64 おいでませ竜宮城? 渚のはいから人魚にズキンドキン!? 5番
「ホントにオトコだ!羅々スゴい!羅々スゴい!」
「スゴいスゴい!?羅々スゴい?褒めて褒めて!姉様褒めて!」
「羅々偉い!羅々偉い!後でご褒美!後でご褒美!」
「ご褒美ご褒美!?魚!?貝!?」
姉に褒められたのが余程嬉しかったのか、羅々さんは頭を撫でられ、うっとりした表情をしている。それは微笑ましくも美しい姉妹愛だが、残念ながら今の俺はそれどころではないのだ。
「あの、お二人は『人魚』……なんですよね?俺はその……見たとおり、鬼の男です」
「知ってる知ってる!鬼知ってる。母様言ってた!鬼は強い、強い強い!」
「強いかどうかはともかくとしてですね、溺れたところを羅々さんに助けていただいたわけなんですが、自力で陸に戻るのが難しくて……。人魚さんなら泳ぎはお手のものでしょうし、できればその、引っ張って行っていただけないかと……」
随分と友好的だし、ここまでの様子から襲われたり食われたりってのはなさそうだ。それに、なぜだか男の俺を拾ったことが嬉しいらしく、ご機嫌な様子だ。
話がかみ合わないとはいえ、このまま下手に出てお願いすればどうにかなるかもしれない。
しかし、直後の予想をはるかに超える言葉に、そんな俺の考えが甘かったことを思い知らされる。
「奇々姉様奇々姉様、このオトコ鬼?鬼は強い?強い?」
「母様言ってた。鬼は強い、鬼は強い。鬼は絶倫!鬼は絶倫!」
「絶倫スゴい!絶倫スゴい!奇々姉様も羅々も、二人ともたくさん産める!たくさん産める!」
「………………はいぃぃ!?」
なにやらとんでもない言葉を聞いた気がするが、気のせいだろうか。いや、それにしてはなぜか、二人とも物凄く期待を込めた目で俺を見ている気がする。その視線の向かう先は、主に俺の下半身だが……。
「あ、あの……、それで、陸まで連れて行っていただけるのでしょうか……?」
嫌な予感がした俺は、股間を手で隠しながら慌てて二人の会話に入り込む。とにかく陸にさえ辿り着けば、何とかなるだろうと信じて。だが……。
「ねーねー、オトコオトコ、羅々と交尾する!羅々と交尾する!子ども作る!」
「ダメダメ。奇々が先!奇々が先!」
「姉様ズルい!姉様ズルい!羅々も作る!子ども作る!」
「大丈夫大丈夫、鬼は絶倫、鬼は絶倫!何回もできる、何回もできる!たくさんできる!いっぱいできる!」
「絶倫スゴい!絶倫スゴい!羅々待ってる、待ってる!姉様の後で何回も作る!たくさん作る!いっぱい作る!」
なにかの冗談か逆セクハラだろうか……。そうは思うが、二人のはしゃぎ具合からは、とても冗談を言っているようには思えない。
もちろん俺だって年頃の男の子だ。若くて可愛い、おまけにスタイルも良い女の子に、搾り取られるまでエッチしようなどと迫られれば悪い気はしない。いや、むしろ超絶に嬉しい展開だ。
しかし……、しかしだ。目の前の二人は確かに可愛いし、おまけに胸だって結構大きい。
もちろん華澄さんとは比べるまでもないが、それでも世間一般では大いほうだと思うし、秘密子や那澄菜と比べれば何倍の質量になるのか……。
いや、別に俺がおっぱい星人だとかじゃなくて、あくまで客観的に見ての話だ。
それにとても柔らかそうだし、先っぽなんかは綺麗なピンク色で、思わず吸い付きたくなるような……。
「…………っ!」
吸い込まれるようにガン見していた俺は、慌てて胸から目を逸らす。それに……だ。
いくら俺に経験がないからといって、子作りというのがどういうものかくらいは知っている。餅つきのごとくぺったんぺったんと、テ〇リスのようにすっぽりと、男のナニかを、女性のドコかにどうするのかくらいは……。
しかし……、しかしだ!
