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コトノハ  作者: とーま。
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コトダマ:古代から、コトバに宿るとされる神秘的な霊力

    声に出したコトバが現実に影響を与えるというもの


 昔からこのクニでは、発したコトバに力が宿る。力の強さは個人差があるが、一つの発言に、自分以外の他者にまで影響を与えるほどの力をのせられる人間はほとんど存在せず、都市伝説になっている。

しかし、コトダマは、何度も重ねることで力が増していく。深い憎悪を持った人間の、積もりに積もった呪詛のコトダマによって、命を削り取られる人間は一定数いるし、絶対に助からないような傷を負ったが、身近な者の強く繰り返された祈りのコトバによって、一命を取りとめたなんて人も、極稀に存在する。取りとめた命より、取られた命の方が多いのは、負のコトバの方が力を持ちやすいからなのか何なのか、それはよくわかっていない。

 でもまあ、自分のコトバにどれほどの力が宿っているのかなんて、把握している人はいないに等しいし、力の差なんて誤差、力自体あってないような程度のものなので、大多数の人が、なんとなく、負の感情がこもるようなコトバは、なるべく使わないようにしようとか、感謝や嬉しい感情はなるべく口に出そうとか、その程度の意識で生活している。

だから、思ってもみなかった。幼いころに出会ってから、毎回欠かすことなく、何となく発していた、「またね」「また明日」「また学校で」 「また」 次の再開を約束するそのコトバを、たった一回、何の気もなく口にするのを忘れただけで、このクニで、私だけが、親友に会えなくなるなんてことは。


 私、伊東結希と、親友の村岡和沙は、隣同士の家に生まれた、いわゆる幼馴染だ。小学生のころから高校生になった現在まで、ほぼ毎日一緒に登下校している。

「おなかへったあ」

「今日の夕飯なんだろねえ」

「明日英語の小テストじゃん!勉強しなきゃ!」

「うわ、忘れてた!」

そんなくだらない、とりとめもない会話をしながら、いつも通り家の前まで歩いて帰った。いつもだったら、お互いの家の境目のところで、

「また明日」とか、「またあとで」

とか言って別れるのだ。

 でもその日は、特にお互い意識したわけでもなんでもなく、ただ何となく、

「じゃあ」

「じゃあね」

とだけ言って、それぞれの家に入っていった。


 翌朝、いつも通り家の前に出ると、和沙がいなかったので、「今日は私の方が早かったのか」と思いながら、紗和が出てくるのを待っていた。

 しかし、十五分ほどたっても出てこない。「寝坊かな?」そう思って電話をかけてみるが応答はない。電話に気づかないほど爆睡しているのか、それとも慌てて支度しているのか、前者だとまずいと思い紗和の家のインターホンを押した。しばらくすると紗和のお母さんが出てきた。

「あら、結希ちゃんおはよう!珍しいわね、寝坊なんて、紗和ったら、

「待てないから先に行くって言っておいて」

って行っちゃったわ、遅刻しないようにね!」

「え?」

おかしいと思った。だって私は別にいつもより遅く家を出たわけではない。むしろ今日はちょっといつもより早く準備ができたなと思って家を出たくらいだ。しかし時間もないので、紗和が委員会の用事かなんかで、いつもより早めに家を出ることを、私に言い忘れでもしたのかと思って、

「そうなんですね!ありがとうございます、行ってきます!」「早めに出るなら言っといてよねえ」

そう言ってぬぐい切れない違和感を無視して、私も急いで学校に向かった。

 「紗和、いつも通りに出ていったけど……」

おばさんの言葉は、ドアの閉まる音に重なって私の耳には届かなかった。


読んでくださりありがとうございます。

仕事中に何となく浮かんだものを膨らましてますので、また続きが何となく浮かんで来たら膨らませます。

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