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30 クイーン オブ レジェンド 伝説再び!? もう一人のヒミコ その4

「本当にごめんなさい!緋光子がお世話になったっていうのに……。ほっ、ほら、リルさんもちゃんと謝って」

「ハッ!あの状況を見りゃあ、誰だって勘違いしても仕方ないさ!」

「リッ、リルさんったら!もう……。ごめんなさい、たぶん頭に血が上って冷静な判断ができなかったのと、緋光子があなたに懐いてるから、取られちゃってご機嫌ナナメなんだと思うの……」

「だっ、誰がご機嫌ナナメだって!?アタシがそんな、ガキみたいなマネするわけないだろ!」

「やってることは、そのまんま子供と同じだと思うんだけど……。とにかく、そう思われたくないんなら彼に言うことがあるでしょ?」

「こいつにナニを言えってのさ!」

「もう、いい加減にしないと……!」

「あ、あの、もうそれくらいで……。そっ、それにほら、俺の見た目もこんなですし、悪人と誤解されても仕方ないですよ。とにかく、そう見られるのには慣れてますから、気にしないでください」

「フン……、慣れてる……かい。まあ……、悪かったよ」


黒狼探偵社(こくろうたんていしゃ)


 あれから少しばかり歩いたところで案内されたのは、かつて一度だけ見たことのあるビルだった。

 そして、わけがわからないまま立派な内装の事務所へと案内され、今は豪華な来客用のソファに座りお茶とお菓子を出されていた。

 もっとも、未だに頭の上で動き回るひみこちゃんのおかげで、出されたお茶を飲むどころではないが……。

 

「えっと、あらためて紹介します。この子は娘の『鬼龍院(きりゅういん) 緋光子(ひみこ)』です。私が母親の『狗巫女(くみこ)』。私たちはいわゆる犬神です。あ、緋光子の父親は人間なんですけどね。で、こっちが『フェンリル』さん。この探偵社の社長さんで、人狼なんですよ」

「あ……。俺は法眼鬼一と言います。その……、鬼です」

「フン、見りゃあわかるさ」

「ちょ、ちょっとリルさん!あはは……、でも、偶然だね。私の苗字にも『鬼』の字が入ってるんだよ。とは言っても、主人の苗字なんだけどね。旧姓は犬神(いぬがみ)って言うの。もっとも、それがホントの名前かどうかはわかんないんだけどね」


 狗巫女と名乗る女性は、頭上から小さな獣耳が見えている。犬神というのは嘘ではないのだろう。髪は灰色と黒の混じったまだら模様をしており、パッと見ただけではそれなりの年齢なのかと見まがう。

 だが、それもほんの一瞬のことだ

 緋光子ちゃんそっくりのクリっとした瞳と、まるで子供のような無邪気な雰囲気は、少女のような愛らしさと若々しさを感じさせる。

 もっとも、雰囲気にそぐわぬとてつもなく大きな胸元が、少しばかりアンバランスさを生んでいるのも確かだが……。

 だが、一生懸命気を遣ってくれている感じの狗巫女さんとは打って変わり、フェンリルと呼ばれる女性はよほど俺が気にいらないのか、敵意のこもった目で睨みつけてくる。

 しかしながら、俺はその視線が頭の上に集中していることに気付く。さっき狗巫女さんが言ってたのって、ひょっとして……。

 試しに、頭の上の緋光子ちゃんを降ろしてフェンリルさんに渡してみる。別に緋光子ちゃんも嫌がるでもなく、素直に抱きついている。

 

「も~、なんだい緋光子。やっぱりアタシの方がいいのかい?」


 先ほどまでの張りつめた気配が嘘のように、途端にデレデレになるフェンリルさん。

 

「アハハ……。これでわかってもらえたと思うけど……。そんなわけだから、リルさんの態度は気にしないでね。でも、鬼一君はすごいね。緋光子は私と違って人見知りしない方なんだけど、それでも初対面の人にこんなに懐くなんて珍しいの」

「たぶんですけど、俺がチビ……子供の扱いに慣れてるって、本能的に気付いたんじゃないでしょうか。俺はここから少し離れたアヤカシ専門の施設で育ったから、兄弟姉妹がたくさんいますから」

「え!?それって……」

「…………。フン」


 その言葉に、なぜか二人がピクリと反応する。その態度とこの環境を見れば、さすがに鈍い俺だって気付く。

 それに、さっき狗巫女さんは自分の名が本当の物かどうかわからないと言った。それはつまり、限りなく俺と近い境遇で育ったということを意味するのだろう。つまりは、あの施設で……。

 威圧的で気の強い人狼と、華澄さんをも上回る巨乳の犬神。そして施設でさんざんに聞かされた伝説。

 しかしながら、幼い頃から聞かされていた、悪魔のようなアヤカシの話とは随分とイメージが違う。

 血も涙もないイメージだったフェンリルさんは、ことあるごとに妹のような狗巫女さんに叱られているし、なにより緋光子ちゃんにデレデレだ。

 狗巫女さんはと言えば、とんでもなく胸が大きいことは確かだ。だが、それを見せつけようとか武器にしようなんて素振りはまるで見えない。むしろそれは、強烈な母性を感じさせるものだ。それは緋光子ちゃんに対してだけではなく、姉のような年のフェンリルさんに対しても。

 

「あ……、そういえば緋光子ちゃんって、俺の幼馴染と同じ名前なんですよ。もちろん字は違いますけど。そいつも鬼なんですけど、こんなことってあるもんなんですね」

 

 なんだか妙な雰囲気を感じ、俺は慌てて話題を変える。

 

