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49 恋のから騒ぎ 合コンラプソディー・イン・ブルー 1

「ねー、いいでしょ?お願い澄麗ぇぇん」

「だからぁ……。スケベな男じゃないんだし、アタシにそんな猫なで声出したって効くわけないでしょ」

「チッ。最早澄麗の彼氏と言っても差し支えない付き合いの、アタシのお願いを断るとは……」

「差し支え大アリよ。そもそも、アタシがそういうの好きじゃないって知ってるでしょ?ユッコ」


 目の前でおどけ気味に両手を合わせる女性に対し、困惑した表情を見せているのは円城家の長女、お笑い担当?の澄麗だった。

 ここは澄麗が通う女子大の中庭。澄麗に手を合わせて何やら懇願しているのは、彼女の友人だろう。その見た目は澄麗ほどではないにせよ、類は友を呼ぶというべきか。世間一般では、十分にお洒落で美人と言われる部類の女性である。

 

「それはわかるんだけどさぁ……。でも今、彼氏いないんでしょ?てゆーか、ホントは隠してるとか?え?なに?まさか……、ホントにアタシに彼氏になって欲しいとか?う~ん……。まあ、澄麗ならアリっちゃアリかも……」

「んなわけないでしょ。隠してもないし、ユッコで妥協する気もないから。てゆーか、そもそも慌てて欲しいとも思わないし。それより、アタシがそーゆーの好きじゃないの知ってるのに声かけるなんて……。珍しいじゃない」

「あはは……。やっぱ気になるよね?実は今回さぁ、(じん)先輩が声かけてきてくれたんだよね。んで、条件として澄麗が来るんなら友達集めるって言うから……。だからさぁ……。ね、お願い!」

「神先輩って……。てゆーかユッコ、まだ先輩と付き合いがあったんだ……」


 澄麗の脳裏に、唐突に高校時代の先輩の顔が浮かぶ。

 神先輩……。

 澄麗の1学年上の、イケメンで運動神経も良く、爽やかで成績もトップクラスという、女子にとっては憧れの的だった人だ。

 そして、澄麗に何度かアタックしてきては、フラれた人物でもある。

 友人たちからは随分と羨ましがられたが、何度言い寄られようが澄麗は首を縦に振らなかった。

 もちろん澄麗だって、色恋に興味がなかったわけじゃない。ただ、先輩の取ってつけたような優しさと爽やかさがなぜだか嘘臭く感じられ、自分とは合わないと思ったのだ。

 それに、女性関係ではあまり良い噂を聞かなかったような……。

 もちろんその噂は同性からのやっかみや、相手にされなかった異性からの嫉妬もあったと思うし、澄麗自身が何かを見たわけでもないのだが……。

 そういえば、卒業後は国立大学の医学部へ進んだとも聞いている。

 それが、今頃になって話が出てくるとは……。

 たしかに、ユッコも神先輩に憧れていた女子の一人だ。おまけに先輩の所属していたテニス部でマネージャーもしていたし、連絡先を知っていてもおかしくはないだろう。

 

「澄麗は先輩に興味無いんでしょ?だったら、協力すると思ってさぁ。もちろん、澄麗の気が変わったんなら、先輩にはちょっかい出さないから」

「別に興味は無いけど……。って、ユッコはそれでいいの?だったら、行く意味ないんじゃ……」


 憧れの人が来るから飲み会に行くというのに、取られても良いという友人の言葉の真意がわからず、さらに困惑顔になる澄麗。


「いいのいいの。たしかに狙ってはいるけど、正直アタシには高嶺の花だし。ぶっちゃけあわよくばってくらいだから。それに先輩がダメでも、友達も結構なイケメン揃いだし、今回は医学部の集まりなの。いいの見つけられたら儲けものってカンジだから」

「先輩には全く興味無いし、取るつもりはないけど……。でも、そんなテキトーに彼氏選んでいいの?」

「だってさぁ、せっかくのキャンパスライフなんだし、ハタチ前には彼氏欲しいじゃん」


 あっけらかんと言う友人に少しばかり呆れるが、もしかしたらそれが、自分に気を遣わせないためのお芝居かもしれないと思い直す。

 そもそもこの友人は自由奔放な性格に見えて、実際は結構真面目で気遣い屋なのだ。身持ちも固いし、その点はわりと自分に似ているのかもしれない。

 だが、そろそろ彼氏が欲しいと思っているのも本当なのだろう。

 そもそもユッコが心配せずとも、澄麗に神先輩とどうこうという気はまったくない。それに、参加者の中に先輩以外にユッコが気に入る相手がいるかもしれない。

 だったら、友人としてひと肌脱いでやるのも悪くないか……。

 

「はいはい、わかったわかった。そのかわり、一次会までだからね」

「さっすが澄麗!話がわかるぅ」


 苦笑いをする澄麗だったが、高校の入学式で隣の席に座った縁で仲良くなって以来、3年間を共に同じクラスで過ごし、さらには大学まで同じ道を選んだ親友だ。そんな相手の笑顔を見てしまっては、今さらイヤとは言えない。

 

「で?ホントのトコどうなのよ?」

「はい?」


 突然切り替わった会話に、澄麗の顔がさらに困惑する。

 

「彼氏よ彼氏。いるんでしょ?カ・レ・シ。ホントのこと言ってみ」

「はあ?いきなり何言ってんのよ?そんな人がいたら、講義後までユッコと一緒にいるわけないでしょ」


 いきなり妙なことを言う友人に面食らうが、そんな男がいないことは自分自身が一番よく知っている。というか、この娘は何を言い出すのだろうか。

 だが、澄麗のそんな言葉をまるで信用していないとばかりに、ユッコはニヤニヤと笑っている。


「ふふ~ん。ホントかな~?そのわりには、クリスマスのロンリー女子会にも参加しなかったじゃない。それに、この前のバレンタインも妙にウキウキしてたし、次の日もご機嫌だったしね」

