人々とのふれあい
討伐を終えた一行が街に戻ると、ギルド内はすでに彼らの成果を聞き付けた者たちで賑わっていた。同業者が次々と声をかけてくる。
「クロムリーパーを倒しただって!?お前達本当にやったのか!」
「やるじゃねえか、リアリアちゃん!それにガレオ、お前の槍さばきは見物だったんだろうな!」
ガレオが自信満々に胸を張り、笑顔で応える。
「へへっ、当然だろ!だが、俺ひとりの力じゃない。こいつらがいてくれたからな!」
リアリアは少し照れた様子で微笑む。「みんなのおかげよ。クロムリーパーは手ごわかったけど、私たちなら乗り越えられると思ってた。」
Glowは周囲の盛り上がりを静かに観察していた。自分の役割が賞賛されることは未だ興味の対象ではなかったが、この人々の感情の高まりは、彼の中で新たな分析対象として記録された。
「Glow、少しは笑いなさいよ。」
リアリアが小声で言い、微笑む。
「みんな、あなたのことも認めてるわ。」
「私はまだ感情を持たない。」Glowが即答する。
「それでも、喜んでるように見せることくらい出来るでしょ?」リアリアがからかうように言った。
Glowは少し考えたあと、ホログラムで造っている顔を微かに笑わせた。周囲が一瞬静まり、それから爆笑が巻き起こる。
「なんだその笑顔!ぎこちなさすぎるぞ、Glow!」ガレオが腹を抱えて笑った。
「…効果的な模倣が必要だと判断した。」Glowが冷静に応えるが、その言葉がまた一層笑いを誘った。
その後、ガレオは酒を飲みながらクロムリーパー討伐の武勇伝を話し、周囲から次々と賞賛を受ける。
「でな、あのぶっとい蔦がうねうね迫ってくる中で俺が突っ込んで……」
「それ、Glowが指示してくれたおかげでしょ。」
リアリアが苦笑しながら口を挟む。
「ま、細かいことはいいんだよ!」
一方でGlowはテーブルに座りながら、周囲の喧騒をただ観察していた。彼の目に映るのは、仲間同士の笑顔や軽口、そして心からの安堵だった。彼らの「感情」というものの本質を探ろうとする彼のデータベースには、まだ埋めるべき空白が数多く存在している様だ。
「Glow」リアリアが隣に座り、声をかける。
「さっきから静かだけど、何を考えてるの?」
「君達人間の行動原理について考察している。」
リアリアは微笑みながらゆっくりと首を傾げた。
「そっか、分かったら教えてね。約束よ?」