クロムリーパーとの戦い
廃村に到着すると、そこは完全に植物に覆われていた。建物は苔と蔦に飲み込まれ、地面は分厚い根が網のように広がっている。異様な静けさが辺りを包む中、不意に大地が揺れた。
「来る……!」リアリアが警告の声を上げた瞬間、地面を突き破るようにして巨大な植物が姿を現した。
クロムリーパーの本体は巨大な食中植物のようで、無数の触手のような蔦を振り回し、赤い花弁の奥には鋭い牙のような器官が並び、花弁からは毒々しい霧が漂っている。
「うわっ、こいつは気味が悪いな……!」
ガレオが吐き捨てるように言い、槍を構える。
「距離を取れ、この霧は毒だ。」Glowが的確に指示を出す。
「毒くらい、炎で焼き払えばいいわ!」リアリアが杖を掲げ、詠唱を始めた。「炎の精霊よ、その猛き力を解き放ち、敵を焼き尽くせ――『フレイムスピア』!」
真紅の炎が槍の形となり、クロムリーパーに向かって突き刺さる。しかし、その硬い根と蔦が盾のように炎槍を防ぎ、わずかに焦がしただけだった。
「守りが硬いな……厄介なやつだ!」
ガレオが蔦を槍で切り払いながら叫ぶ。
「では、より強力な攻撃を試みる。」
Glowが腕を前方に向け、メガ・ブラストを展開。「目標に照準。攻撃を開始する。」
Glowから放たれた大熱量がクロムリーパーの蔦を焼き切る。だが、すぐに別の蔦が再生し、さらに激しい攻撃を繰り出してきた。
「再生能力があるのね……このままじゃ埒が明かないわ!」リアリアが焦りの表情を浮かべる。
「弱点を探る。」Glowが即座にスキャンを行う…
「分析結果:花弁の中心に魔力が集中しているコアを確認。これを破壊すれば再生能力を抑えられる可能性が高い。」
「核を狙うってわけか。よし、俺が突っ込む!」
ガレオが意気込むが、リアリアがそれを制止する。「待って!私がサポートするわ!」
リアリアは再び詠唱を始めた。「火の精霊よ、我らに勝利を与えたまえ――『エンバーウェポン』!」
ガレオが持つ槍の穂先を炎が包み込み、彼をクロムリーパーの花弁へと導く。
「行くぜ……これで終わりだ!」
炎を纏った槍で、蔦を切り裂きながら接近したガレオが渾身の力で槍を振り下ろし、花弁の奥深くにある魔力の核を貫いた。
クロムリーパーが断末魔の叫びのような怪音を上げ、巨体が崩れ落ちる。毒の霧も徐々に晴れ、静寂が戻った。
「ふう……これで一件落着だな。」
ガレオが槍を肩に担ぎ、満足げに笑う。
「素早い連携と効率的な攻撃だった。」
Glowが評価する。
リアリアが息を整えながら微笑む。
「今回はガレオが1番の戦功者ね」
「おい、褒めすぎだぜ!みんなだろ、みんな」
ガレオが照れくさそうに鼻をかく。
Glowは彼らを見つめ、内心で一つの結論に至っていた。彼らの感情、連携、そして自己犠牲の精神――それは彼の知識には存在しないものであり、興味深い観察対象だった。
「さて、帰るぞ!また酒場で乾杯だ!」
ガレオが声を上げ、2人もそれに続く。
討伐を終えた一行が街に戻る頃には、夕日が空を赤く染めていた。新たな試練が訪れることを知らないまま、一時の安息が彼らを包み込むのだった。