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27 クイーン オブ レジェンド 伝説再び!? もう一人のヒミコ その1

「ほら、そっち行ったよ!ハッ、なにやってんだい、このウスノロが!『狗巫女(くみこ)』は14の時には、そんな奴あっさり捕まえてみせたよ!」

「そ、そうは言っても、コイツ素早しっこくて……」

「ハン、そんな小物にてこずるようじゃ、この仕事は向いてないよ。それになんだい、そのアタマの悪い猪みたいな動きは。そのデカいおツムは飾り物かい?見た目と一緒で、アンタの脳みそも筋肉でできてんのかい!?アタシの言うことのナニを聞いてたのさ!」

「くっ……」


 思いっきり罵倒されながらも、その言葉で俺の中に熱い感情が芽生える。

 誤解のないように言っておくが、当然ながら罵倒される喜びに目覚めたわけではない。

 もちろん俺にMっ気はないし、これしきのことで目覚めていたならば、今頃は那澄菜の足元にひれ伏しご褒美をねだる豚になっているだろう。

 つーか、那澄菜は俺にもう少し優しくできないのか?

 いや、余計なことはともかく、これはあくまで結果を出して見返してやろうという反発心だ。

 大きく深呼吸をして心を落ち着かせ、右へ左へと素早く走り回る狸によく似た珍妙な生き物を見据える。

 そうだ、動き回る奴の後ろをむやみに追いかけたって、効率が悪いだけだ。それは、悪戯をして逃げ回るチビどもだってそうだ。

 分散したり、こちらを挑発したり、一人が囮になったり、隠れたり……。ガキとはいえ、アイツらはアイツらなりに頭を使って逃げているのだ。

 そんなチビどもを捕まえるときは、こっちも頭を使う必要がある。行動を先読みしたり、興味を惹きそうなもので罠を張ったり、時にはリーダー格である珠魅を懐柔し、チビどもの連携を骨抜きにしたり……。そうだ、それと同じ要領だ。

 そうやってよく見れば、生き物の行動は不規則なように見えて、本能に沿った行動パターンがあるように思える。

 そうだ、アヤカシといえども所詮は獣。チビどものほうが、ずっと頭は良いはずだ。こうやってよく見て、行動パターンを覚えて……。

 

「そこだぁぁぁぁぁっ!」


 叫び声とともに、俺は勢いよく宙を舞う。その先にいるのは、ターゲットである妙ちくりんな獣。そして……。

 

『ガッシャァァァァン!!』


 派手な音とともに、俺はゴミバケツに突っ込んでいた。

 

「ハッ!なにやってんだい、このでくの坊が!どっかの馬鹿猫みたいなことしてんじゃないよ!!」

「す、すみません。今度こそ……」


 慌ててゴミの山から起き上がり、獣の姿を探す。俺の体が頑丈なことと、ポリバケツの周りには柔らかいビニール袋のゴミが積まれていたせいで、特に怪我もなさそうだ。

 

「頑張れ鬼一君。もうちょっとだぞ!」

「ほら、若いんだから頑張んな!狗巫女ちゃんはひと噛みで終わらせてたよ!」

「あははは。なんだか懐かしい光景だねぇ。あん時の銀華ちゃんを思い出すよ」

「うんうん。今の色気の溢れる銀華ちゃんもいいけど、あん時の若い銀華ちゃんも可愛くてよかったなぁ……。いっ、痛ててて!やっ、やめてくれよ母ちゃん!冗談だって!!」

「捕まえたら、自慢のコロッケを山ほどサービスしてやるからね。ウチのスケベ旦那の奢りだよ。頑張んな!」

「ちょ、ちょっと母ちゃん!?奢りって……?そ、そもそもリルちゃんには、もうコロッケをサービスする約束をしてて……」

「どうせまたセクハラ発言でもして、慰謝料替わりにふんだくられたんだろ?」

「い、いや、それはその……」

「ふん!自業自得なんだし、それとは別にアタシから鬼一くんへの奢りだよ。アンタと違っていいオトコだしねぇ。お代は当然、アンタの小遣いから出すからね。ひと月分の小遣い全部だよ。なんだいその顔は?なんか文句あんのかい!?」

「い、いえ……。文句など滅相もございません……」

「あははは!大将んとこは相変わらず夫婦仲がいいねぇ」


 周りからは、まるでスポーツ観戦のごとく俺を応援する声が聞こえてくる。中にはビール片手に、店ごとに持ち寄った商品をツマミにご機嫌の人たちも……。

 まるでピクニックのような雰囲気に、だったら手伝ってくれよという思いも横切る。だが、これは俺が請け負った、俺自身の仕事なのだと思い出しそれ振り払う。

 

「任せてください。必ず捕まえますから!」

 

 周りのギャラリーに向け、俺は胸を張り虚勢を張る。

 そもそも、初めて訪れたはずのこんな場所で、俺はいったいなにをしているのだろうか。

 説明のために、話は少し遡る必要があるだろう。それは、夏休みが始まったばかりの頃の出来事だった……。

 

☆ ☆ ☆


「行ってきまーす」

「ちょっと那澄菜、あなたハンカチ持ってないんじゃないの?」

「うっ……。こ、この前、最後の1枚が破れちゃったんだよ」

「もう、だからって持たなくていいわけじゃないでしょ。女の子なんだから、身だしなみはきちんとしないと」

「う、うるさいな。鬼一だって持ってないじゃんか!」

「ハンカチじゃないけど、俺は部活用にタオル持ってるぞ」

「う……。と、とにかく今日は時間がないからいいんだよ。じゃあ行ってきます!それといいか、鬼一は時間ずらして来いよ。妙な噂でも立てられたら、たまったもんじゃねえからな!」

