何者かの影
アンセレスの目撃情報を得た一行は、
目的地に向かっている途中だった。
夕暮れが迫り、Glowたちの足元には枯れた森が広がる。木々は腐敗し、ねじ曲がった枝はまるで何かに苦しむ者の手のようで、リアリアが辺りを見回しながら眉をひそめた。
「このあたり、魔力の流れが妙に歪んでるわ。
アンセレスの巣窟に近い気がする。」
「油断するなよ。」ガレオが槍を握り直しながら低く呟く。「隠れるのが上手い奴もいる。」
Glowは静かに周囲のデータをスキャンし、その視覚センサーには、通常の熱源や動体とは異なる、不規則に揺れる反応が映し出されている。
「確かに不自然だ。これほど歪なパターン、通常ではありえない。」Glowが呟くと、リアリアが反応する。
「つまり、魔力が『何か』に使われているってことかしら?でも…いったい何に。」
その答えは、すぐに彼らの目の前に現れた。朽ちた木々の間から、巨大な洞窟の入口が見えたのだ。周囲にはアンセレスの腐肉が散らばり、奇妙な魔法陣が地面に刻まれていた。それは、見たことのない複雑な紋様で、どこかGlowの故郷の技術的デザインに通じる幾何学的な形状をしている。
「なんだろう、これ…」
リアリアが恐る恐る近づき、手をかざす。
「ここに魔力を流し込んでいる…でも、
これを作ったのはアンセレスじゃないわね。」
ガレオが鋭い目を向ける。
「どうもきな臭くなってきたな…」
Glowは無言で洞窟の奥を見つめていた。そのセンサーは、洞窟の中から強大なエネルギー反応を検知していた。だが、そのエネルギーはただの魔力ではない。科学的なパターンが微かに混ざり合い、彼の内部データに警告を送っていた。
「Glow?」
リアリアがその沈黙に気づいて声をかける。
「…これはただの偶然ではない。」
Glowが低く言う。「この洞窟の奥にあるものは、私の世界と密接な関係がある可能性が高い。」
「どういうことだ?」
ガレオが問い詰めるように言う。
「まだ断定はできない。」Glowは洞窟を指差した。
「だが、この場に残された痕跡は、魔力と科学が融合したものを示している。」
一瞬の沈黙が訪れる。その場の全員が、
目の前に広がる未知の謎に言葉を失った。
「じゃあ…このアンセレスたちが襲いかかってくる理由も、誰かの指示ってこと?」リアリアが不安げに尋ねる。
「可能性は高い。」Glowは短く答えた。
「そして、その指示を出している存在は、私たちがこれまで見てきたどの敵よりも強大だろう。」
リアリアとガレオの顔が険しくなる。だが次の瞬間、洞窟の奥から低く響く音が聞こえた。それは重低音のような咆哮で、空気を震わせるほどの威圧感があった。
「来るぞ!」ガレオが槍を構える。
洞窟の闇の中から、無数の目が輝き始めた。それらは、アンセレスの小型種であったが、彼らの動きにはこれまでとは違う統率が見られる。まるで一つの意志に従っているかのように、整然とした隊列を組んでいた。
「まさか…アンセレスがこんな動きを?」
リアリアが驚愕の声を上げる。
「指揮系統が存在する。」Glowが冷静に分析を述べる。「これは単なる群れではない。」