「ドコに挿れんだよ……?」
そう、俺の知識はあくまで人型の女性の話だ。亮太と見たエロDVDだって、当然ながら人間同士の行為のものだ。
しかしながら目の前の女性たちの下半身は、魚そのものだ。どこに挿れるのか以前に、いくら俺だってさすがに勃たないぞ。
いや、でも顔は可愛いしスタイルはいいし、下半身を見なければ……。
「……っ!」
頭に浮かんだ妄想を振り払い、前言を翻し少しばかり起き上がりかけた股間を慌てて押さえる。
そもそも、エッチするだけならともかく、子どもを作るって重すぎるだろ。さすがにこの年でパパにはなりたくないし、育てて行く自信も経済力もないぞ。
それにだ、うまく逃げおおせたとしても、こんなことが亮太に知れたら軽蔑されて、絶交されるだろう。
『お付き合いもせずに女性とそういうことをし、子どもを作っただと!?しかも複数と……。見損なったぞ鬼一!今すぐ世界中の海から彼女たちを探し出して、結婚しろ!ついでに、鬼ノ元さんのことは俺に任せておけ!!』
まあ、あいつの反応など容易に想像できる。目を三角にして吊り上げ、責任を取れと言うだろう。
「早くする早くする!子ども作る子ども作る!」
そんな俺の葛藤などどこ吹く風とやらに、彼女たちはあっけらかんと俺を誘ってくる。
まあ、気軽にスポーツでもしようかという雰囲気なのが救いだ。これが色気満載で誘ってきたのなら、シチュエーション的にグラついていたかもしれない。
「い、いえ、お誘いは嬉しいのですが、さすがにこの海のど真ん中では……。ほ、ほら、誰かが船で通りかかったり、飛行機で空から見られるかもしれませんし」
二人を刺激しないように、やんわりと断ってみる。
「鬼は恥ずかしい?交尾見られるの恥ずかしい?」
「も、もちろん、それなりには……」
「恥ずかしい恥ずかしい!鬼は恥ずかしがり屋!鬼は恥ずかしがり屋!」
何が面白いのか、ケタケタと笑う二人。
「だったら、海でする!海でする!」
「羅々たちのおウチに行く!おウチに行く!」
「はい!?」
そう言えば、彼女たちはどこに住んでいるのだろう。ずいぶんと世間知らずな様子だし、外界と交流しているようには思えない。
それに俺を連れて行くということは、呼吸ができるということなのだろうか。もしかして、御伽噺に出てくるような竜宮城……!?
「……っ!」
未知の世界に一瞬胸がときめくが、その期待を慌てて振り払う。竜宮城なら行ってみたい気もするが、昔話などから考えるに色々とリスクが大きそうだ。戻って来たら数百年が経ってたなんて、洒落にもならないしな。
それに、そこに行くってことは子作りも了承するってことだし……。
「…………ちなみにですが、お二人のウチの中なら、俺も水の中で呼吸ができるってことですか?」
いや、あくまで好奇心から聞いただけだ。けっして『竜宮城探検ツアー美女の子作りサービス付き』に心が傾いたわけではない!
「大丈夫大丈夫!エラ呼吸するエラ呼吸する!」
「そ……、そんなのできませんよ!」
「できない?鬼はできない?じゃあ、空気溜めてけば大丈夫!大丈夫!えーっと、1、2、3…………400くらい数えれば到着する!それから子ども作る!子ども作る!」
「いやいや!ギネス記録じゃねえんだから、イく前に逝っちまうよ!!」
いや、べつに駄洒落を言おうとしたわけではない。ついつい口から出てしまっただけだ。
今確信したが、この二人はけっして悪いアヤカシではない。しかし……、しかしだ。自分たちのテリトリーだけでしか生活していなかったのか、明らかに人間世界の常識とはかけ離れた感覚しか持っていない。その結果として、人に害を成す存在となってしまっているのだ。
まさかとは思うが、セイレーンや人魚の伝説も、案外こんな状況から生まれたのではないだろうか?ただ単に、子作りしたいアヤカシとの見解の違いから……。
しかしながら、陸上に生きるモノにとって呼吸は死活問題だ。だが、無邪気で悪気の無い彼女たちを納得させるにはどうすればいいのか。いっそのこと、この岩場の上で行為を……。
「早く行く!早く行く!」
「交尾する!交尾する!」
悩んでいる間にも、二人は無邪気に俺の手を引いてくる。だが、水中に引きずり込まれたら敵わないだろうし、待っているのは間違いなく溺死だ。
「わかりました。ですが、やっぱり水中はやめてここでシましょう」
そして俺は覚悟を決める。
奇々さんも羅々さんも、けっして悪いアヤカシではないのだろう。助けてもらったことに感謝もしている。
だが、俺だってこんな所で死ぬわけには行かないし、この先似たような状況の被害者が出ないともかぎらない。
「でも、この岩場で3人は少し狭い気がするんですよね。すみませんが羅々さん、順番が来るまで海で待っていてもらえませんか?」
「え~!羅々見たい!近くで見たい!交尾見たい!」
案の定と言うか、無邪気に俺たちのエッチを見物したいと言う。だが、それも想定のうちだ。やりたくはなかったが、俺は最終兵器を使うことを決意する。
「ハハハ、なにも遠く離れろって言ってるわけじゃないですよ。岩場から降りて、海に入っていてくれればいいんです」
