表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

65/77

65 おいでませ竜宮城? 渚のはいから人魚にズキンドキン!? 6番

「ぶはーっ……。ぜー……、ぜー……。た、助……かった……」


 どれほどの間、泳いでいたのだろうか。正直時間の感覚はわからない。だが、少しばかり赤くなり始めた空を背に横たわる俺が感じているのは、間違いなく懐かしい砂浜の感触だ。

 必死になって泳ぎ体力を使い果たしたのと、陸に辿り着いた安堵感から、俺は砂浜に突っ伏し一歩も動けないでいた。

 あれから人魚二人を追い払ったはいいものの、陸に戻る伝手をなくした俺はしばらく岩場の上で途方にくれていた。

 当然ながら、待てど暮らせど誰かが通りかかることもなく、意を決して海に入ろうとした時だった。運よく流れてきた流木につかまり、浮き輪代わりになんとか陸までたどり着いたのだ。

 

「もう……二度と海でなんか泳がねーぞ。つーか……」


 そう、無事に陸に辿り着けたのも、帰りはクラゲの被害に遭わなかったのも喜ばしいことだ。本来ならば生きていることを喜び、満喫するべき状況だろう。

 しかしながら、素直に喜べない理由……。

 

「どうすんだよコレ……」


 俺が唯一持っていた防御用アイテム、海パンは羅々さんとともに海の彼方へと消え去って行った。そう、今の俺は完全なる全裸。生まれたままの姿をさらけ出し、裸ん坊万歳、お尻を出した子一等賞状態である。

 このままでは生を満喫どころか、社会的に死ぬ恐れがある。今となっては、変質者扱いされようがロングコートでも羽織りたい気分だ。

 幸いにも夕暮れ近くということもあり、運良く周りには人がいない。とはいえ、いつ誰が通りかかったっておかしくはないのだ。

 

「こっそりチビどもを探しに行くか?いや、その前に人に見つかる可能性のが高いな。そもそも、アイツらがこの格好を見たら面白がって大騒ぎしそうだし……。秘密子や那澄菜は……。ダメだ、見た瞬間に問答無用で殺される。華澄さんは……、なんか恥ずかしいな……。いっそのこと海藻をかき集めて……。いやいや、それこそカンペキに変質者じゃねえか!つーか、そもそももう一歩も動けねえし」


 自力で何とかしようとするも、すでにまともに手足が動かない。丸出しを防ぐために、うつぶせに倒れただけでもグッジョブなくらいに疲労困憊なのだ。

 

「くそっ、せめてカイかゲンが……。贅沢は言わんから、この際珠魅でもいい」

「あ~!キーチにーちゃんみつけたぁ!」


 そんな俺の願いが、天に通じたのだろうか。不意に聞き慣れた声が聞こえる。そこに現れたのは天使……じゃなくて、俺を探していたらしき珠魅たちだった。

 

「あれ?なんでキーチにーちゃん、おシリまるだしなの?」

「あははは!おもしろそう。ぼくもやりたーい」

「ぼくも!」

「まっ、待て!今はそれどころじゃねえんだ!」


 大はしゃぎで海パンを脱ごうとするチビどもを、慌てて止める。

 

「お前ら、俺が持ってきたバッグはわかるよな?」

「うん」

「そいつに着替えやタオルが入ってるんだ。すまんが、そいつをここまで持ってきてくれ。あ!絶対に秘密子と那澄菜には見つからないようにしろよ」

「いいけど……。でも、キーチにーちゃんのバッグって、ヒミコねーちゃんがマクラにしてねてたよ」

「ぐっ……、あいつ……!持って行こうとすりゃあアイツのことだ。絶対何か勘付くな……。仕方ない、この際パンツの代わりになりゃあいいさ。だったらタオルを持ってきてくれ。それもなるべく大きいやつだ。いいか、何度も言うが、絶対に秘密子と那澄菜には見つからないように、こっそり持ってくるんだぞ」

「うん、わかった!」


 一抹の不安はあるが仕方ない。こうなった以上、頼れるのはチビどもしかいないのだ。

 威勢よく返事をするチビどもを見ながら、疲れからだろうか。俺はいつの間にか眠ってしまっていた……。

 