「はわっ!?お、幼馴染……。な、なんかいいね……。もも、もしかして、その子って鬼一君の恋人?これぞ高校生の青春……って感じだよねぇ……」

「は?ちっ、違いますよ!?ただの幼馴染で兄妹……、あっちに言わせりゃ姉弟みたいなもんです!」

「うふふ。いいのいいの、照れなくたって。ねぇリルさん?」

 

 慌てて否定する俺を見て、狗巫女さんはニマニマと笑っている。やはり女性はこういう話が大好きなのだろう。

 もっともフェンリルさんは全く興味がないようで、緋光子ちゃんに夢中だ。

 

「でも、ホントに助かったんだよ。仕事の打ち合わせで商店街に行った帰りだったんだけど、気付いたら緋光子がいなくなってて。匂いも辿ってみたんだけど、なかなか見つからなくって……」

「フン!匂いはコイツと混じって、わかんなくなったんだろうが。しかも肩車なんかするから」

「ちょ、ちょっとリルさん!あ、でもよかったのかな?鬼一君、何か用事があったんじゃないの?」

「いえ、大丈夫です。今日はもう諦めて、明日仕切り直そうと思ってたところですから」

 

 そう、職探しにことごとく失敗した俺は、恥を忍んで秘密子に相談しようと思っていたのだ。正直初対面の女性相手の話題もわからないし、話を盛り上げる自信もない。場をもたせるつもりでそのことを話す。

 

「ご、ごめんなさい。忙しかったのに邪魔しちゃって。でも……、ふ~ん……、アルバイトかぁ……」


 なぜか狗巫女さんは、意味深な表情で何かを考え込んでいる。

 

「ねえ、リルさん……」

「冗談じゃないよ狗巫女。お人好しも大概にしときな。こんなズブの素人が役に立つと思うのかい?」

「はわわっ!?ま、まだ何も言ってないのに……。で、でも、私は緋光子の世話で行けないし、間違いなく10年前に捕まえたのと同じ犯人だよ。危険はないはずだし、鬼の鬼一君ならきっと役に立ってくれるんじゃ……。そっ、それに、緋光子を助けてくれたお礼もしたいし……」

「フン……!こんなヌボーッとしたヤツが役に立つもんかい。どこぞの馬鹿猫のように、振り回されてひっくり返るのがオチだよ」

「うう……。でも……」


 何やら俺のあずかり知らぬところで、フェンリルさんと狗巫女さんの攻防が起きているようだ。なんだか妙な雰囲気だし、そろそろおいとましたほうがいいのだろうか。

 

「あの、そろそろ失礼します……」

 

 だが、ある人物の一言が、そんな状況を打開することになる。

 

「ちぃち!にばんじょちゅになるぅ!」

「はわっ!?こっ、コラ緋光子!『きいちおにいちゃん』でしょ!ごご、ごめんなさい。この子が失礼な言い方を……」

「痛ててて。緋光子ちゃん、角は引っ張らないでね。で、にばん……なに?」


 再び俺の頭へとよじ登ってきた緋光子ちゃんが、嬉しそうに叫ぶ。そのおかげで帰る機会を逃してしまった。


「ひ、緋光子!ご、ごめんなさい、二番助手です。私がリルさんの一番助手を自称しているものですから、たぶん二番目ってことで……」

「ああ、なるほど」

「でっ、でもリルさん。緋光子は鬼一君を二番助手って認めたよ。こっ、これでもダメ……かな?」


 上目遣いでジッと見つめられていたフェンリルさんだったが、やがて諦めたようにため息を吐く。

 

「ハッ、わかったよ。大した相手でもないし、今回は狗巫女と緋光子に免じて特別だ。取り分は成功報酬の1割。ただし、失敗した場合は無し!……ってのもなんだし、手付け金の1割だ。もちろんアタシが関わる以上、失敗なんざありえないけどね。それと、仕事中のアクシデントについては自己責任だよ。たとえ大怪我しようが死のうが自分のせいだ。どうする?やるかい?」

「はっ、はい、やります!いえ、やらせてください!!」


 フェンリルさんの威勢のいい啖呵に、考える間もなく返事をしていた。

 怪我とか死ぬとか、少しばかり気になる単語はあったものの、人一倍丈夫なのが俺の取り柄だ。それに、成功しようが失敗しようがお金を貰えるってのは嬉しい。おそらく成功すれば数千円。失敗しても……、まあ、千円くらいにはなるだろう。

 必要な額には程遠いだろうが、ゼロだと思っていた収入にアテができたのは嬉しい。

 

「よかったね、鬼一君」

「ちーち、にばんじょちゅー!」

「ありがとうございます!」


 素直に喜んでくれる二人に、思わず顔がほころぶ。

 

「フン。いい返事だけど、こっちの予想がハズレって可能性もあるってことを忘れんじゃないよ。どんな簡単に見える依頼だって、絶対安全ってことはないんだからね」

「はっ……、はい」

「じゃあ、依頼の内容を教えるのと、作戦会議だ。1回しか言わないから、しっかりと覚えるんだよ!」

「は、はいっ、お願いします!」


 こうして俺は人生初のアルバイトを、思いもよらぬ職業で体験することになったのだった。

鬼一の探偵物語?スタートです。世間はGW真っただ中ですが、残念ながら自粛要請の嵐ですね。そんな中で愚作が少しでも暇つぶしになればと思い、前話から間隔が短いですが仕事前にアップしてみました。大型連休……。多い人は、いったいどれだけの休みがあるのでしょうか。もちろんそうでない人もいるでしょうし、私もその仲間です。昨日もその前も今日も明日も明後日も……。早い話が、GW中は全て仕事です……。

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