「なんだよ。友達もいねえんだし、噂を立てられて困るようなコトもないじゃねえか」

「んだとテメェ!喧嘩売ってんのか!?」

「こら那澄菜!って……、待ちなさい!もう……。あ、ごめんなさいね鬼一君。遅刻しちゃうわね。行ってらっしゃい」


 夏休みが始まる少し前、その日もいつものごとく、那澄菜の罵声から賑やかに始まったのだった。


☆ ☆ ☆


「すまん、法眼!そういうわけだから、しばらく稽古は自粛ということで……」

「い、いや、やめてくださいよ。わかってたことですし、先輩方が頭を下げるようなことじゃないですから」


 その日の午後、俺は部室で先輩たちに頭を下げられていた。

 なんでも、全国大会に向けて本格的な追い込みをするにあたり、体格・体重差のありすぎる俺との稽古は危険と判断されたのだそうだ。

 追い込んで疲労困憊のところに、体重差のある相手と稽古する。俺にだってその危険性はわかるし、そもそも大会に出られない俺が、無理して部活に出る必要もない。

 1年生に全国上位クラスの亮太がいることからもわかるとおり、うちの学校は結構な強豪校だ。その全国ランカーたちが大会前に無駄な怪我をしたとあっては、それこそ非難の嵐だろう。

 亮太は複雑そうな顔をしていたが、それでも状況は理解しているし、後輩に頭を下げている先輩の姿を見ては何も言えないのだろう。

 だが、そんな対応をされたのにも関わらず、俺の心は晴れやかだった。

 そもそもガキの頃から、こんなことはしょっちゅうだったはずだ。

 でも、それを告げる先生やほかの子供たちは、皆それは当たり前のことだって顔をしていた。

 けれど、今目の前にいる先輩たちや顧問の先生は、心から申し訳ないって顔をしている。

 それは俺が、今までに経験したことのない表情だ。それだけでなぜか、今までのこと全てから救われたような気がした……。

 

「大丈夫ですよ。そもそも、俺に大会は関係ないですし。それに、実は夏休み中にちょっとやりたいことがありまして。だから、時間をいただけるのは逆にありがたいっす。大手を振ってサボれますから」


 そんな俺の言葉に、何を勘違いしたのか、亮太がジットリとした視線を向けてくる。

 

「おい鬼一、夏休みにやりたいことって……。まっ、まさか!鬼ノ元さんとデートじゃないだろうな!?」


 その言葉に、部室中がざわめく。

 

「なにぃ!鬼ノ元っていえば……。法眼の幼馴染だっていう、1年の可愛い鬼の子か!?」

「なっ、お前らまさか……。やっぱり付き合ってたのか!?」

「ぐっ……、うらやま……。い、いや、いかんぞ!高校生の本分は鍛錬にある!不純異性交遊は断じていかん!やはり稽古休み中は自宅待機で……」

「いや待て。交際を禁じるのはやりすぎだろう。それに自宅待機は可哀想だ。そもそも、不純なことをしないように誰かが見張っていればいいんじゃないか?」

「見張るったって、俺たちは稽古が……」

「そうだ。大会を間近に控えた状況では、レギュラー組には不可能だろう。だったら仕方ない。不本意ながら、ここは補欠の俺が泥をかぶろう。あ、ちなみに一人で見てるのもなんだし、彼女の友達とか連れてきてくれないかな?」

「おっ、お前ズルいぞ!これにかこつけて、女の子を紹介してもらう気だな!?」

「ちっ……、違う!俺は純粋に法眼の心配をだな……」

「いや待て!俺はむしろ、1年のヤンキー娘のほうが怪しいと睨んでるぞ」

「なにぃ!ふっ……、二股だとォ!?」

「い、いかんぞぉ!二股など男の夢……。あ……。い、いや、そんな不誠実な男は断じて許さん!」

「ったく……。彼女のいねえヤツらは心にヨユーがねえよなぁ……」

「おっ、おい!誰だ今の発言は!?こっ、この中に裏切者がいるぞ!!」

「ゆっ、許せねえ!そんなリア充野郎は、練習後の道着を顔に巻きつけて窒息の刑だ!俺のワキガの破壊力を舐めんなよ!!」

「テメェ!臭ぇと思ってたらやっぱりかよ!」


 見当はずれの話題で盛り上がるみんなを見て、俺は知らずに笑っていた。

 なぜならば、施設を出てから外の世界で戻ってきたいと思える場所が、円城家以外にもあったことが嬉しく思えて……。

 

「いやいや、違いますよ。そもそも俺たちは付き合ってませんし、それにやりたいことってのは……」

 

 まあ、放っておいたらどこまで話が飛躍するかわからない。誤解を解いた俺は夏休みの予定を正直に話し、少しばかり驚いたような亮太の顔を背に部室を後にしたのだった。

再び知ってる方は知っている。ほとんどの方は知らない懐かしいキャラクターの登場です。伝説の二人の過去……。興味があれば『猫猫飯店怪異事件顛末記』をお読みください。はい、くどいですが宣伝です。とは言っても、まだ自分なりの書き方も定まっていなかった頃の作品。わりと満足していたつもりでしたが、今見直すと読みにくいし、修正したい所がてんこ盛りなんですよねぇ……。いつか時間が取れたら、過去の作品も含めて本格的に直してみたいです。

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