35 クイーン オブ レジェンド 伝説再び!? もう一人のヒミコ その9
「いやはや、偶然ってのは恐ろしいもんっすね~。もっとも、センセーに言わせればアヤカシ同士これも必然……ってことなんすかね?」
「フン……。どうせアンタのコトだ、遅かれ早かれアタシらに引き合わせるつもりだったんだろ?まさかとは思うけど、今回のことだってアンタが仕組んだんじゃないだろうね」
「いやいや、いずれは……って思ってたっすけど、さすがにあんな偶然演出できるわけないじゃないっすか。ホントにたまたまっすよ。んで、どうっすか?アタシの言ってたとおり、すっごくいい子だったでしょ?育った環境からは信じられないくらいに」
それから数日が経った頃だ。一人の女性が黒狼探偵社の応接用ソファに座り、フェンリルと狗巫女と向かい合っていた。
その様子は数日前にそこに座っていた鬼一とは違い、態度も出されたお茶とお菓子を飲み食いする様も、まるで我が家でくつろぐかのごとく一切の遠慮は感じられない。
「フン!同じような環境で育ったアタシが、こんなにもヒネくれてるのに……ってかい?」
「いやいや、リルさんはいつまでも可愛らしい乙女っすよ。アタシと同じく、一途に一人の男を想い続けるくらいにはね」
「うっ……、うるさいよ!今さらアイツのことなんて、何とも思っちゃいないさ!それにアタシは一途なんじゃなくて、手頃なのがなかなか見つからないだけさ」
「そうやって銀華に遠慮するところなんか、完璧に乙女&男前っすけどねぇ」
「ぐっ……、そっ、それよりも鬼一のことだろ!まあ筋は悪かぁないが、ガタイとツラのわりにゃあイマイチ頼りないし……。あんなんでこの先、人間社会でうまくやっていけんのかい?」
「もう、リルさんったら……。でも、すっごく真面目でいい子でした。ちょっぴり気が弱そうに見えて、実は芯の強い子だし。それに最後の機転なんて、力だけじゃなく頭も回るなんてビックリしました」
「でしょでしょ?普段は人付き合いとか避けて目立たない子で……。まあ、でっかいから否が応でも目立つんすけどね。運動神経はいいし、学校の成績はパッとしないけどそれ以上に地頭の良い子で、結構見込みはあると思うんすよね」
「フン、今回の件でもわかったけど、以前アンタに聞いたとおりのヤツだったよ。最初見た時、もしやとは思ったんだけどね。まあ、あんときはアタシも頭に血が上ってたから……」
鬼一との最初の出会いを思い出したのだろう。ソファで足を組むフェンリルは、別のソファで気持ちよさそうにお昼寝をしている緋光子を見ながら、気まずそうに頭を掻く。
「どーせまた緋光子ちゃんがらみなんでしょ?相変わらずっすねぇ。んふふ~、それよりも、どうっすか?」
「なんだいニヤニヤと。何がどうだってんだい?リサリサ」
ソファに座りフェンリルたちと楽し気に話をしているのは、かつての鬼一の担任である『リサリサ』こと、青樹理依紗だった。
「ふふ~ん、法眼君っすよ。誰かに似てると思わないっすか?」
「ハァ?あいにくアタシに、あんなうすらデカい知り合いはいないよ。狗巫女は心当たりあるかい?」
「あ、あの、私も……。で、でも、リーサさんの言おうとしてること、何となくわかる気が……」
「おっ、さすが狗巫女ちゃん。ダテにエッチな人妻してないっすね~」
「はわっ!?わっ、私はエッチじゃありません!!そっ、それに人妻はカンケーないんじゃ……」
「いやいや、やっぱオトコを知ってる人の言葉ってのは、私らとは一味違って含蓄あるものっすからね~。んで、最近夫婦仲はどうっすか?やっぱ夜は緋光子ちゃんに弟か妹をプレゼントしてあげるために、毎夜毎晩ラブラブチュッチュ、ウフンアハンな濃厚エッチしてんすか?」
「はわわっ!?なな……、なんですかソレ!?なんか言い方がイヤらしいですっ!そっ、そもそもそういうのは人並み程度で……。はわっ!?なな、ナニ言わせるんですか!!」
