”・・・(行きたいです!自分の本当の姿になりたいです!)
”k”・・・(承知した)