表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

54/77

54 HOUSE OF THE DEAD 潜入!? 砂漠のキツネ作戦1

「いや~。なんかこの状況、ホッとするよなー。2年になっても鬼一と同じクラスとは。あの金髪も同じってのはちょっとアレだけど、悪いヤツじゃないのもわかったしな」


 窓から入り込む、少しばかりひんやりとした風を感じながら、亮太はご機嫌な様子だ。

 どういう縁かはわからないが、俺と亮太、那澄菜はまたしても同じクラスとなった。

 正直に言えば亮太以外に友人のいない俺はホッとしているし、友達のいない那澄菜も、見知った顔がいることで安心しているのではないだろうか。

 特進クラスの秘密子は仕方ないが、心配せずとも外面のいいアイツは、うまくやっていくだろう。

 

「ま、ガキの頃からの腐れ縁だよな」

「ハハハ、腐れ縁で結構だよ。鬼一が嫌がろうが、俺は一生お前と友達をやめる気はないからな」

「気持ち悪いこと言うんじゃねーよ。つーか、お前ってホントにそっちの趣味はないんだよな……?」

「は?なんの趣味だって?」

「い、いや、だからだな……」

「大丈夫っすよ。何かあれば先輩をお守りしますし、そもそも自分だって、一生先輩について行く覚悟っす」


 毒づきながらも、亮太の気持ちは嬉しかった。コイツはどんな時でも、真っ直ぐに俺と付き合ってくれるいい奴だ。


「つーか、まだ那澄菜が怖ぇのかよ。コミュ力お化けのお前がよ」

「いや、もうそこまでのことはねぇけど……。ただ、話しかけんなオーラがすごくて、声をかけ辛いのも事実だな」

「あの金髪っすか?見たところたいして強くない……、というか弱いっすよ。実戦的な筋肉も付いてないし、腰も据わってないですし。なんなら、自分が代わりに倒してきましょうか?」

「いやいや、馬鹿なことすんなよ!つーかお前、普段からそんなところ見てんのかよ」

「当然っす。いついかなる時でも油断はせぬように。戦いの基本っすから」

「普通の人は、いかなる時でも戦いを求めてねーんだよ。……って、そもそもなんでお前が2年の教室にいるんだよ!」


 先ほどから、俺の後ろに直立不動の姿勢で立ちながら口を挟んでくるのは、柔道部の後輩、いや、正確には女子部だから俺の後輩ではないのだが……、稲荷坂銀狐だった。

 

「なにを言うんですか先輩!自分は先輩に押し倒され、完膚無きまでにヤられた時からおそばにお仕えすると誓ったんです。いついかなる時であろうとお役に立てるよう、先輩が望んだ時にはどんなご奉仕でもできるように、近くにいるのは当然じゃないっすか!!」

「おっ……、おま……!誤解を招く言い方するんじゃねえ!!」

 

 コイツはただでさえ目立つ容姿のうえに、人間基準から見ても結構な美少女だ。さらには少しばかりマニアックな趣味の奴らは、妙にギラギラとした視線で銀狐を見ている。その視線は主に、頭上の獣耳やスカートの腰の部分から出た、狐の尻尾に向いているようだが……。

 そんなヤツが休み時間のたび、俺の元に足しげく通ってくるのだ。俺に対してさすがに露骨に事情を聞いてくるヤツはいないとはいえ、教室中が聞き耳を立てているのはヒシヒシと伝わってくる。

 

『おっ……、おい!押し倒したうえに、完膚なきまでにヤった……って……。い、いったい、ナニを……』

『う、うそ、まさか無理矢理……?ほ、法眼君って、見た目と違って結構真面目だし、そんなことするはずないと思ってたのに……。そ、それに、もっとちっちゃい子が好きなんじゃなかったの?』

『で、でも、あの子嬉しそうだぜ。そんなことされたのに忠誠を誓うとか……。肉奴隷とか快楽堕ちって、マジで存在するんだな……』

『マジか!?法眼って、いったいどんなすげえモノ持ってやがんだよ……』

『お、俺水泳の着替えの時にチラっと見たけど、ツチノコって実際あんな感じなのかも……ってヤツだったぜ』

「スゴい……。チン〇で黙らせる……。そんなことって、ホントにあるんだ……。や、やっぱりエロゲーの恋愛知識は間違ってなかったんだ!」

「ケモ耳少女……。萌える……」


 教室からは、耳を覆いたくなるようなヒソヒソ声が聞こえてくる。というか、この手の誤解はもう慣れたというか、半分諦めている。

 唯一の救いは、亮太が怒っていないということだ。コイツはなんだかんだと、クラスの連中からの信頼も厚いし、俺と違い皆との付き合いもある。

 その亮太があまり気にしていないところをみると、クラスの連中も半分冗談が混じっているのだろう。いや、むしろそうだと信じたい……。

 それに俺に負けたことで、銀狐の態度も当初よりかは随分とくだけてきている。コイツの今後の部内での立場を考えれば、悪いことではないだろう。

 それよりも……。

 もう一つの懸念事項へ目をやる。先ほどから、俺に対し汚物を見るような視線が突き刺さっている。なぜかはわからないが、妙に不機嫌な様子の那澄菜が、こちらをチラチラと見ているのだ。

 いや、わからないことはないか。誤解とはいえ、俺が力尽くで女の子を従えているなどと聞けば、相手の子を心配するに決まっているだろう。

 もっとも、那澄菜の不機嫌そうな顔は、今に始まったことでもない。それよりも問題は、廊下から感じる視線だ。

 