「ひ……、緋光子の弟妹?なんていい響きなんだろうね……。うん、今度は男の子もいいかも……。ああ……、きっと女の子みたいに可愛らしい子だろうね。ほっ、ホラ狗巫女!こんなトコでリサリサごときの相手してる場合じゃないよ!今日はもう帰っていいから、早く緋光子の弟か妹を……!!」
「リッ、リルさん!?ヘンな冗談を真に受けないで!そもそも光一さんはお仕事中ですし、それに赤ちゃんは、そんなにポンポンと生まれませんっ!そっ、それより鬼一君です!」
「アタシ『ごとき』って……。ちょっと酷くないっすか?」
思わぬ方向に進みそうになった話だが、真っ赤になった狗巫女が慌てて軌道修正を図る。
「リーサさんの言いたい人って、その……、ひ、緋色さん……ですよね?」
「さっっっっすが人妻っす!ご名答~」
「ハァ!?あの鈍いのが緋色に?んなわけないだろ」
「た、たしかに見た目とかは似てないんだけど、その、歳のわりに妙に落ち着いてる感じとか、けっこう正義感の強いとことか、真面目なとことか、なにより、そ、その……、お人好しで優しいとこ……とか……」
「…………フン……。まあ、言わんとするコトはわかるよ」
向かいのオンボロビルに住む、かつての想い人のことを思い出したのか、フェンリルの口数も少なくなる。
「でしょでしょ!あの子成長したら、絶対イイオトコになると思うんすよね~。んなわけでリルさん、いっちょどうっすか?」
「は?さっきからナニ言ってんだい?何がどうだってのさ」
お調子者の悪友が何を言っているのか、さっぱりわからないというようにフェンリルは首を傾げる。
「だ~か~らぁ。今のうちにツバ付けとくんすよ!あと3年もすれば、気は優しくて力持ち、がんばれド〇ベン……じゃなくて、筋骨隆々の逞しい『カ・レ・シ』の出来上がりっすよ!リルさんって、強い男好きっすよね?」
「ハ……、ハァ!?アンタ何言ってんだい。アイツが強いかはともかくとして、アタシをいくつだと思ってるのさ?あのガキの倍近く歳食ってんだよ!」
思いもかけぬことを言われたせいか、珍しくフェンリルが慌てている。
「いやいや、そんなの3年も経てば気になりませんって。それに人狼の30歳なんて、人間で言えばハタチそこそこくらいのもんでしょ?そんなのぜんぜんオッケーっすよ。狗巫女ちゃんもいつまでも若いし、銀華も………………。ホント、アヤカシっていつまでも若々しくていいっすよねぇ……。ハァ……。みんな若いまんまなのに、人間のアタシだけがどんどん歳食ってく気がするっす!不公平っす~!」
「バカ言ってんじゃないよ。だったらアンタがツバつけときゃあいいだろうが」
「いやいや、元教え子に手を出すのはさすがにねぇ。男に飢えてたみたい見られるのがわかりきってるっすから。それにアタシは、センセー一筋っすからね。まあ、3年経ったあの子を見たら、気も変わるかもしれないっすけど」
「まったく……。3年も経ちゃあ、アンタもアタシと同じアラサーのババアじゃないかい。あっちの方から願い下げだろ」
「うっ……。ひどいっすよ、3年後はギリ20代っす!それに、女の30なんてまだまだこれからっすよ!」
「はいはい、悪かったよ。けどアイツには、幼馴染とかいうのがいるんだろ?ババアとJKじゃ、ハナから勝負になんないだろうが」
「うぐっ……。ア、アタシだって、かつてはJKだったっす!チョーゼツ可愛いコギャルだったっす!」
「いつまでそんなコト言ってんだい。だいたい鬼一はアヤカシで、年の取り方だって遅いかもしれないんだよ。アンタとの差なんて、開くいっぽうじゃないか」
「ぐぐぅぅぅぅぅ……」
「ほっ、ほらリーサさん、大人には大人の色気があるんだし、そんなに悲観することはないと思いますよ!でも幼馴染って、なんかいい響きですよね~、恋愛小説とか漫画の定番みたいで。緋光子……、じゃなくて、鬼の秘密子ちゃんかぁ……。はわぁ~」