「え……?は……、はぁ!?違うから!クリスマスは、家族と妹の友達たちでパーティーって言ったでしょ。チョコだってみんなでキー……、か、家族にチョコをあげただけってゆーか……」


 言いながらも、なぜか澄麗は自分自身に違和感を感じていた。

 そうだ、鬼一はあくまで家族なんだし、ましてや年下の男の子。弟のような存在のはずだ。それをなぜ、親友に隠す必要があるのか。

 大学生になった自分の視点から見れば高校生……、まして1年生の男の子など、中学生に毛が生えた程度の子供だ。だからこそ、母親が熱心に進めていた養子の話にもOKをしたのだ。

 そうは言ってもあの男のこともあったし、ましてや相手は人間ではないのだ。正直に言えば不安はあった。けれど、あの時傍観してしまった自分に、何か言う権利があるのかという罪悪感もあった……。

 だが、意外にも一番反対すると思われた美澄が賛成したことで、澄麗に何か言う気はなくなった。

 今にして思えば不思議なことだが、施設でこっそりと鬼一を見た時も怖がらなかったし、あの子なりに鬼一の人柄に、なにかを感じ取ったのかもしれない。

 初めて見た時の鬼一の印象は、確かに大人びていたし体も大きかった。無愛想で何を考えているのかよくわからなかったし、正直に言えば人間でないがゆえの怖さもあった。

 さらには思春期真っただ中の男の子だし、性的な面での不安もあった。

 本当の所など知る由もないが、少なくとも物語の中での鬼の役割と言えば、女を攫い、力尽くでモノにする悪役のイメージもあった。あんな大きな男の子に襲われたら、果たして自分たちが抵抗しきれるのか……。

 だが、実際に一緒に暮らしてみると、真面目で多分に純粋な少年らしさを残した子だったし、那澄菜と一緒にからかうと、二人で相応の反応をしてとても面白かった。むしろ、澄麗のほうが積極的にセクハラを仕掛けて行くくらいに……。

 それが、なんだろう……。1年近くを経て、随分と男らしくなった気がする。何があったのかはわからないが、特に夏ごろからの成長ぶりは、時おり男を意識させるほどだ。

 

「やっぱ変じゃない?怪しいな~。最近買い物に行った時も、よく男物の服とか見てるじゃない。しかも結構大きめの。てゆーかなに?カレシへのプレゼント?相手はガッチリ系?」

「ちっ、違うったら!」


 少しばかり物思いに耽っていた澄麗だったが、からかうような友人の言葉に我に返る。

 そうは言いながらも、澄麗は内心ドキリとしていた。自分で意識していたつもりはないが、たしかに最近は男物の服を見ては、鬼一に似合うかなどと考えていることが多い。

 そもそもあの子は、無理にでも勧めないと同じ服ばかり着ているし、そういったことに興味を持たないのだ。

 

「ホントにそんなんじゃないから!それよりお願いを聞いてあげるんだから、この後は当然、ユッコの奢りで豪華ディナーへのご招待なんだよね?」

「うぇっ……?い、いや~、その……。バ、バイト代入るの明後日だし、今月は服とか化粧品とか結構使っちゃったから、仕送りも残ってないんだよね……」

「なにそれ。そんなんでコンパなんて行けるの?」

「そっ、そこはホラ、みんな医学部のお坊ちゃんだし、今回は男の子たちが奢ってくれるから……」

「アンタねぇ……。一人暮らしなんだし、もうちょっと金銭感覚はしっかりしないと……」


 ずさんな計画に呆れながら、澄麗は少しばかり迷う。今回のように相手の気持ちを軽くする目的は別にして、正直他人から奢られるのはあまり好きではない。

 だが、今回は親友のためでもあるし、男の方にも当然下心はあるのだろう。そう思い直す。

 

「ま、しょうがない。ここはひとつ、あそこの100円コーヒーで我慢してあげよう」

「はは~、ありがたや~。じゃあさじゃあさ、駅前のショッピングモールに寄ってこうよ。ちょうど春の新作コーデとか出てるしさ」

「アンタねぇ……。そうやって無駄遣いして、お金無くなってくんでしょ?」

「それはそれよ。人生は楽しまなきゃ」

「なるほどね~。んじゃ、楽しむためにアップルパイとシェイクも追加でね。アタシの暫定カレシとして、ど~んと男……じゃなくて、女の肝っ玉を見せてよね」

「うげ……。わ、わかった、ど~んと来いってんだ!つーか、太るよ?」

「うぐっ……。ま、まあ、明日からダイエットすれば……」

「なるほど。ふむふむ、つまり、そこから推理されることは……」

「なっ、なによ!?」

「ズバリ、その発言から見るに、男のいる可能性は低い……ってことか」

「なっ……!だっ、だから彼氏なんかいないって言ってるじゃない!」


 まあ、なんだかんだ言いながらも、親友と遊び歩くのは楽しい。その日の講義を気もそぞろに終えた澄麗たちは、さっそく駅へと向かうのだった。

タイトルは何となくのノリで付けました。あまりというか、まったく意味はありません。出っ歯が特徴の大物お笑いタレントが司会の番組と、ガーシュウィンの名曲からいただきました。某クラシックラブコメ漫画とかのが有名ですかね。今度こそ澄麗メインのお話です。

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