428 上機嫌の公爵
ルガトルポ公国スボン州公爵領主、
モウラシア・ミグエルは、上機嫌だった。
祝賀金の御布令により、税収が増えたのと、
要らない老人たちを放出したことによって、
福祉に掛かる金が減少したからだ。
「どうじゃ、ロペス、鬱陶しい老人は減って、
祝儀で財政も潤う、まさに一石二丁だな」
「さようでございますな」
「ただ気になる点が一つありますが」
「ん、なんだ」
「祝儀を払うのを、嫌がる者が他州へ移動しておりまして、
人口が少し減っております」
「ふん、わずかな祝儀も払えん貧乏人は、
こちらから願い下げじゃ」
「それより、例の葡萄酒は入手できたのか」
「出入りの商人ががんばりまして、ある程度の量を確保できました」
「うむ、今晩の食事に出すように」
「はは、料理長に申し付けておきます」
まったく困ったもんだ、あの葡萄酒は、
公爵の大嫌いなアレーナ産なのに、美味しければ飲むのか。
それにしても不思議だ、南国で葡萄畑など聞いたことがない、
もしあったとしても、どうしてあんなに美味い葡萄酒ができるのだ?
それにうちの人口の流失の、ほとんどはあの、
セブンスターダンジョンに行っているみたいだ。
最近では、うちの屋敷を上回る、立派な屋敷があると聞く、
しかも王都にしかない、学校を模したものまであるという、
間者を放って、情報を仕入れているが、中には帰ってこない者もいる。
近いうちに、私自ら視察に赴かないといけないだろう。