既知の技術
少し時間オーバーしてしまいました、すみません
洞窟の奥から迫りくる小型のアンセレス群。その統率された動きに、Glowたちは即座に戦闘態勢を取った。
「全員、位置につけ!」槍を構えたガレオが前衛に立ち、リアリアは魔力を練り始める。Glowは冷静に状況を把握しながら、背後から群れ全体をスキャンしていた。
「数は約20。体表の組成に変化はないが、動きはこれまでの個体と明らかに異なる。」Glowは分析結果を即座に共有した。「確実に頭部を破壊する。」
「了解!」リアリアは手早く詠唱を終え、炎の矢を放つ。「《炎神よ、その牙で敵を砕け!》」
炎の矢が先頭のアンセレスに命中し、一体が地面に崩れ落ちた。だが、それを見ても残りのアンセレスたちは怯むことなく、むしろ統率された動きで陣形を変えて進んでくる。
「こいつら、本当に指揮されてるみたいだな!」
ガレオが叫びながら槍を振るい、一体を貫いた。
Glowは周囲を警戒しながら戦いに参加する。腕部プラズマ砲「メガ・ブラスト」を調整し、群れの中央に向けて精密射撃を行う。一瞬の閃光が洞窟内を照らし出し、数体のアンセレスが一気に蒸発した。
「これで少しは減ったわね…」
リアリアがそう言った次の瞬間、洞窟の奥から重々しい足音が響いてくる。それは小型のアンセレスたちとは明らかに異なる、大型の個体だった。
「これは……!」Glowが思わず声を漏らす。
洞窟の奥から現れたのは、明らかに並のアンセレスとは異なる姿の存在だった。人型をしているが、身体の一部は光る金属で覆われており、黒い甲殻のような部分が随所に混ざっている。頭部はマスクのような構造物に覆われ、両腕には鋭いブレードが装備されている。
「何、あれ!?」リアリアが目を見開く。
「魔獣…じゃない? でも、明らかに魔力を感じる。」
Glowは素早くスキャンを開始したが、その結果に驚愕した。「これは…私の世界の技術が一部流用されている。ナノマシンの反応だ。」
「おい、冗談だろ?」ガレオが目を細める。
「そんなもん、こっちにはないはずだ。」
「事実だ。」Glowは低く答えた。
「この存在は、私の世界の技術と、この世界のアンセレスが融合している。」
その瞬間、人型の敵が動き出した。異様なほど滑らかな動きで接近し、光るブレードを振り下ろす。
「散れ!」Glowが叫び、全員が咄嗟に回避する。
ブレードが地面に深い傷を刻むと同時に、周囲に衝撃波が走った。
「やばいぞこいつ!」ガレオが槍を構え直す。
「なんて動きしやがる!」
Glowは冷静に敵を観察しながら分析を続けた。
「スピードとパワーは高いが、動きはパターン化されている。リアリア、足元を封じる魔法を。ガレオ、隙を見て一撃を狙うんだ。」
リアリアが詠唱を始める。
「《炎よ、その力で敵の足を縛れ!》」
敵の足元から炎の蔦のような魔力が生え出し、動きを一瞬だけ止める。ガレオが槍を構え突進するが、敵はブレードを振り回して攻撃を防ぐ。
「くそ、守りも固いぜ…!」
ガレオが歯ぎしりしながら後退する。
その隙にGlowは敵の背後に回り込み、片刃ブレードを展開した。鋭い刃が敵の背中に命中し、甲殻を貫く。敵は苦しげな音を立て、動きが鈍くなる。
「今だ!」Glowが叫ぶ。
リアリアが巨大な炎の球を生成し、敵の胸部に向けて放つ。「《炎神よ、その怒りを我が刃に変え、敵を滅ぼせ!》」
炎が敵を飲み込み、爆発音が洞窟内に響き渡る。
煙が晴れると、敵は動かなくなっていた。
だが、Glowはその残骸を見て、胸の奥に奇妙な感覚を覚えた。敵の体内から見覚えのある部品が露出していたのだ。それは、Glowの故郷で使われていたユニットの断片だった。
「…間違いない。」Glowが呟いた。
「この存在には、私の世界の技術が使われている。そして、この辺りのアンセレスを指揮している何者かは、この技術を完全に理解している。」
リアリアとガレオは息を呑んだ。
「じゃあ、その何者かってのは……?」
リアリアが不安げに尋ねる。
Glowは静かに首を横に振った。「今はまだ分からない。ただし、私たちがこれから向き合う敵は、これまでのどの敵よりも狡猾で危険だ。」
その言葉に重い沈黙が降りる。全員が、目の前に広がる未知の脅威を感じ取っていた。
「これ以上は無理だ。いったん引き上げるぞ。」
ガレオが提案し、全員が頷く。
Glowたちは静かに洞窟を後にした。背後には不気味な残骸が横たわり、そして洞窟の奥からは未だ微かな気配が漂っていた。それはまるで、さらなる闇が彼らを待ち受けていることを暗示しているかのようだった。