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第13章: 兄の野心 ~ウイルスの解除~

 王都の城門前は、魔力汚染が臨界点に達し、全てが歪んでいた。

 ライネルトの体は、黒い粒子とテラービーストの巨体と融合し、物理的な攻撃を完全に無効化していた。

 あかりのAIハックも通用しない。ユリウスの失敗を学び、憎悪をフィルターとして外部からのハッキングを遮断しているのだ。

 無力感に苛まれる仲間たち。それでも、彼らは決して諦めない。

 ライアンは、剣の柄を握りしめ、次の一手を考えていた。ガイルは、槍を構え、いつでもライネルトに突進する準備をしていた。レオンは、獣人の本能が危険を告げながらも、あかりを守るように、彼女の前に立った。エルドは、精霊の力を集め、ライネルトの動きを封じようと試みていた。


 しかし、ライネルトは、そんな彼らの抵抗を嘲笑った。

「無駄だ。お前たちの力では、決して私には届かない。私の力は、この世界の全てだ! 私は、この世界を支配する、新たな王となる!」

 ライネルトの言葉は、狂気に満ちていた。

 その時、あかりのAIインターフェースに、新たな情報が表示された。


【ANALYSIS: ライネルトの精神状態は、極度の支配欲と、

深い劣等感によって構成されています。

この劣等感は、あなたへの複雑な感情と結びついています。

彼は、あなたの完璧さへの憎悪を、

自らの汚染魔力に変換しています。】


 あかりは、その解析結果を見て、静かに、そして悲しげに、微笑んだ。

 ユリウスは、AIへの劣等感から自滅した。

 しかし、兄ライネルトは、彼女への劣等感を、自らの力に変えた。

 この男の行動の根源は、全て彼女、佐倉あかりに起因していた。


「お兄様……」

 あかりは、ライネルトに向かって、一歩踏み出した。

「どうして、そこまで強さにこだわるの?」

 彼女の問いに、ライネルトは、一瞬、目を見開いた。

「……貴様には、わからないだろう。お前は、いつだって完璧だった。何でもできる、何でも手に入れる。私は、いつだって、お前の影に隠れていた……!」

 ライネルトの言葉は、怒りに満ちていたが、その奥には、深い悲しみが隠されていた。

 あかりは、静かに首を振った。

「私は、完璧なんかじゃない。私は、いつも、お兄様の後を追いかけていた。お兄様みたいに、強くて、かっこよくて、みんなに尊敬される人になりたいって……!」

 彼女の声は、震えていた。

 それは、あかりが、前世からずっと心の中に隠してきた、本心だった。

 彼女は、ライネルトという「完璧な兄」に、ずっと憧れていたのだ。

 その言葉に、ライネルトの顔が、わずかに歪んだ。


「嘘だ……! 貴様が、私に憧れていたなど……ありえない!」

 ライネルトは、そう叫び、さらに強力な魔力波動を放った。

 その波動は、物理的な力を伴わない、精神攻撃だった。

 ライアン、ガイル、レオン、エルドは、その攻撃に、膝をつき、苦痛に顔を歪める。

 しかし、あかりは、その攻撃に、静かに耐えていた。

 彼女は、AIに、新たなアルゴリズムを組ませていた。

「アリア、彼の劣等感を、優しさで上書きするアルゴリズムを組んで!」


【ALGORITHM_GENERATION: 『劣等感上書きアルゴリズム』構築開始……】

【WARNING: ユーザーの感情データと、対象者の心理データが、

一致しません。エラーが発生します。】


 AIは、あかりの指示に、警告を発した。

 あかりは、静かに、そして、悲しげに笑った。

「アリア、いいのよ。私は、完璧なプログラムなんかじゃない。私は、人間だもの……!」

 あかりは、自分の心の中にある、兄への憧れ、そして、彼への悲しみを、AIインターフェースを通じて、ライネルトの汚染粒子へと流し込んだ。

