471 司法取引
話題の絶賛逃亡中のラリス・アトラス辺境伯が捕まった。
一緒に逃げていたはずの奥さんからの密告で、
ご用となったのである。
即、当の本人は、ヤシリギ王都に連行され、
市中引き回しの上、打ち首獄門となったみたいだ。
問題は、司法取引をしてきた奥方だ、
死刑にすると、今後密告者が出てこなくなる可能性がある、
かといって、無罪では、一般市民が納得はしないだろう。
とりあえず、貴族の称号は剥奪、財産もすべて没収、
国外退去という方向で決まった。
ラリス・アトラス辺境伯の親類縁者は、
すべて今回の出兵と資金提供が義務付けられた。
これからは秋の収穫に向かうので、収穫が終り次第、
戦となるだろう。
ラリス婦人は、言葉が通じるということで、
ルガトルポ公国への亡命を希望した。
ルガトルポ公国としては、そんな利用価値のない人に、
来ていただいても何の意味もない。
勿論ヤシリギもそのへんは心得ており、
御者に国境あたりの適当なところで、
轅(馬車と馬を繋ぐもの)を外して、
馬に乗って逃げてこいと指示を出した。
暑い南部と違い。北部の森では野生の狼がいるし、
難民やら盗賊もいる。
御者は、馬をちょっと休ませるからと言って、
轅を外して、予定通り逃走をした。
ラリス一家に人徳があれば、狼や盗賊と、
仲良くやっていけるかもしれない。