63 おいでませ竜宮城? 渚のはいから人魚にズキンドキン!? 4番
「…………………………ぅぅ……。………………っ!?熱っちぃっ!!」
背中に感じる焼けるような熱さに、慌てて飛び起きる。一瞬自分が灼熱地獄にでも落ちたのかとも思ったが、よく考えれば俺は鬼なんだし、どちらかといえば獄卒として地獄で働く立場だろう。
もちろん天国に行けるほどの善行をした記憶はないが、地獄に堕ちるほどの悪さをした覚えもない。自分が死んだのかもしれないというのに、すぐには現実が受け入れられないのか、のんびりとそんなことを考えていた。
しかしながら、あまりにハッキリとした景色や感触に、しだいに自分がまだ生きているのだというという実感が湧いてくる。
「なんだここ……。俺、助かったんだよ……な?」
幸いにもと言うべきか、岩の上でバーベキューになりかけたおかげでハッキリとした頭で周りを見て見れば、俺がいるのは海のど真ん中に突き出た平らな岩場だ。
溺れたと思ったものの、流された先で運よく岩場にでも引っかかったのか……。
「助かったのはいいけど……。しっかし、どうすんだよ……」
俺は遠くに見える岸を眺める。ここから叫んだって声など届かないだろうし、人だって米粒のようにしか見えない。要するに、助けを呼ぼうとも限りなく不可能に近いということだ。
だが、いつまでもこんな所にいるわけにはいかない。
もちろんいつかは、俺がいないことを心配した華澄さんが何らかの行動を取ってくれるだろう。だが、それまでこの炎天下に居続けるのは危険だ。脱水症状や、日焼けによる全身やけどの危険だってある。
このまま運を天に任せ救助を待つか、意を決して泳ぎだすか……。真剣に悩んでいた時だった。
「あ、起きた起きた!」
不意に背後から聞こえてきた声に驚き、慌てて振り返る。
「え……!?」
そこにいたのは、普通ならこんな所にいるはずのない若い女の子だった。歳の頃なら澄麗さんくらいだろうか。岩場に両肘をついて顔だけを覗かせ、ニコニコとこちらを見ている。
「あ……、あの、実は溺れて流されてしまったんです!その、ボートとかで来てるんなら、もしよかったら岸まで乗せて行ってもらえませんか」
俺が真っ先に思い浮かべたのは、マリンスポーツや釣りの途中で近くを通りかかり、俺を見つけてくれたのではないかということだった。それならば、移動方法や通信手段を持っているはずだ。
それに、もしも俺を連れていくことが不可能でも、助けを呼んでもらうことはできるだろう。
「ねーねー、お前オトコ?お前オトコ?」
「は?いや、そうじゃなくて、助けを……」
「羅々、お前拾った、お前拾った」
「羅々……?あ、もしかしてあなたの名前ですか?拾ったって……。つまり、羅々さんが俺を助けてくれた……ってことでしょうか。それは……ありがとうございます」
噛み合わない会話ではあったが、どうやら溺れていた俺を彼女が助けてくれたらしい。とりあえず頭を下げて礼を言う。
だが、そこで俺はあることに気付く。
それは、彼女の見た目であった。
短めの髪は初めこそ黒く見えたものの、よく見れば深い緑色をしている。陽の光を浴びると、それは顕著に色の深みを増す。それに、髪の間から見える耳は三角に尖り、ピンと上を向いている。
さらに言えば、どう見たって周りにボートやダイビングの機材も見えない。それなのに、こんなところに女性が一人でいるなんて……。
「そりゃあ、そんな都合のいい偶然があるわけないよなぁ……」
思わずため息を吐く。つまり俺は、またしても人間以外のモノを『呼んで』しまったわけだ。
「ねーねー、お前オトコ?お前オトコ?」
だが、まだ彼女が危険な存在と決まったわけじゃない。見た感じは明るく人懐っこそうだし、溺れていたところを助けられたのも事実だ。それに、こんな沖合に一人でいるということは泳ぎも達者なのだろう。この様子ならば、陸まで運んでくれるかもしれない。
しかし、どこからどう見ても男にしか見えない俺にそんな質問をするとは、いったい今までどうやって生活してきたのだろうか。
「はい、俺は男ですよ」
悩んだ末に、正直に答える。いくらなんでも、男だとわかった途端に殺されたり食われたりすることもないだろう。それに見た目だってほとんど普通の女の子なんだし、万が一襲われたって、この岩場の上なら何とかなるだろう。
そもそも、後で嘘がバレるほうがヤバそうだしな。
答えは正解だったのだろうか。俺の言葉を聞いた途端、彼女は目を輝かせ、嬉しそうに叫んだ。
「羅々、オトコ拾った、オトコ拾った!」
「なっ……!?ちょ、ちょっと、ダメですって!な、何か羽織らないと……!」
俺が男であることが、余程嬉しかったのだろうか、彼女ははしゃぎながら岩場に上半身を覗かせる。いや、そのこと自体はなんの問題もない。
いや、男にとっては問題はないのだが、世間的……、特に女性から見ればとてつもない大問題があって……。
その問題とはつまり、彼女が上半身『すっ裸』だったことだ。
もちろん長い髪に隠れてとか、その時謎の光が差し込んで……なんてお約束展開が起きるわけがない。そもそも彼女の髪は肩まで届かないくらいに短いし、今は真昼間。最初から光も差し放題である。
当然そんな状況で見えるものはと言えば……。
それはお腹の真ん中にある、くぼんだ小さなおヘソ……。ではない!
