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残酷な夜の月  作者: 丸めがね
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第二夜

”好きな人がいる”というのは、まるなが告白されて断る時の常套句だった。

それが一番煩わしくなくていい。


だいたいの男の子はそう言うと引き下がってくれるし、

”好きな人って誰?”と聞かれれば、”親戚のお兄ちゃん”などと適当なことを言えばいいのだ。


しかし慶介はそれでもあきらめなかった。

「親戚の人ってどんな人なの?歳はいくつ?」

「頭が良くて、優しい人です。T大に通ってる18歳で・・・。」

まるなはこんな時の答えもちゃんと用意していた。そこいらの中坊ではかないっこないスペックを並べるのだ。


慶介がうなだれて言葉を失っている隙に、まるなはぴょこんと頭を下げて言った。

「皆川先輩、珈琲ごちそうさまでした。これからも素敵な先輩でいてください。・・・生徒会のご用事もないみたいなので、今日はこれで失礼します。」

やや機械的な調子で口角を上げて微笑み、去っていくまるな。


本当のことが言えればいいんだけど。


まるなはそう思っていた。


”ボクは女の子が好きなんだ”


凄く小さい時から、まるなは自分が”女の子じゃない”と思っていた。だからといって”男の子だ”とまでは思っていなかったのだが、ピンクの服も可愛い声も違和感しか感じてこなかった。


「お人形さんみたいね」と可愛がられることがなぜか嫌だった。


そんなまるなの気持ちに反して、背は伸びないのに胸は膨らみますます女の子要素を濃くして成長していった。

(せめて背が高くて、かっこいい女の子になれたらいいのにな)

そう願ってまるなが日々苦手な牛乳を飲んでいることを誰も知らない・・・。


まるなは急いで家に帰って、自分の部屋へ駆け込んだ。

今日は、大好きな新人アイドル「桃ちゃん」が、週に一回動画配信する日なのだ。

火曜日6時半きっかり、間に合った。まだ5分前だ。


まるなは机に向かってパソコンを開き、ドキドキしながらその時を待った。


そして時間になり、可愛い歌声とともに画面にピンクの花や蝶やマカロンが飛んだあと、

「みなさーん!こんにちは~!」

と桃の声が聞こえてきた。


アイドルらしい華やかな衣装を着て、どこかのスタジオのセットの森の木に腰かけている。

「桃ちゃん、可愛い・・・」

まるなはうっとりと眺めた。

桃は長くて真っすぐな茶色の髪に、長い手足、白い肌のキリリとした美少女だ。

あまり媚びない感じが男女問わず中高生に人気がある。


いつものように歌のプロモが終わり、写真集の宣伝が終わり、お悩み相談コーナーが終わった後、桃は真面目な顔になっていった。


「桃から、みなさんに重大なお知らせがあります!」




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