「なにやってんだよ、秘密子……」


 どこから聞きつけたのか、休み時間のたびに秘密子が教室の前まで来ており、廊下からこちらを射殺すような目で睨みつけているのだ。

 アイツは、校内の男から結構な人気がある。そんなヤツが休み時間のたびに俺に対して不審な行動をとっていれば、また妙な噂が広がりかねない。

 

「それよりも先輩、本日の稽古後はお暇でしょうか」

「あん?いや、別に用事はないけど」

「良かった!ならば、自分の家へお越しいただけないでしょうか」

「はぁ?なんで……」


 突然何を言い出すのかと思ったが、そういえば銀狐の家は、親父さんが道場を開いていると言ってたっけ。

 

「押忍!自分を打ち負かした先輩のことを両親に話したところ、ぜひ連れてきて欲しいとのことでしたので」


 瞬間、さらに教室のざわめきが強まる。

 

「お、おい、どういうことだ?自分をその……、お、犯……した相手を、両親に紹介するとか……」

「ご両親に仇を取ってもらう……とか?」

「だったら、闇討ちとかするんじゃない?」

「じゃあ、なんのために……」

「普通に考えれば、男の子を両親に紹介するっていったら、結婚を考えてる相手とかだけど……」

「まさか!?レ、レ……プから結婚って……、マジかよ……」


 おい、やめてくれ……。俺は思わず叫びだしそうになっていた。なぜなら、教室のざわめきが大きくなるたびに、廊下からの殺気も大きくなってくるからだ。


「い、いや、そもそもなんでお前の親が、俺に会いたいとか言うんだよ?」

「さあ?自分は、先輩をお連れしろと言われただけですので」


 まさかとは思うが、本当に『娘を頼む』とかはないだろう。あり得るとすれば、『よくも娘のプライドを傷つけたな!』というところか。どちらにせよ、トラブルに巻き込まれるのは御免だ。

 

「悪いが断る!理由もわからずに、お前の家に行く気はない」

「しっ、しかし先輩……」


 露骨にしょげ返る銀狐には悪いが、進んで厄介ごとに巻き込まれる気はない。だが、意外な人物が銀狐の味方になった。

 

「いいじゃねえか。後輩の頼みを聞いてやるのも、先輩の務めだぜ」


 唐突に口を挟んだのは、亮太だった。


「そんな難しく考えなくても、稲荷坂の家は道場だって言ったろ。それにコイツの才能は天才的だ。そんな娘を倒した相手を見てみたいってのは、武道家として当然のことなんじゃねえのか?」

「そ、そう言われれば、筋は通ってるけど……」

「それに、稲荷坂の目を見りゃわかるだろ。コイツだって、真剣に頼んでるみたいだし」

「う……、ま、まあ……」


 確かにそうだ。周りに流されすぎて、少し神経質になっていたのかもしれない。だが、俺は亮太の本心に気付いていた。

 いいことを言ったふうな亮太だし、実際に後輩のことを思っての発言だろう。だが、俺にはその裏にある思惑が透けて見えていたのだ。

 その思惑とは……。

 亮太はおそらく、いまだに俺と秘密子の仲を疑っている。厳密に言えば、俺と秘密子は無意識にだがお互いに好意を抱いており、何かのきっかけがあればくっつくのではないかと勘違いしているのだ。

 むろん、本当に俺と秘密子がそういう関係であれば、邪魔をする奴じゃない。むしろ自分の気持ちを押し殺し、全力で俺たちをくっつけようとするだろう。

 だが、俺たちはそんな関係ではないし、俺だって秘密子に対しそんな気持ちは持っていない……はずだ。ならば本当にそうなる前に、俺に彼女なり気になる女の子を作らせ、その芽を摘んでおこうというのだろう。

 仕方ない……。これ以上亮太に妙な誤解をさせておくのも可哀想だ。

 

「わかったよ……。じゃあ、今日の部活帰りに寄ってくよ」

「お、押忍!ありがとうございます。赤神先輩もありがとうございます。意外に弱かったのでがっかりしていましたが、出会ってから初めて、赤神先輩が頼もしく見えました!」


 よほど嬉しかったのか、銀狐の顔に満面の笑みが浮かぶ。その笑顔は、いつもそんな態度ならば、さぞ男にモテるだろうという愛らしさだった。

 

「…………。おう……、気にするな。これも先輩の務めだ……」


 満面の笑みの銀狐とは対照的に、亮太は複雑な笑顔だ。

 正直に言えば、俺は後輩を指導するとか、面倒を見るのはガラじゃない。だが、死んだ魚のような目で笑う亮太を見ていると、一つだけ俺が銀狐にしてやれることがあることに気付く。

 俺のできること……。それはとりあえず、コイツの正直すぎる言動を直してやることなんだろうな……。

 その時、次の授業の合図となるチャイムが鳴り響く。

 

「では先輩、約束っすよ」

「おう、わかってるよ。まあ、町道場ってのもちょっと面白そうだしな」


 その言葉と同時に、ミシリという何かがつぶれたような音がする。

 

「ん?」


 音のした方を見るが、そこには誰もいない。というか、いつの間にか秘密子もいなくなっている。俺の監視にも飽きたんだろうし、真面目なアイツのことだ。チャイムが鳴る前に、とっくに教室に戻ったのだろう。

 

 入り口の柱が、何かに握りつぶされたようにひしゃげている!そんな騒ぎが起きたのは、授業が終わった直後のことだったが……。

銀狐編第二弾です。新キャラを出した後、そのキャラを引っ張ることはありがちですが……。もう少しお付き合いください。ちなみにタイトルにさして意味はありませんし、鬼一が銃をぶっぱなしながら、ゾンビを退治するお話でもありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