うっとりとする狗巫女に、リサリサはチッチッと口の前で人差し指を振る。
「たしかに可愛い子っすよ。鬼とは思えないほど小っこくて愛らしいし、いろんな男に告白とかされてたみたいっすからね」
「はわっ!?そそそ、そんなにライバルが……!?じゃ、じゃあ、鬼一君はそのライバルを次々となぎ倒して、白馬に跨り秘密子ちゃんを奪い去り……」
「狗巫女ちゃんには悪いっすけど、さすがにその少女漫画的な妄想は……。それにアタシの見るところ、あの二人はそういうんじゃないっすね。まあ、秘密子ちゃんの方はちょっと……、いや、かなり怪しいっすけど、今のところ法眼君にそういう気はないと見たっす。それと今の法眼君は、義理の家族とはいえ美女と美少女に囲まれたハーレム状態っすからね。ちょっとやそっとの女の子じゃあ、簡単に靡かないっすよ」
「そっ、そうなんですか?ちょっと残念だし、秘密子ちゃん可哀そう……」
「いやいや狗巫女ちゃん。ここは好機と見て、強引にでもアタシらが手伝うべきっすよ。狗巫女ちゃんだって、リルさんに幸せになってほしいでしょ?しかも、好きだった人によく似た、実力人柄ともに保証付きの男が目の前に現れたんすよ」
「はわっ!た、たしかに……。わ、わかったよリーサさん!私も協力……」
「はいはい。どーでもいいけど、アタシゃガキに興味はないって言ってるだろ」
「いやいや。それにしては狗巫女ちゃんはともかくとして、リルさんは今回随分と甘かったっすよね~?」
「なっ……、ナニが言いたいのさ!」
そんなリサリサの言葉に、なぜかフェンリルは慌てたような素振りを見せる。
「だって、貉っすよ貉。所詮は小動物でしょ?そんなのわざわざ追いかけっこなんかしなくたって、狼になりゃ一瞬じゃないっすか。元々リルさん一人で十分お釣りがくる程度の依頼だったし、そもそも成田さんトコに任せたっていいくらいの案件でしょ?」
「フン……。アイツが自分でやるって言い出したんだから、手伝ってやる義理はないさ。それに、金を稼ぐ以上は自分の力でやるのは当然さ。そもそも公務員んトコに任せて、稼ぎを放棄する選択肢は論外だしね」
「なるほどね~。さしずめ、緋光子ちゃんの件で詫び料と恩返しってとこっすか。餞別なんてガラにもない表現までしちゃって、法眼君が堂々とお金を受け取れるようにって」
「フン!内容はともかく、一応働いたことへの正当な対価だよ。それこそ黒狼探偵社の信用問題さ。働いたヤツへはきっちり払う。当然のことさ!」
「はいはい、そういうことにしとくっすよ。でも、もったいなかったっすよね~。ちゃんと変身してれば、きっと今頃は二人でしっぽりと……。むひひひ……」
「気味の悪い笑い方してんじゃないよ!それにさっきから、何をわけのわかんないこと言ってんのさ。変身してたらどうだってんだい?」
奔放すぎて言いたいことがイマイチ読めない……。相変わらずのリサリサに、フェンリルも少しばかり困惑気味だ。
「いや~、貉を捕まえた後には、人の姿に戻るわけじゃないっすか。んで、その時は当然すっぽんぽんなわけっよね?」
「はぁ!?ちょっと待ちなよ!なんでアタシが……!」
「衆人環視の中、恥ずかしそうに裸体を隠すリルさん……。普段の強気な姿とは打って変わり、恥じらう乙女のような姿……。そんなリルさんのギャップとセクシーダイナマイツなバディを目の前にしたら、法眼君くらいの年頃の男の子ならイチコロでオトせちゃうっすよ。そして優しく自分の上着を掛けてくれる法眼君に、いつしかリルさんの乙女心もトキメキ……。そんなことされたら、そりゃもうホテルに一直線っすよ。そしたら今頃滾る欲望を一身に受け止め、終わることのない情欲ででくんずほぐれつ……。もったいないことしたな~って。ああ、なんなら今からでも……」
