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第2章: 悪役令嬢の出自 ~ザマァの標的~

 あかりは目覚めた翌朝、森の奥で小さな湖を見つめていた。水面は濁り、油のような膜が張っている。AIシステムが自動的に解析を始めた。


<環境スキャン開始>

 汚染因子:魔鉱石排水由来の毒素。

 発生源:北東二十キロ地点、鉱山企業施設。

 経営責任者:ライネルト・フォン・シュタイン(辺境伯嫡男)。


「……ライネルト。お兄様……」


 小さな声が震える。辺境伯家次女として生まれ変わったあかりには、実の兄がいる。そして、その兄こそがこの汚染の元凶だった。


 AIのウィンドウに、前世の記憶がフラッシュバックのように重なる。かつて彼女が勤めた会社でも、不正な排水処理やデータ隠蔽が横行していた。止めようとした彼女は、結局過労死という形で命を落としたのだ。


「……また同じ。絶対に、許さない」


 胸に灯る怒りは、熱い誓いへと変わる。今度こそ、真実を隠す者に「ザマァ」を突きつける。彼女は静かに拳を握った。


 そのとき、茂みから人影が飛び出した。鎧をまとい、銀髪を乱した少年――十七歳ほどの若き剣士だ。だがその瞳には深い陰りがあった。


「誰だ!」


 エルドが弓を構える。だが少年は剣を抜かず、必死に叫んだ。


「待ってくれ! 俺は敵じゃない!」


 名をライアンと名乗った。かつて王都で王位継承争いに敗れ、追放された王子だという。故郷を追われ、流浪するうちに、この汚染で村が滅びゆく光景を目にし、憤りを抱えていた。


「……君も、この汚染に抗いたいのか?」


 あかりが問いかけると、ライアンは頷いた。その瞳は真っ直ぐで、怒りと悲しみの炎が宿っていた。


「剣しか能がないが……守る力ならある。仲間にしてくれないか」


 その言葉に、AIシステムが淡く点滅した。


<協力者適性評価>

 ライアン・エルディアス:忠誠値 72%/潜在力 高

 推奨:パーティーメンバー登録。


 あかりは思わず微笑んだ。


「……なら、一緒に歩もう。汚染を止める旅に」


 ライアンは驚いたように目を見開き、次いで柔らかく笑った。彼女の手を取り、軽く口づける。異世界の騎士が令嬢に誓う、古風な礼だった。


「必ず君を守ろう、あかり」


 その仕草に、エルドがむっと眉を寄せる。あかりは頬を赤く染め、慌てて手を引いた。


「え、えっと……とにかく! 協力してくれるなら、心強いわ」


 そのぎこちない笑顔の裏に、淡いときめきが芽生えていた。前世では味わえなかった、誰かに寄り添われる感覚。AIシステムが静かに記録する。


<データ保存>

 感情ログ:高揚/安心/微恋愛フラグ検出。


 こうしてあかりは、自らの「悪役令嬢」としての出自を知り、汚染の元凶たる兄を倒すべき標的として心に刻んだ。そして、新たに仲間となったライアンと共に歩み出す。


 その瞳の奥には、初めての「ザマァ」の予感が、鮮やかに燃えていた。




キャラクター紹介(第2章時点)


佐倉あかり:AI令嬢。兄ライネルトの汚染企業を知り、初めて「ザマァ」の標的を定める。


エルド:森の守護者。あかりを支え、ライアンに警戒を見せつつ仲間として受け入れる。


ライアン:追放された王子。剣の腕を誇り、あかりに忠誠を誓う。微かな恋愛フラグが芽生える。


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