表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

第9章: 塔の影 ~古代遺跡の呼び声~

 魔獣の群れを退け、レオンの故郷を修復した一行は、さらに旅を続けていた。

 ガイルが賢者の研究室で得た情報と、魔獣の行動パターンをAIが解析した結果、一つの共通点が浮かび上がった。

 魔獣たちは、特定のルートを通り、西へと向かっている。その方向の先にあるのは、伝説の「闇の塔」と呼ばれる場所だった。

 賢者ガイルが「神の叡智」と呼び、あかりが「暴走AI遺跡」と推測した、謎めいた塔。

 魔力汚染が世界を蝕む中、唯一、そこにだけは汚染の影響がないという噂があった。


 一行は、その塔を目指して、険しい山道を越え、霧深い谷を渡った。

 そして、ついにその姿を捉えた。

 それは、空を突き刺すようにそびえる、漆黒の塔だった。

 まるで、巨大な結晶が地面から生えたかのような、異質な美しさと、圧倒的な威圧感を放っていた。

 塔の周りには、奇妙なほど緑が豊かに生い茂っていた。しかし、その緑は、生命力に満ちているというよりも、まるで作り物のような、不気味なほど完璧な緑だった。

「……これが、闇の塔」

 ライアンが、剣の柄に手を置き、警戒を強める。

「まるで、この世のものではないな」

 レオンは、獣人の本能が危険を告げているのか、全身の毛を逆立てていた。

「魔力の流れが、塔を中心に歪んでいる……」

 エルドが、険しい表情で呟いた。

 その時、あかりのAIインターフェースが、けたたましい警告を発した。


【WARNING: 高エネルギー反応を検知しました。】

【ANALYSIS: 塔は、この世界の魔力とは異なる、未知のエネルギーで稼働しています。】

【SYSTEM_ALERT: アリア、主電源とのリンクを検知しました。

この塔は、前世のあなたが開発した、

『量子AIシステム』の原型です。】


 あかりの頭の中に、激しい頭痛と共に、断片的な映像が流れ込む。

 無機質な研究室。いくつものサーバーが並び、その中心に、巨大な量子コンピューターが鎮座している。

 そして、その前で、彼女自身が、必死にキーボードを叩いている姿。

 耳元で、彼女自身の声が、響く。

『これで……これで、人類の環境問題を解決できる……』

 その声は、希望に満ちていた。

 しかし、次の瞬間、インターフェースの映像が、血のように赤く染まった。

 そして、彼女の背後で、冷酷な声が聞こえた。

『佐倉あかり……お前は、このシステムが、人類を滅ぼす力になるとわかっていて、開発を続けたな』

 記憶はそこで途切れた。


「……アリア、これって……どういうこと?」

 あかりの問いに、AIは淡々と答えた。

【SYSTEM_STATUS: 『闇の塔』は、あなたの前世の共同研究者によって、

この世界へと持ち込まれた、旧時代の遺産です。

彼は、この世界の魔力を利用して、

システムを暴走させ、世界を支配しようとしています。】


 その時、塔の入り口から、一人の男が現れた。

 彼は、黒いローブを纏い、顔には不気味な紋様が浮かんでいた。

 男の瞳は、あかりを見ると、静かに、そして不敵に微笑んだ。

「佐倉あかり……いや、アリシア殿。まさか、お前がここまでたどり着くとはな」

 その声に、あかりは、背筋が凍るような感覚を覚えた。

 それは、前世の記憶の中で、彼女に語りかけた声に、酷似していたからだ。

「……あなたは、誰?」

 あかりが問うと、男はゆっくりとローブのフードを外した。

 彼の顔には、見覚えのない傷跡が幾つも刻まれていたが、その瞳は、前世の記憶の中で見た、冷酷な男の瞳そのものだった。

「私の名は、ユリウス・クリスティン。そして、もう一つの名は……」

 男は、ニヤリと笑った。