「すすすすっ……、素敵ですリーサさん!」
「アタシは痴女かい!なんで好き好んで、公衆の面前で全裸にならないといけないのさ!しかもガキ相手に、まるで発情してるみたいに……。ってか、そもそも人の姿に戻る前に、ちゃんと人目のつかない所に行くさ!」
「いやいや、だからちょっとしたラッキースケベを装って、ステキ彼氏をゲットするためっすよ。女の武器は使うためにあるんすよ。リルさんのそのナイスバディを一目見れば、どんな男でも既成事実を作るのを止めることは…………ってか、相変わらずナイスバディっすよね……。リルさんも狗巫女ちゃんも胸が大きくて、引っ込むトコロは引っ込んで……」
フェンリルをからかっていたはずのリサリサだったが、二人の胸元と自分の胸元を見比べているうちに、テンションがだだ下がりとなっている。
「はわわっ!?ほ、ほらリーサさん。胸なんて、大きすぎても重くて疲れるだけですよ。そ、それにほら、貧にゅ……、むっ、胸がスレンダーなのは、ステータスとも言うじゃないですか!」
「…………。一部のマニアックな界隈だけっすけどね……。うう……、慰めはいらないっす……」
「まったく……。アンタの胸なんざ馬鹿猫といい勝負なんだし、くだらないことで落ち込んでんじゃないよ。さて、それよりも……だ。何を企んでるのか、正直に話してもらおうかい」
「え……!?」
フェンリルの言葉に、露骨にギクリとした表情を見せるリサリサ。もっともこういった裏表のない、嘘の吐けない彼女だからこそ、人からの好意を得られるのだろう。
「リーサ……さん……?」
「あ、あははは……。バレちゃあしょうがないっすね。そ、その、リルさんが法眼君とくっつけば、センセーがもしも離婚した時のライバルが減るかなー……、な~んてね!」
「まったく……。呆れたもんだね」
「リ、リーサさん!?ダメですよ!あの二人が離婚なんてするわけないですし、もしも……、もしもそんなことになったら、風太君と風華ちゃんが……。ううっ……、ぐすっ……」
「じょ、冗談っすよ!センセーと銀華がラブラブなのは、百も承知っすから。それに、銀華はアタシの大切な親友でもあるんすからね。だっ、だからほら、冗談だから泣かないでほしいっす!」
泣き顔で捲し立てる狗巫女に、さすがのリサリサも返す軽口も無いようだった。
「けど、あの子は平凡に生きたいって言ってたのに、やっぱりこうなっちゃったっすか……」
「フン、アヤカシはアヤカシを呼ぶ。一度でも怪異に関われば、さらに怪異に惹かれる……。そこから離れるのは容易じゃないさ。それにアイツ、隠してるけど本当の姿が……」
「あ、やっぱりあの子もそういうのがあるっすか?」
「フン、そりゃそうだろうさ。あれだけ本来のアヤカシの血を色濃く残すヤツなんだよ。割り切ってるアタシらはともかく、人の世で生きてくんなら、誰だって醜いアヤカシの本当の姿など見られたくはないだろうさ。でも、初めて会った赤の他人の緋光子を守るために、そいつをさらけ出そうとするとはね……。とんだお人好しのバカだよ」
「なるほど、法眼君らしいっすね~」
「そんなお人好しの鬼一が本当に平凡に生きたいのなら、この先は前途多難だろうさ。もっとも、アイツならなんだかんだとうまくやりそうな気もするけどね。ま、引き込んだ責任もあるし、もしもこっち側に足を踏み入れる気になったんなら、見習いからなら雇ってやるさ」
「さっすがリルさん、相変わらず男前っすね~」
「ハッ!アンタの見え透いたお世辞は嬉しくないんだよ!」
「でも、そういう法眼君のバカ正直で、素直なトコが気に入ったんすよね?」
「だっ、誰があんなガキなんぞ気に入るかい!」
その言葉を発する二人の眼は、先ほどまでの悪戯っぽいものとは違う、旅立つ子供を心配するような、どこか優しい眼差しだった……。