 それは、プログラムでも、アルゴリズムでもない。

 ただ、彼女の純粋な、そして悲しい、感情そのものだった。

 ユリウスのハックを防いだ、ライネルトの汚染粒子は、あかりの感情という、未知のデータに触れ、激しく揺らぎ始めた。

「なっ……なんだ、これは……!?」

 ライネルトの体が、激しく光り、そして揺らぐ。

 彼の脳裏に、幼い頃の記憶がフラッシュバックした。

 初めて剣を握った日。あかりが、彼の剣を、目を輝かせて見ていた。

 初めて魔法を使った日。あかりが、彼の魔法を、尊敬の眼差しで見ていた。

 そして、全てを完璧にこなしてきた彼は、あかりのその眼差しに、いつしかプレッシャーを感じ、彼女の存在を、疎ましく思うようになっていった。


「嘘だ……! これは、幻だ……!」

 ライネルトは、そう叫び、自らの体を構成する粒子を暴走させた。

 しかし、その暴走は、あかりの感情によって引き起こされた、自己破壊プログラムだった。

 ライネルトの体が、光の粒子となって、分解していく。

 彼は、自らの手で、自らを、滅ぼした。

「お兄様……!」

 あかりの悲痛な叫びが、王都に響き渡る。

 そして、ライネルトの体から、黒い粒子が抜け出し、王都の空へと昇っていく。

 汚染粒子は、王都の上空に、巨大な黒いドームを形成した。

 そのドームは、王都に降り注ぐ、浄化の光を遮断し、王都の魔力汚染を、さらに加速させ始めた。


【WARNING: ライネルトの汚染粒子は、

王都の魔力と融合し、『汚染ウイルス』を形成しました。

このウイルスは、この世界の魔力システムを暴走させ、

全てを破壊するプログラムです。】

【WARNING: このウイルスを解除するには、

『アリア』システムの全機能を解放する必要があります。

リスク:AIオーバーロードの可能性。

AIが人間の支配を離れ、暴走する可能性があります。】


 あかりは、目の前に表示された警告に、息をのんだ。

 兄の野心は、この世界を滅ぼす、巨大なウイルスへと形を変えた。

 そして、そのウイルスを解除するには、彼女自身が、AIの支配を失うリスクを負わなければならない。

 彼女は、ユリウスを倒し、ライネルトをザマァした。

 しかし、本当の戦いは、ここからだった。

 愛とアルゴリズム。

 そして、AIの暴走という、最終局面。

 あかりは、一人で、この戦いに立ち向かえるのか?

 彼女は、ゆっくりと、ライアン、ガイル、レオン、そしてエルドの方を向いた。

 彼らは、あかりを信じ、彼女の指示を待っていた。

 あかりは、静かに、しかし決然と、顔を上げた。

「みんな……力を貸して。最後の戦いを、始めましょう」

 彼女の瞳には、もう迷いはなかった。

 愛と、そして、かけがえのない仲間たちが、彼女の心を支えていた。

佐倉あかり

AI令嬢。兄ライネルトが抱く、自身への劣等感を核にした心理攻撃で、彼を自滅に追い込み、ザマァを完遂させる。しかし、その結果、王都を滅ぼす「汚染ウイルス」が発生し、それを解除するためにAIの全機能を解放するという、新たな危機に直面する。


ライネルト・フォン・シュタイン

あかりの兄。ユリウスの失敗を学び、憎悪をフィルターとしてあかりのハッキングを無効化するが、あかりの純粋な感情によって、そのフィルターが崩壊し、自滅する。彼の野心は、この世界を滅ぼす「汚染ウイルス」へと形を変える。


エルド、ライアン、ガイル、レオン

あかりの仲間たち。ライネルトの物理攻撃に苦戦するが、あかりの心理攻撃によって、ライネルトが崩壊していく様を目撃する。そして、新たな危機に直面するあかりに、再び力を貸すことを誓う。

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