6 極楽へイかせてあげるっ!? JS美澄 極〇大作戦 その1
「うふふ、遠慮しないでどんどん食べてね。今日は鬼一君の歓迎会なんだから」
「うわ~、すっごーい。ケーキもあるぅ。『キーお兄ちゃん』のおかげだね」
「おぉぅ!久々のご馳走だにゃ~。まさに『キーくん』様様だねん。んじゃ、さっそくいただこうかにゃ」
「あらあら、二人ともそんな呼び方ズルいわ。じゃあママも、『キーちゃん』って呼んじゃおうかしら。『鬼一君』じゃ、他人行儀だしね。うふふ、なんだかお母さんぽくていいわねぇ」
「ケッ!なに浮かれてんだよ。おいお前、オレはお前を家族なんて認めてねえからな。調子に乗るんじゃねえぞ」
「もう、那澄菜ったら……。春から一緒に高校に通うんだから、仲良くしないとダメよ」
「一緒『に』じゃねえ!一緒『の』だ!!いいか、ぜってー学校で話しかけたりしてくるんじゃねえぞ!それと、一緒に住んでることバラしたらぶっ殺すぞ!」
円城家へと引っ越した初めての夜、夕食時にささやかながらも、俺の歓迎会が開かれていた。
いや、ささやかというのはあくまで華澄さんの弁で、実際にそんなことを言ったら罰が当たるだろう。
テーブルには寿司や天ぷら、ピザにハンバーグ、オードブルなど色とりどりの食べ物が和洋折衷とばかりに並んでいる。そしてデザートにはいくつかのフルーツ。さらにテーブルの中央には、大きめのケーキが鎮座している。
みんなの口ぶりからすれば、普段の食卓とは全く違うらしいし、俺のために無理して用意してくれたのだろう。
新しい家族に対し、どんな態度で接すればいいんだろう……。いや、華澄さんはああは言ってくれたものの、本当は皆迷惑してるんじゃ……。
そんなふうに悩んでいたことが馬鹿らしく思えるほど、円城家の人たちは友好的だった。
長女の澄麗さんは若干下ネタに寄っているものの、常に冗談を言って和ませようとしてくれるし、三女の美澄ちゃんはいかにも子供らしく、無邪気に俺を慕ってきてくれる。
次女の那澄菜は……。
まあ、これが普通の反応だろう。もっとも、文句を言いながらも一番がっついて料理を食べているのも、コイツなんだが。
「どうしたのキーちゃん。お口に合わないの?あら、もしかして……。うふふ、ちょっと待っててね」
遠慮して箸の出ない俺をどうとらえたのか、華澄さんは席を立つと、少しして何かを抱えて戻ってくる。その豊満な胸の間に挟まれ、谷間の間からそそり立つ首元を覗かせているのは……。
いかん。俺にも、澄麗さんの下ネタが伝染ったのかもしれない……。
とにかく、華澄さんが胸の間から太い首を覗かせながら持ってきたモノ……。それはなんと、一升瓶だった。
「やっぱりキーちゃんは、こっちのほうが良かったかしら?」
「おっ、いいね~。ママの秘蔵の日本酒をついに解禁かにゃ?それじゃ、遠慮なくいただこっかねぇ」
「もう……、あなたは未成年なんだから、ホントはダメなんだからね。まあ……、一杯だけよ」
「ふふん。わかってるって。ちょっと大ジョッキ持ってくるから、待っててねん」
「もう!変なとこばっかり知恵を付けるんだから……。あ、キーちゃんも未成年だけど、種族的には飲んでも大丈夫……よね?」
「あ……、はい、一杯くらいなら。でも、いいんですか?」
「うふふ。いつもとはいかないけど、今日は特別なお祝いだし、ナイショの無礼講ってことで……ね」
「そうですか。それじゃあ遠慮なく」
正直に言えば、俺はザルである。
昔話にもよくあるように、鬼というのは御多分に漏れず酒が好きだ。いや、愛していると言ってもいいだろう。おそらくは、あの一升瓶を飲み干しても泥酔することもないくらいに。
もっとも、昔話ではその酒好きのせいでいろいろとやらかしたり、退治されたりするわけだが……。
だが、秘密子が酒を飲んでいるのを見たことはないし、好きという話も聞いたことはない。だから全てというよりは、一部の鬼だけかもしれないが。
もちろん、今の生物平等がうたわれる世の中で、未成年である俺が大っぴらに酒を飲むことはできない。せいぜい誕生日……、と言っても、俺が拾われた日という便宜上の誕生日ではあるが……。そういった特別な日に、先生方のお目こぼしで一杯だけ飲ませてもらうくらいだ。
そういう意味では、華澄さんの提案は目の前に並ぶご馳走よりも魅力的だ。
「オレは飲まねーぞ。つーか、二人ともどういう危機感してんだよ。無防備に酔っ払いでもして、こいつに襲われたらどうすんだよ!」
「あら、キーちゃんはそんなことしないわよ。ねぇ?」
「そーそー。それにもし溜まってるんなら、アタシが面倒見てあげるから心配いらないよん。なんだったら、今晩部屋にくるかにゃ?うふふん。ご馳走のあとのデザートは、ア・タ・シ・って……ねン」