「とはいえ、当面は心配することはないっすかね。優しい家族に伝説の二人。さらには可愛い幼馴染に脳筋の親友と、愛らしい弟や妹。これ以上ないほど恵まれた環境で、道を踏み外しようがないっすしね」
「ハァ?他はともかくとして、伝説?なんだいそりゃ」
「いやいや、ただのひとり言っすよ。それより狗巫女ちゃん、このお饅頭美味しいっすね。も一つおかわりぃ!」
「ったく、相変わらず図々しいね」
「まあまあリルさん……。うふふ、やっぱりわかります?昨日『弘美』さんが遊びに来てくれて、お土産に持ってきてくれたんですよ」
「ほ~、天下の『満月庵』のお饅頭っすか。どうりで……。しっかし、弘美も今や売れっ子作家だし、忙しいんでしょうね~。それに比べて、アタシはしがない中学教師……。ああ、世の中は不公平っす~」
「な~に言ってんだい、理事長の娘のくせに。アンタも十分に勝ち組だろうが。あとは男を捕まえるだけだろ。いつまでも緋色緋色言ってないで、とっとと誰かとくっついちまいな。見合い話だって山ほどあるんだし、相変わらず同僚から生徒から告白されまくりなんだろ?」
「あ、あはは……。とは言っても見合いはパパ好みの、条件はいいけど結構なオジサンばかりなんすよね~。生徒は論外としても、同僚の先生方じゃイマイチ刺激を感じないし……」
「なに贅沢言ってんだい、アンタだっていいトシだろうが。いつまでも恋に恋する小娘みたいなこと言ってんじゃないよ。いい加減に現実を見な!」
「うぐっ……。そ、それを言うならリルさんだって、商店街の若旦那や依頼主からモテまくりだって話じゃないっすか!」
「ぐっ……。ま、まあ人は良いヤツらだけど、アタシのお眼鏡にかなう強い男じゃないんだよ。それに、アタシより稼ぎのないヤツと結婚なんて考えられないね!」
「ほらほら!やっぱトキメキって大事っすよね?初めてセンセーにあった時みたいな……。てなわけで、ここはお互い様ってことで、ひとまずこの話は保留ということにしないっすか?」
「…………ああ、そうしとこうか……。あ、狗巫女、もう一杯お茶入れてくれるかい。弘美のお土産もまだあったよね?」
「アタシにもよろしくっす!」
お互いに痛い所を衝かれたのか、二人とも現実逃避をすることで結論が出たようだ。
そのやり取りを見つめていた狗巫女は、大きくため息を吐く。
その瞳はまるで、いつまでたっても嫁に行かない娘を見る母親のような、心配と憐れみの籠ったものだった……。
「それよりも……。にひひひ……」
なにやら悪戯っぽい笑みを浮かべると、リサリサは緋光子の眠るソファへとにじり寄って行く。
「せっかく遊びに来たんだし、緋光子ちゃん起きないっすかね~。ほれほれ、ツンツンしちゃうぞ~」
「リサリサ!緋光子が気持ちよく寝てるのに、ちょっかい出すんじゃないよ!」
眠る緋光子のホッペを突っつこうとしたリサリサを、フェンリルはものすごい形相で睨みつける。
「いっ、いやいや、冗談っすよ。てか、リルさんの怒鳴り声で起きちゃうかもしれないっすよ」
「ぐっ……。そもそも、今のは本気で起こそうとしてたろ!たとえアンタと言えども……」
「もう……。リルさん、少しくらい大丈夫だよ。それに、寝てる間にリーサさんが遊びに来てたって知ったら、そっちのほうが残念がるよ」
「で、でも狗巫女、せっかく気持ちよさそうにお昼寝を……」
「んじゃ、ママの許可が出たところで……。ほ~ら緋光子ちゃん、朝でちゅよ~」
「あっ、コラ!リサリサっ!!」
鬼一の預かり知らぬところで、黒狼探偵社での女子会もまた、賑やかに過ぎて行くのであった……。
少しばかり長くなりましたが、『黒狼探偵社編』終了です。ほとんど知らない方ばかりかと思いますが、懐かしい名前もいくつか出ています。次回からは再びの『あの男』が登場。美澄がメインの、少しシリアスな回になります。さらに後半には、いろいろと名前だけ出ている『アイツ』も登場します。