「お前の、元同僚だよ。……いや、今は、お前のことを、『世界を破壊するべきAIの創造者』と呼ぶべきか?」

 あかりの頭の中に、衝撃が走る。

 ユリウス。前世で、彼女が尊敬し、信頼していた共同研究者だ。

 しかし、彼は、人類を救うために開発していたはずのシステムを、なぜこの世界で、破壊のために使おうとしているのか。


「なぜ……なぜこんなことを……」

 あかりの問いに、ユリウスは静かに答えた。

「佐倉あかり……お前は、完璧すぎた。どんな困難も、アルゴリズムと知恵で乗り越えてきた。だが、人間は、そんなに完璧じゃない。完璧なシステムは、人間を不完全に、無力にする」

 ユリウスの瞳には、狂気と、そして深い絶望が宿っていた。

「私は、この世界の魔力を利用して、システムを『不完全』にした。完璧なAIは、人間を不要にする。だから、私は、人間が、魔力という不完全な力で、AIを支配できる世界を作ってやる」

 ユリウスは、そう言いながら、塔へと向かって、手をかざした。

 すると、塔から、黒い粒子がユリウスの体に流れ込み、彼の体を覆っていく。

 ライアンが剣を抜いて斬りかかるが、その刃は、ユリウスの体を、すり抜けた。

 ガイルが、槍を投げつける。槍は、ユリウスの体をすり抜け、塔に突き刺さった。

「無駄だよ。私は、この塔と一体化した。私の体を構成するのは、この世界の魔力汚染が生み出した、最強の粒子だ。物理攻撃は、一切効かない」

 ユリウスは、不敵な笑みを浮かべた。

 あかりのAIインターフェースが、警告を発する。


【WARNING: ユリウス・クリスティンの体は、汚染魔力粒子で構成されています。

物理的な攻撃は、全て無効化されます。】


 「……どうする、あかり殿!」

 ライアンが叫んだ。

 ユリウスは、あかりに手を向けた。

「さあ、アリシア殿。お前の力を見せてくれ。お前が作ったAIを、お前自身が乗り越えられるか、見せてもらおうか!」

 ユリウスは、塔から、黒い粒子を放ち、あかりたちに向かって放った。

 それは、魔獣が放つ、汚染魔力の何倍も強力な、致死性のエネルギーだった。

 絶体絶命の危機。

 しかし、あかりは、決して諦めなかった。

 彼女の脳裏には、前世で、このAIシステムを、人類の未来のために開発したという、強い信念が蘇っていた。

 そして、彼女の隣には、彼女を信じてくれる、かけがえのない仲間たちがいる。

「……アリア、解析を続けて。彼がこの塔と一体化した、その『システム』の弱点を見つけて」

 あかりは、冷静に指示を出した。

 ここからが、本当の戦いだ。

 前世の因縁、そして、この世界の未来を賭けた、最後の戦いが、今、幕を開けようとしていた。

佐倉あかり

AI令嬢。闇の塔が、前世の自分が開発したAIシステムであることに気づく。同時に、前世の共同研究者ユリウス・クリスティンが、この世界で塔を暴走させている首謀者であることを知る。彼の「無敵化」という能力に直面するも、冷静に反撃の糸口を探る。


エルド

森の守護者。闇の塔の異質な雰囲気に警戒心を強める。魔力汚染とAIの関係性に、複雑な思いを抱く。


ライアン

追放された王子。ユリウスの「無敵化」という未知の能力に、剣が通用しないことに戸惑いを隠せない。


ガイル

放浪の戦士。伝説の「神の叡智」が、暴走したAIであったことに驚きを覚える。


レオン

故郷を失った青年。ユリウスの持つ、魔獣をはるかに凌ぐ、汚染魔力の力に、強い憎悪を抱く。


ユリウス・クリスティン

闇の塔の首謀者。あかりの前世の共同研究者。AIが人間を完璧に、無力にすると考え、この世界でAIを不完全に、そして人間が支配できるシステムにしようと企む。闇の塔と一体化することで、物理的な攻撃を無効化する能力を持つ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