表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

カチカチ山

作者: あるちゅん

残酷なお話です。心のきれいな方はごらんにならない方がよろしいかと思います。

かちっかちっ


「おや?何の音でやんすか?」


タヌキは振り返ってウサギに聞こうとしましたが、背中に背負った薪があんまりにも重くて振り返れず、ウサギの姿は目に入りませんでした。ウサギは満面の笑顔で答えます。


「これは、この山がカチカチ山と呼ばれる由縁なんですよ」

「へぇ、そうでやんすかぁ」


そうタヌキはまんまとだまされて、薪を運び続けます。とっても重かったのですが、タヌキは頑張ります。なぜならこれが自身の贖罪になると信じていたからです。タヌキは自分の十字架に思いを馳せます。


 あの日、オイラの不甲斐無さに稼ぎがままならず、ひもじい子供のためとはいえセコイ盗みを繰り返すオイラにとうとう痺れを切らしたジイサンにヨメを人質にとられ、とうとう投降したでやんす。

 ふんじばられて殺される寸前、やっぱり怖くなってもがいたでやんす。縄が解けてなんとか逃げようとしたら、バアサンがすんごい形相で追いかけてきただ。でも解けて絡まった縄に足引っ掛けて、オイラを煮殺すためにジイサンが用意していた鍋にバアサンが飛び込んだんでやんす・・・・・・

 けぇってきたジイサンが勘違いして・・・・・・あぁ、恐ろしいでやんす。家の片隅で震えていることしか出来なかっただ・・・・・・

 この薪集めは、バアサンなくして、元気も殺意も萎えたジイサンを助けることになる、ってウサギさんに言われて、少しでもと思って、精を出しているんでやんす。

 きっと、こうやって、頑張っていれば、いつか、いつかこの十字架も・・・・・・


ゴォーーーーーーーー


ウサギはタヌキに火炎放射の炎を浴びせました。


ウサギの右手にはガススプレー、左手にはジッポ式ライターが握られていました。


「あちーーーーーーーあちあちあちあち!!!」


タヌキは薪も何も取り落として、その場にぶっ倒れて気絶してしまいました。



「うぅ・・・痛いでやんす」


目が覚めると、タヌキはウサギの家に寝かされていました。


「な、なにがあったでやんすか?」

「さあ?突然タヌキさんがあついあつい、と言い出しただけですよ。どうかしましたか?」

「なんだか、すごい火力で背中を燃やされたような気がしたでやんす」

「薪集めをサボる言い訳ですか?そんな姿をみたらおじいさんがなんと言うか・・・・・・」


タヌキは何も言えません。確かに背中を燃やされた気はしたのですが、ウサギが嘘を言うわけがありません。


「まあ、でも確かに背中はひどい火傷のようになってますからねぇ。仕方ありません。私が妙薬を塗って差し上げましょう。これを塗ればすぐに仕事に戻れるはずですよ」

「やっぱりウサギさんは優しいだなぁ。ありがとうごぜぇやす」

「では、はい」


べちゃ、ぬりぬり


「ぎゃひーーーーーーーーーーあ、ああ、あああああああ・・・・・・・

ぐ、ぐぐ、ぐぐ、ぐぎぐげげ、うぅぅ・・・ぐぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!!」

「どう?効くでしょ?」


塩、コショウ、醤油にワサビ、マスタードにハバネロを塗りこまれて涙目でタヌキは悶絶しました。


「さぁ、もう仕事ができるはずです。次の仕事は湖で魚を取ることですよ」

「ウ、ウサ・・・・・・ウサギさん・・・辛いでやんす。こ、これは無理でやんす」

「おぉや、もうあなたの罪をお忘れですか?ふぅ・・・・・・まぁいいですよ。お爺さんにはそのようにお伝えしましょう」

「うぅ・・・・・・わかったでやんす。でもホントにやばいだ。なにか取り返しのつかないダメージを負った気がするでやんす」

「がたがた言ってないで、ささっと立たんか!」



タヌキは薪を背負っているときよりもずっと重い体を引きずるようにして、湖にたどり着きました。そこには目を見張るような大きな船とタヌキが乗ったらそれでもういっぱいという程の小さな船がありました。


「さぁ、この船で漁をするよ。どっちの船がいい?」

「じゃ、オイラは小さい方で。この体じゃ、そんなにいっぱいはとれねえし」

「ほぉ。この期に及んで怠惰に心を委ねるか。そんな心根で果たして罪が流されるのだろうかね」

「・・・でも、さすがにこんなに大きい船は・・・」

「わかったよ。君には失望した。お爺さんにもそう伝えておこう。」


お爺さんのことを言い出されては仕方ありません。


「わかったでやんす」


タヌキはとうとう大きな泥舟に乗って湖の真ん中に乗り出しました。



ウサギがお爺さんの家を訪ねました。


「お爺さん、依頼どおり。始末したよ」

「ご苦労さん。あの田舎ダヌキが、わしに刃向かうからこうなるのじゃ、がっははははは、くうぅ酒がうまい!」

「いやァ・・・・・・・こわやこわや」


こうして、お爺さんとウサギの敵討ちは成功したのでした。


めでたし、めでたし

かちかち山って、タヌキもどうしようもないワルですが、ウサギだってとんとんですよね。


悪人になら、何をしてもいいのでしょうか?


悪人にだって、いろいろ事情あるかもじゃないですか。


って、書いてから、思いました。


感想・ご指摘お待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言]  もしかして、太宰治の『お伽草子-カチカチ山』に影響をうけてたりしませんか?
[良い点] 日本の昔話とか、グリム童話とかって、子どもの頃は単なるおとぎ話ですが、歳を重ねて改めて読み返してみると、以外と昼ドラみたいな人間模様を書き出している話ってありますよね。 面白かった…
[良い点] 別の観点からの見方なのでまた新しい物語が楽しめた。 [一言] とてもよかったです。 僕もあるちゅんさんみたいな斬新な小説が投稿できるように頑張りたいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