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残酷な夜の月  作者: 丸めがね
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第一夜

2016年も暮れ、11月半ば。


クリスマス前だからだろうか。街中にはいつもよりカップルが溢れているように見える。




私立清山せいざん中学校


学校の中も例外ではなく、10月の文化祭の流れでくっついた初々しいカップルが何組もいた。


校舎の裏、体育館の横に、中学二年生の 大原 まるな はラインで三年の先輩に呼び出されていた。

「まるなちゃん、突然呼び出してごめんね」

そういったのは生徒会長をしている 皆川 慶介。緊張しているために、この寒いのに彼は少し汗をかいている。


まるなは150センチぐらいの小柄な子、慶介は177センチ。まるなは思い切り顔を上げ、慶介はかなり見下ろしながらの会話だった。


「あの、なんですか・・・?」

小さくておとなしそうなまるなだが、胸だけはアンバランスなほど大きい。少し話す度に上下に揺れて、それを見る男子にあらぬ妄想をさせていた。

「あの・・・皆川先輩?」

慶介もそんなまるなの胸の揺れを見て、言いたいことを言えなくなっていた。

今日呼び出したのは、もちろん告白するためなのだが、いざとなるとなかなか言えない。


「こ、珈琲好き?」

ちょっと裏声になりながら慶介が言えたのはこれだった。

「好きですけど・・・」

まるなは困った顔をする。

(今日は用事があるんだけどな・・・時間がないんだけどな・・・)

学校で一番モテるイケメン、成績優秀な男子を目の前にしてもまったく動じない女の子。

「あ、じゃあオレおごってあげるよ。一緒に飲もう」

「スミマセン、せっかくなんですけど私用事が・・・」

「生徒会の話があるんだよ!」

慶介はなんとかまるなが帰ってしまうのを阻止した。もちろん生徒会の話は嘘だ。


一番近い自動販売機で慶介はカップコーヒーを二つ買った。

体育館の階段に腰かけて二人並んで飲む。

長すぎる袖からちらりと見える白くて小さな指で、熱そうにカップコーヒーを持つまるな。

頬は寒さでほんのりピンク色に染まっている。

黒くて艶々した、肩より少し下まで伸びたまっすぐな髪は、サラサラと木枯らしに流れる。

(かわいい・・・)

慶介はしばらく見とれていた。


まるなはおとなしくて目立たないグループにいるが、実際男子からの人気は断トツで高かった。

小さくて可愛い、しかも巨乳。成績も性格も悪くない。

だれが彼女を落とすのか、それは男子の中でも密かな話題になっている。


暗黙の了解で、告白は3年生しかしてはいけない、という流れになっていた。

これまで10人以上の勇者が当たって砕けていった。


まるなファンの中で皆川 慶介は別格で、誰もが”あいつがコクったら誰でも落ちるだろう”と噂していた。それで、慶介もクリスマスを一緒に過ごすべくそろそろ出番だと今日呼び出したのだ。


カップコーヒーが半分まで減った時、慶介はカフェインの力を得て思い切って告白した。

「まるなちゃん、好きです。付き合ってください。」

まるなはカップの中の琥珀色の液体から目を離さないまま答えた。

「ごめんなさい。私他に好きな人がいるんです。」

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