最初で最後の稽古
次の日僕は早朝に起きた。いつもなら昼時に起きているはずなのに………
「ぐかーーーー」
う、うるさい。こいつ剣のくせにイビキをするのか。一回マジで相談に行った方がいい気がする。
その時僕の部屋にやってくる足音がした。
ガチャ
「おお!アレンが起きてる」
父さんが他の部屋に来た。
「父さん。何故ここに?」
「なに、今日でお前の顔を見るのが最後だとすると寂しくてな。思う存分顔を目に焼き付けようと思ったんだ。そういえば、アレンには稽古をつけてやったことがないな。よし、今からやるか」
父さんはうおーーやるぞーーと言わんばかりかやる気を出している。
「え?今から」
「当たり前だ。今やらないでいつやるんださあ、外に行くぞ」
父さんは僕の手を引っ張った。その手はどこか暖かい手な気がした。
「よし、剣を持って。まずは基礎からだ。アレンも一応剣を持って降ったことくらいはあるだろう。隠れて剣を振っていたところを何度も見てるんだよ!」
ま、マジか。見られてたのか。
「よし、このそれじゃあ振ってみろ」
ブン ブン ブン ブン
「一応基礎はできてるようだね。その剣を見ればどれだけ努力したか分かる。そういえば留学中のあいつらにはどういうんだ?言ったよな?当然。言ってなかったら俺がなんて言われるか……」
「ま、まあそのことに関しては僕が旅で訪れた時にいうよ。まあ、だから心配しなくてもいいよ」
「そ、そうか。話が逸れたな。まあ、取り敢えずひと試合してみるか」
父さんとの試合か…………久しぶりだなぁ。
「そうだね。してみよう」
「それじゃあ始めるよ」
始め!父さんが言った。
「やあ!」
剣を父さんに向けて降った。
カン
父さんは剣を防いだ。
「それじゃあ、行くぞ!」
父さんの威圧感が強くなった
「ぐ!きつい」
僕は脚がすくんだ。まるで重しがついているようだった。
「どうした?来い!来ないならこっちから行くぞ」
ビュンという音をしてから父さんが消えた。
く、来る。見えないけど構えるしかない。感じろ!気配を感じるんだ。取り敢えず目を瞑り周りの気配を探った。しかし父さんの気配は全く感じられなかった。
「はは。無理ゲー。早すぎる」
取り敢えず振ってみないと。
カン
あ、当たった!
「おお!すげえ。お前にこの剣を見破れるとはな!今日はこのくらいでいいだろう。剣の修行を毎日欠かすなよ」
父さんはどこかへ向かって行った。
父さんがどこかへ行った後僕は旅に出る準備をした。
「グガー。グガー。グガー」
う、うるさい。何でこの剣こんなうるさいんだ?てか
この剣どれだけ寝るんだ?もう寝てから12時間は経つぞ!
「ぐかーぐが。うー。よく寝たー」
どうやら起きたようだ。
「おー!アレ坊主。起きてたな。アレ坊主は早いな。何やってるんだ?」
「旅の準備をしてるんだよ。てかよく寝れるね。アレ坊って何?」
呆れ顔で聞いた。
「アレンの坊主だからアレ坊!簡単だろ。」
なんだかこの剣がバカに見えてきた。
「それはそうと、ほんとよくなれるな」
「まあ、それぐらいしかやることがないからな。この剣の姿だと。お前が魔力をもっと成長させたら霊体だが前の姿を見せることができる。だからまずは魔力を集中させることをしろ」
こ、こいつ。恩着せがましく、アドバイスをしてきやがった。魔力?スキルなら分かるけど何だ?それ?
「ああ、そうゆうことか。この世界は、魔力がまだ認知されてないのか。
ふーん………」
紅が何か考えているようだった。
「それだったら俺様が教えてやろうか?」
ぼくが思ったことはなんかこいつ恩着せがましいなということだけだった。
「おい、なんか変なこと考えなかったか?」
こ、コイツ感が鋭い。
「それじゃあ旅に出たらお願いするよ」
それじゃあそろそろ父さん達に挨拶しなきゃ。
僕はすぐに母さんのところに行った。
「母さん」
「あら、アレン。どうしたの?もしかしてもう行くの?それなら姫様と……」
「前から思ってたけどなんでそんなに母さん達は姫にそんなに怯えてるんだ?そこまで怖がること無くないか?」
「アレン……昨日陛下の話したこと覚えてるわね。御伽噺や伝説を知っといた方がいいと。だからアレン、姫様の秘密は自分で解き明かしなさい」
母さんはとにかく自分が言いたくないというような回避方法を僕に言ってくるのであった。
「おい、アレ坊。おそらくだが、その姫さん、相当な強さだぞ。おそらく前世の俺様の二分の一くらいの強さだと思うぜ。ま、所詮は、魔力の知られてない世界だからな」
「なんの話をしてるのかな?義母様?」
「うお、なんだこの圧は……アレ坊。アレは別格だ。前世の俺の三分の二くらいの強さだ。あと姫さんの体内魔力量が半端じゃねえ」
姫様がこっちに向かってきた。
「それで?アレンは何時ごろ出発するの?当然お別れする時私も呼んだわよね?」
僕は姫様の目を見た。
姫様の瞳が真っ黒に染まっているように見える。ああ、姫様の目を見るのはだめだ。なんかどこかに引き込まれそうな気がする。
「アレン、聞いてるの?」
姫様が首を傾げた。うっかわいい。
この人顔もいいしスタイルもいいから少し見張れそうになるんだよな。
「も、もちろんだよ。取り敢えず陛下に挨拶をしておかないと」
「そうね。まあ、いいでしょう。でもアレン、よそで彼女を作ったらわかってるでしょうね?」
か、顔が近い。
「顔が近いよ。取り敢えず王城に……」
アレンの言葉を待っていたかのように姫様はアレンを引っ張った。
「ちょ、何するの?」
「何って、アレンを王城まで送りに行くのよ。走った方が馬車より早いから貴女を抱えていくわ」
後ろから父さんがついてきた。
「ちょ、姫様。早すぎです。挨拶が終わったら必ずいったんうちまで送ってくださいね。話したいことがあるんで」
「うーん。まあ、いいでしょう。父様の挨拶が終わったらまたこちらに送ります」
「え、ちょっとまって。姫様ってどのくらいで走るのですか?馬車よりも早いって」
「ちょっと失礼」
姫さまがそう言った瞬間ものすごいスピードで走り出した。