☆ ☆ ☆


「……ちゃん、キーチにーちゃん!おきてよ」

「…………。ん?お、おお……」


 チビどもに揺り起こされて、俺は眠ってしまっていたことに気付く。体も動くようになっているし、どやら体力は回復したようだ。

 

「それで、タオルは?」

「うん。もってきたよ!」

「秘密子たちに見つからなかったろだろうな?」

「だいじょーぶ!。アタシはかしこいから、それくらいおちゃこのハイサイなんだから!」

「なんだそりゃ?言葉の意味はよくわからんが、とにかくよくやったぞ。それじゃあさっそく……。ん?」


 珠魅からタオルを受け取った俺は、少しばかり妙なことに気付く。受け取ったのは確かにタオルらしきものに違いないのだが、随分とに細いうえにやたらに長い。

 さらに言えば、触った感じも俺の想像していたものと違う。何というか、少しばかりザラザラとした、どちらかと言えば手ぬぐいに近いような……。

 俺はその生地によく似たものを何時間か前に見ている気がする。そう、あれはたしか……。

 

「おっ、おい!?こっ、これどっから持って来たんだよ!」


 そう、俺の記憶が確かならば、これは銀子が身に付けていたはずの……。

 

「ぐっ……。この状況じゃしょうがねえか……。おいお前ら、こっち見んじゃねえぞ!つーかコレ、どうやって着けるんだ?」


 背に腹は代えられない。覚悟を決めた俺は、褌を身に付けるべく立ち上がったのだったが……。

 

「せせ……、先輩……!?おチビちゃんたちに頼まれたんで、何事かと思って来て見たら……。じっ、自分のふっ……、褌……を着けたかっただなんて……」


 不意に聞こえた声に顔を上げれば、少し離れた場所から銀子が顔を真っ赤にしてこちらを覗いていた。


「銀子!?ちっ、違う!こっ、これはだな……。おっ、おい珠魅!どういうことだよ!?見つからないようにって言ったじゃねえか!」

「ヒミコねーちゃんとナズナねーちゃんはダメってゆわれたけど、ギンコねーちゃんはきいてないよ?」

「ぐっ……」


 たしかに自分の言葉を思い返してみれば、秘密子と那澄菜を恐れるあまり他の二人のことを失念していた。さすがに珠魅たちを責めるのは筋違いだろう。


「ででっ、でも、そこまでして自分の身に着けてたものが欲しいなら、言っていただければご用意を……。な、なんでしたら、今着てるコレでも……」

「よっ、よせ!こんなところで脱ぐな!そもそもそんな小さいスク水が、俺に着れるわけねえだろ!いや、たとえ着れたとしても着ねえけど!」


 銀子には悪いが、これは緊急事態だ。たとえ変態と思われようが、顔を真っ赤にしつつ俺の股間を凝視しているコイツのためにも、早々に隠さなければ。つーか、めっちゃ興味津々じゃねえかよ……。

 

「あれ?これ、どうやって着けるんだよ……」

「あ、あの……。じ、自分でよければお手伝い……するっす……」

「はぁ!?し、しかし……。わ、わかった、すまんな」


 銀子は真っ赤な顔で俺の背後に回ると、布きれを俺の体に巻き始める。

 

「あの……、先輩……」

「お、おう。な、なんだ?」

「その……。ずっと押さえられてると……巻けないっす……」

「へ!?いや、しかし……!そ、そりゃそうだよな。すまん」


 さすがに俺だって、女の子の前で堂々とイチモツを見せびらかす趣味も勇気もない。さっき人魚の二人に見せたのだって、あくまで緊急事態だったからだ。

 

「じゃ、じゃあ手をどけるけど、あくまで褌を巻くためで、けっしてやましい気持ちはないからな!」

「わ、わかってるっす……」

「じゃ、じゃあ頼む」


 覚悟を決めた俺は、股間を隠す手をどける。もちろん銀子には背中を向けてるんだし、見せつけてるわけでもない。

 

