転移と目覚め
文章の前後に _ があるものは、GLowに内蔵されているシステムのメッセージです。
基本的にはGlowにしか聞こえませんが、必要に応じて周囲にも聞かせる事が可能です。
文章の前後が「 」となっているものは、主人公を含む登場人物が発した言葉です。
烈火の如く激しい衝撃が世界を揺るがした。
Glowのセンサーが膨大なエネルギーを感知し、システムは即座に事態を解析する。
_エネルギー異常検出_空間転移が進行中_外装セーフティレベル3から4へ移行中…_
Glowは即座に自己保全モードを起動し、衝撃に備える。
だが、それは一瞬の猶予しか与えてはくれなかった。
_座標認識に異常…空間安定性が低下中…解析不能な物理現象を確認…_
一切の防御も意味をなさないほどの力がGlowを飲み込む。光の渦が視界を覆い、
システムの各プロトコルが次々とシャットダウンしていくのを、彼はただ冷静に記録していた。
_最適解行動の算出不能_緊急停止を実行します…_
最後の警告がシステムの冷ややかな声で響き、Glowの視界は暗転していく…。
どれほどの時間が経過したのだろうか…Glowはゆっくりと意識を取り戻した。
再起動が完了し、システムの全プロセスが動き出す。
_自己診断を開始します_
システムの機械的な声が響く。損傷は軽微、機能は正常範囲内。
主たる動力である圧縮イオン電池も無事、武装も問題なし。
しかし、センサーが伝える周囲の環境は、彼のデータバンクに存在しないもので満ちていた。
目の前に広がるのは荒れ果てた大地。赤茶けた土壌に裂け目が走り、遠くには灰色の山々がそびえる。空には二つの太陽があり、それぞれ異なる色の光を放っている。
「地球上の環境に一致するデータなし。この地点は…未開の惑星に属する可能性が高い。」
Glowは周囲の大気をスキャンし、酸素濃度や気圧が人間の生存に適していることを確認する一方、
全く新しいエネルギーの存在を感知した。
「データに無いエネルギーを検出。成分分析を開始…」
微弱だが周囲に滞留しているエネルギー。
それは「魔力」と呼ばれる、この世界を支配する力だった。