「でも!でも!」
「心配しなくても……。ほら!」
これだけはやりたくはなかった……。だが、命には代えられない。
一瞬の躊躇の後、俺はおもむろに海パンを脱ぎ捨て放り投げる。いや、どう考えたって投げる必要はないんだが、なぜだかその時は、投げ捨てる方がカッコよく思えたのだ。
放り投げた海パンは、ヒラヒラと舞いながらあろうことか羅々さんの頭の上にポトリと落ちる。
「あ…………。すすっ、すみません!」
さすがに怒り出すかと思いドキリとするが、目の前の光景がよほど衝撃的だったのだろうか。そんなことなど気にもとめず、俺の体の一部分を興奮したようにジッと見つめている。
「すすす……、凄い凄い!鬼は凄い!」
「大っきい大っきい!たくさんできるたくさんできる!子どもいっぱい子どもいっぱい!!」
海パンの下から現れたのは、当然のごとく俺のイチモツだ。しかも、少し前から敢えて二人の上半身をガン見し妄想をしていたおかげで、それはそれは見事なまでに天に向かいそそり立っている。
そりゃあ上半身だけ見れば、二人ともナイスバディの可愛いお姉さんだ。これも思春期男子的には、仕方のない現象だろう。
「どうです?この大きさなら、少しくらい離れても良く見えるでしょう?それに、奇々さんの後でもまだまだ元気ですよ!」
ヤバイ……。アヤカシ相手とはいえ若い女の子にイチモツを見せつけ、なおかつ変態のごときセリフを口走る……。いくら命には代えられないとはいえ、俺の中の尊厳が音を立てて崩れて行く気がする。
しかしながら、可愛い女の子にイチモツを見せつけるという行為が若干楽しくなっている気がするんだが。無事に陸に辿り着いたら、ロングコートでも買いに行こうか……。
「早くする早くする!羅々、早く海に入る海に入る!!」
いかんいかん。奇々さんの声に我に返った俺は、慌てて妙な妄想を振り払う。
俺のイチモツを見て待ちきれなくなったのか、奇々さんは押しのけるように羅々さんを海へと入れる。そう、これこそが俺の望んだ展開とも知らずに……。
「では奇々さん、さっそくシましょうか」
俺は奇々さんの左腕を優しく掴む。そのスベスベでプニプニな感触に罪悪感がよぎるが、しかし……。
「すみません奇々さん!」
「へ?」
「うぉらぁああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
一気に奇々さんの腕を引き寄せると、体を反転させる。鱗の下半身というのは見た目以上に重量があるのか、俺が投げてきた相手のだれよりも重い。
おまけに、引き寄せた拍子に背中に柔らかい物体とコリコリした突起物の感触を感じ、気持ち良さから思わず手を抜きそうになる。
しかしながら、こっちだって命には代えられないのだ。
「へ?へ?へ……!?」
「しゃああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「にぎゃぁぁぁぁぁぁぁーーーーーっ!!」
勢いのまま、奇声をあげる奇々さんの体をぶっこ抜き水面に叩きつける。衝撃の柔らぐ水面を選んだのは、いくらアヤカシでも女の子を岩場に叩きつけるのは気が引けたからだ。
はたしてそれが、どの程度の効果があるのかと思うかもしれない。だが、見た目以上の重量のうえに、受け身も取らずに海面に叩きつけられたのだ。
プールでの飛び込み失敗を思い出してもらえればわかると思うが、腹を水面に打ち付けるだけでも結構強烈だ。それを思えば重量プラススピード、おまけに受け身無しとくれば、結構なダメージのはずだ。
「ねねねねねね……!姉様姉様ああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
数秒後、奇々さんは水面にプカリと浮かび上がる。ピクピク痙攣をしているが、何かをブツブツと呟いているし、死んではいないはずだ。まあ、アヤカシなんだし人よりははるかに丈夫なことを祈ろう……。
それに、ここで情けをかけるわけにはいかない。俺は最後のひと仕事の準備をする。
気合を入れるたびに、俺の体は赤黒く染まり筋肉が膨れ上がっていく。
「子作りもいいんだが、それより今は腹が減ってるんだよ。ああ。そういや、人魚の肉を喰うと永遠の命が得られるって伝説があったな……。フフフ、本当かどうか確かめるのにちょうどいいな。お前らまとめて喰ってやるから、こっちへこいよ。人魚の活け造りってのも、乙なモンだしな」
角と牙が伸びきり完全に鬼の姿に成ったところで、二人に向かい牙を剥き出しニヤリと笑う。
「ひ……ひ……、怖いーーーーっ!オトコ怖いオトコ怖い!鬼怖い鬼怖い!助けて助けてーーーーっ!!」
叫ぶが早いか、羅々さんは奇々さんを抱えると全速力で沖合へと消えて行った。
「ふう……、助かっ……って、え!?ちょ、ちょっと!俺の海パン……!」
だが、その手に俺の海パンが握りしめられていたことに気付いたのは、二人の姿が沖の彼方へと消え去り、見えなくなった後だった……。
えー、相変わらずの下ネタ全開ですみません。人魚編、もう1話だけお付き合いください。




