魔法との融合
街に帰還した後、夜空の静寂の中Glowは、リアリアとともに丘の上の仮設キャンプに立っていた。遠くの森からは夜行性の獣の叫びがかすかに響き、微かな緊張感が漂う。だがGlowの意識は、目の前に置かれた奇妙な装置――「アーク・セントリー」に集中していた。
その装置は古代の遺跡で発見されたもので、人型の金属製ボディに無数の文様が刻まれ、中央には青白い光を放つ結晶が浮かんでいる。「これが古代文明の力…魔法と科学が混ざり合った証拠ね」とリアリアが呟いた。彼女の声には興奮と不安が混ざっている。
「Glow、本当にこれを?」
リアリアはGlowを見上げそう言った。
「可能性がある限り、試す価値はある。」
Glowの声には機械的な冷静さがあったが、
その言葉の裏には確固たる意志が宿っていた。
アーク・セントリーを解析した結果、この装置は膨大な魔力を安定させる媒体として機能することが判明していた。Glowはこれを自身のシステムに適応させることで、魔法をエネルギー源として取り込む計画を立てていたのだ。しかし、リスクがないわけではなかった。Glowの内部システムが暴走すれば、リアリアたちも巻き添えになりかねない。
「魔力供給は私がするわ。でも、何か異変があったらすぐに止めてね。」リアリアはGlowにそう告げると、アーク・セントリーの台座に手を置いた。彼女の手のひらから柔らかな光が放たれ、装置が徐々に反応を示し始める。
「リアリア、準備はいいか?」Glowが確認する。
「ええ、始めて。」
リアリアの声は震えながらも力強かった。
Glowは自身のエネルギーシステムを解放し、アーク・セントリーから放出される魔力を取り込むための回路を開いた。途端に、彼の体内に無数の異なるエネルギー波形が流れ込んでくる。
「異常な反応を検知。」Glowは即座に警告を発したが、停止はしなかった。内部の解析処理装置と自己修復機能がフル稼働し、魔力の波を安定させようと試みる。
「Glow、大丈夫なの?」
リアリアが不安げに問いかける。
「問題ない…まだ調整中だ。」Glowの声は少し途切れがちだったが、機能は維持されているようだった。
次の瞬間、アーク・セントリーの結晶から放たれる魔力がさらに強まり、Glowの体全体を包み込む。外装ホログラムが一瞬歪み、彼の本来の無機質なフレームが露わになる。だが、Glowはリアリアの驚きの声を気にも留めず、全神経をシステムの安定化に集中させた。
「光の波動が…流れてくる…」
リアリアが呟くように言った。彼女の目にはアーク・セントリーからGlowへ流れ込む魔力の軌跡が見えており、それはまるで新たな生命を与えるかのように、美しく脈動し輝いていた。
突然、Glowの目が鋭い光を放つ。
そして次の瞬間、彼の手のひらから大きな炎の球が浮かび上がった。リアリアは息を飲む。「これが…魔法?」
「システムの統合に成功した。」
Glowは静かに言い放ったが、その声には機械らしからぬわずかな達成感が滲んでいた。
リアリアはGlowに近づき、その手のひらにある炎をまじまじと見つめる。「Glow、本当に魔法を使えるようになったのね。でも…どうしてこんなにすぐに?」
「魔力は未知のエネルギーだったが、構造的には理解可能だ。今後、さらなる適応が必要だが…これで一歩進んだ、感謝する。」Glowの言葉にリアリアは微笑んだ。彼女の中には、彼がこの異世界に適応しつつあるという希望が灯っていた。
その時、遠くの森から不穏な咆哮が響く。
二人は目を合わせ、安息の時間は長く続かない事を悟った。
「準備を整えよう。次の戦いが待っている。」
リアリアは頷き、魔力の供給を止める。
二人の間に生まれた新たな絆を感じつつ、彼らは夜空の下、次なる試練へと向かう準備を始めた。
次回ボスとの戦いに入ります、お楽しみに