232 提案
「もし売る気があるのだったら、うちのダンジョンに倉庫がある」
「一度くらい、見に来るといい、そして儲けた分は後進の育成に使って欲しい」
「それと隣のニコスから聞いたのだが、土地の水はけが良く、
日中の寒暖の差が大きいと聞いたが、間違いないのか?」
「確かにその通りだが、なにかあるのか?」
「ぶどう酒をつくってはみないか?」
「ぶどう酒?」
「ここは、俺が知っている酒造りに向いている気がする」
「酒は飲めるのか?」
「飲めるが何かあるのか?」
俺は、ワインを取り出し、グラスに注いだ。
「シャブリという、ぶどう酒だ、毒は入っていないから飲んでみると良い」
領主はも恐る恐るワインを飲んだ、「美味い、こんなぶどう酒があるのか!」
「たぶん、後4,5年もすれば、これに近いものがここで出来るはずだ」
「もし作る気があるなら、こんど苗木を渡そう」
「一つ聞いていいか、なぜうちにそこまでしてくれる」
「俺は壊すのは得意だが、作るのは不得意だ、
不得意を克服するために、がんばっている」
「よくわからないが、うちにとって悪いことではないと分る」
「ただ今馬車が壊れていて、修復に1週間位かかる、直り次第行こう」
「そうか、じゃあ今回の補てんということで、馬車2台を進呈しよう」
ダンマスが帰った後には、立派な黒塗りの馬車と、大型の馬車があった。
本当に気前のいいやつだ、仲良くして損はなさそうだ。
部屋に戻ってくると、妻がひとり晩酌をしていた。
「あなた、このお酒美味しいですよ、一緒に飲みましょう」
たまには、一緒に飲むのもいいか、とっておきの干し肉を出した。