もちろん、真っ先にそこに注意が行く変態……じゃなくて、高尚な趣味を持つ人もいるのだろう。だが、残念ながら俺にそんな高尚な趣味は無い。見てはいけないと思いながらも、当然のごとく目線はもっと上に行くわけで……。
そこにあったのは、二つの柔らかそうな果実だ。
華澄さんや澄麗さんほどの大きさはないが、那澄菜や秘密子よりははるかに大きく、柔らかそうな膨らみを見せている。おまけに、その上に見える薄桃色の二つの突起が、得も言われぬ色気を醸し出し……って、いかん!!
理性と本能が闘いを繰り広げながらも、俺は必至で目をそらす。
そうだ、今ここで彼女の機嫌を損ねたら、帰る手段も怪しくなる。それにここは目撃者もいない海の沖合。無事に陸に辿りついた時に、俺が彼女の服をむしり取ったなどと誤解されたら、完璧に犯罪者扱いである。
でも、元々裸だったってことは、それほど気にしていないのだろうか。それに彼女はアヤカシだ。羞恥心だって人間とは違うかもしれない。だったら、少しくらい見たってやましいことは……。
「ねーねー」
「はいっ!?」
無理やり自分を納得させ、少しばかり盗み見ようとしていた俺だったが、やはり罪悪感が勝ったのだろう。声を掛けられた瞬間、慌てて目を反らす。
「嘘じゃない?ホントにオトコ?ホントにオトコ?」
「ホントですって。嘘なんか吐きませんよ」
どこからどう見たって、こんなゴツイ女性がいるわけないだろう。あまりのしつこさと噛み合わない会話に、少しばかり恐怖を感じる。
「奇々姉様奇々姉様!羅々、オトコ拾った、オトコ拾った!!」
「え?姉様って……?うわっ!?」
はしゃぐ女性の声を聞いて海から飛び上がってきたのは、彼女にそっくりの顔をした、もう一人の女性だった。
「なっ……!」
岩場に飛び乗ってきた女性は、顔立ちといいおっぱいの色、艶、形、大きさ、張り、先端の膨らみ具合といい、羅々さんにそっくりだった。ちなみに、おっぱいの描写だけやたらに多いことはスルーしてほしい。
姉様と呼ばれていたことからも、おそらくは双子なのだろう。違いがあるとすれば、髪は奇々さんのような深い緑ではなく、深海を思わせるような濃い青色であることか。
さらには、格好も妹と同じである。つまり、なぜこれだけ克明におっぱい描写ができたのかと言えば、姉の方も丸出しということで……。
いや、ぶっちゃけ本来なら嬉しいToLoveる、ラッキースケベな展開のはずだが、今の俺は目の前で揺れるおっぱいなど目に入っていなかった。
俺が目にしていたのは、彼女の下半身だ。そこは上半身と同じく、さも当たり前だというように衣服は着用されていない。
思春期男子としては、おっぱいよりも下半身に目が行ったのか……。そう思われても仕方ないだろう。
だが、俺が目を奪われていたのはそんなことじゃない。
岩場に横たわり、興味津々な瞳でこちらを見つめる彼女の下半身。それは、鱗の生えた大きな魚のものだったからだ……。
奇々と羅々、どこかで聞いたような名前ですね……。いえ、決して他意はありません。あの二人は姉弟ですし……。少しばかり短い回ですが、投稿できるタイミングを優先しました。次話を投稿できるのは、おそらく月末あたりになるかと……。