「先輩の体……、すごいっす。こんな細部の、お尻の筋肉まで鍛えられてて……」

「そっ、それは種族特有のもんだ!ほら、外国人とかで元々筋肉質な民族もいるだろ?あんなようなもんだ。とっ、とにかく、俺の尻なんか見てないで早く着けてくれよ」

「あ……、はっ、はい!」

 

 ただ、なんと言うのかだろうか。本来服を着ていなければならない場所での全裸というのは、妙な背徳感がある。

 おまけに尻の辺りには、背後で膝をつく銀子の息遣いと、なんだか熱い視線のようなモノを感じる。それが腰や尻のあたりに何度も触れる柔らかく小さな手の感触と合わさり、くすぐったいような気持ち良いような、なんとも刺激的な感じだ。

 そんなことを考えていたら、ふと先ほどまで見ていた光景を思い出す。いや、それは男なら仕方のないことだろう。それはつまり、二人の人魚の形の良いおっぱいということで……。

 

「あふぅっ!!」

「ど、どうかしたっすか先輩!?も、もしかして、痛かった……とか?」

「なっ、なんでもない!かまわず続けて……。…………いや、もうちょっとだけ待ってくれるか?」

「はぁ?」


 ヤバい……。妙な刺激を受けたうえに、先ほどのオッパイの残像が頭から離れないせいで、俺のイチモツがグイグイと上を向き始める。

 それはもちろん銀子に興奮したとかじゃなくて、あくまで刺激による生理現象のはず……なのだが……。

 だが、このままでは褌が巻けないことも確かだ。心を落ち着けるべく、深呼吸をして正面の景色を眺めるが……。


「……っ!?」


 そこにあったのは、地獄のような光景であった。

 口の端をこれ以上は上がらぬだろうという所まで吊り上げ、俺の股間を見つめてニューッと笑う華澄さん。

 そしてこの状況にも関わらず、なぜかにこやかに微笑む秘密子。だが俺は知っている。あの張り付いた笑顔は、秘密子の怒りが頂点に達したとき、怒りを通り越して逆に笑顔になるときのものだ。

 那澄菜に至っては……。うん、これが一番わかりやすいな。ゆでダコのように真っ赤になり、俺の方を見ないように視線をそらしている。しかしながら、その瞳は涙目になっており、握りしめられた拳がプルプルと震えている。その前に那澄菜がナニを目撃したのか…………、一目瞭然だ。

 

「あーっ!キーチにーちゃんのチンチンおっきくなってるぅ!なんで!?ねぇなんで?ぼくもおっきくしたい!!」

「バッ、馬鹿!ゲン!」


 叫ぶゲンを止めようとしたが、時すでに遅し。俺の背後では、凍り付いたように銀狐が動きを止める。そして、恐ろしい形相で俺の方へとダッシュしてくる秘密子と那澄菜……。

 なんだよ……。あの時の笑い顔は、死にかけたせいで見ただけで、やっぱりお前のいつもの顔はそんなもんかよ……。

 

「あらあら。これじゃあまるで、恋愛というよりコメディね……」


 まあ、そこから先は俺の口からは語りたくない。いや、語ることすらできなくなったというのが正解か……。

 とにかくその後、秘密子は夏休みが終わるまで口を聞いてくれなかったし、那澄菜はしばらく、太くて大きい棒状のモノに過剰反応を示すようになった。そして銀狐に至っては、その後しばらく俺の顔を見た瞬間、真っ赤になって俯くと、逃げるようにどこかへ走り去ってしまうようになった。その態度は、ついに俺が銀狐に手を出したと噂されるほどに……。

 余談だが、後日発表された華澄さんの小説はなぜかコメディー路線へと変更されて大ヒットし、ドラマ化も検討されているのだという……。

 だが、その時の俺はまだ自覚していなかったのだ。この夢のような刺激的で楽しい生活にも、いつかは変化の訪れることに。

 そして馬鹿馬鹿しくも楽しい生活を過ごす中で季節は流れ、俺が円城家に来てから、3回目の夏を迎えようとしていた……。

少しばかり長くなりましたが、人魚編終了です。次回からは少しばかり時間が経過し、いよいよ最終章開始となります。と行きたいととろですが、仕事がデスウイーク(ウイーク以上)突入につき、更新は早くても今月中旬過ぎかと……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