「たたた、溜まっ……!?澄麗姉!なんてこと言うんだよ。そそっ、そんなこと言って、も、もしも興奮したコイツが、ケッ、ケダモノみたいになったら……!」
「けだもの?キーお兄ちゃんが、ワンコやニャーみたいになるの?か~わいい~。美澄、ケモノお兄ちゃん見てみたーい」
「ちっ、違げーよ美澄!ケダモノってのは、そ、その……、ア……、アレが、お、大っきくなったり……して……だな……」
「アレってなーに?」
「な、何って……!ア、アレってのはその、ち……ちち……、おお、おちん……。いっ、いやいい!美澄はまだ知らなくていいから!!」
「なんでー?お姉たちだけ知っててズル~い。キーお兄ちゃんの何が大っきくなるの?」
「にゃっははー。美澄には、また今度じっくり教えてあげよう。大っきくする方法もね。なんだったら、それを気持ち良くする方法も……」
「そっ、そこまでだ!バカなこと教えるんじゃねーよ澄麗姉!美澄にはまだ早えぇよ!!」
「にゃはは。そんじゃしょうがないにゃ~。そんなに心配なら、今晩アタシは諦めて、キーくんのお世話は那澄菜に譲ってあげるよ」
「ああ、それなら安心……、って、なんでだよ!」
「キーくん、那澄菜はまだなんだから、優しくしてあげてねん」
「ななっ!なんで知って……。い、いや、なな、なに言いだすんだよ!!」
「あらまあ、那澄菜にもまだ早いと思うけど……。でも、相手がキーちゃんなら安心かしら。だけど、避妊はちゃんとしないとダメよ。この時間なら薬局は閉まっちゃってるから、コンビニかしらねぇ。那澄菜が買い辛ければ、ママが買ってきてあげようか?」
「ひ……、ひにっ……!?そっ、そんなことするわけないから!買ってこなくていいからっ!!」
「あー、それからキーくん。ガツガツした男は嫌われるから、まずはムード作りからね。特に那澄菜は、外見に似合わずロマンチストだからね~。あ、でも女って、時にはケモノのように襲い掛かられたい時もあるし、その時の相手の気分をちゃんと見極められるようにねん」
「な……、な……、んなことあるわけねえだろぉぉぉ!」
女性主導の過激な会話の内容に、俺は口を挟めず下を向いていた。ついでに少しばかり前かがみになっていたが、けっして下心あってのことではないと理解してほしい。
なんて言うか、次女の那澄菜は外見に似合わず……、いや、この外見だからこそだろうか。弄られキャラであるらしい。まるでコントのような光景を繰り広げているが、正直エッチなネタは勘弁してほしい。
もっとも、そんなことができるのは家族である澄麗さんたちだけだろうが。
俺が女性に対して手慣れた男ならともかく、女性と付き合ったこともなければ、今までの人生で秘密子以外の年頃の女の子との接点もなかったのだ。
女の子に対する免疫もないし、まして美女ぞろいの円城家でどう振舞っていいのかもわからない。
でも、那澄菜の口の悪さはそんなに嫌な感じはしない。おそらくだが、やさぐれた時の秘密子になんとなく似ているからかもしれない。
「それより、早く食べないとお料理が冷めちゃうわよ」
「ほぉらキーくん。飲みねえ食いねえ。どんどん食べないと、全部那澄菜に食べられちゃうよん」
「オッ、オレはそんなに意地汚くねえ!」
「でも、さっきから那澄菜姉だけ一人で食べ続けてるよ」
「そっ、それは……。美澄たちの食うのが遅いんだよ!」
「はいはい、キーくんも遠慮しないで。飲む前に何かお腹に入れといたほうがいいよ。あ、もしかしてお姉ちゃんに口移しで食べさせてほしいのかにゃ?んも~、だったら素直に言えばいいのにぃ。このウインナーがいいかにゃ?はい、ん~っ」
「すっ、澄麗姉!だからやめろって!!」
「ずる~い。美澄もやる~っ!はい、キーお兄ちゃん」
短い時間の中だが、俺はなんとなく円城家の人たちの性格を理解していた。
母親の華澄さんは世話焼きだし、長女の澄麗さんは明るいムードメーカーだが、言うことを適当に受け流しておいたほうがいいタイプだ。
次女の那澄菜は、見かけによらず真面目なのだろう。それゆえに、澄麗さんの格好の玩具となっている。
三女の美澄ちゃんは、素直ないい子だと思う。ただ、何かを腹に隠し持っているような……。つまり、正直よくわからない感じだ。そういった意味では、那澄菜のほうがはるかにわかりやすい。
そんな騒ぎの中で宴は進み、俺の酒も一杯では済まなかった。そして夕食が終わるころには、一升瓶は空となっていたのだった。
だが、その時の俺は知らなかったのだ。この酒こそが、のちの悲劇を生み出す原因となることを……。
タイトルは言わずと知れた、往年の大ヒットオカルトラブコメ漫画(という括りでいいのだろうか?)からです。いろいろとチョイスが古いのは察してください。いや、名作ですし、ほとんどの方はご存じのはず……ですよね?しばらくは、ちょっとエッチなラブコメ展開が続きます。いや、もちろんソフトなエッチ展開ですよ(当社比)。