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20 うちの不良娘がこんなに可愛いわけが……(再び以下自主規制) その3

「大丈夫か?那澄菜」

 

 振り向く頃には、当然俺の姿は元に戻っている。

 さすがに筋肉の膨れ具合や赤黒く変色した肌など、後ろからでも違和感はあっただろう。それに、俺の脅し文句に妙なところがあったのも気付いたかもしれない。だが、決定的な所は見られていないはずだ……。

 

「う……、うっせーよ。大丈夫に……、き、決まってんだろ!」


 相変わらずの態度に、少しばかりホッとする。

 もっとも那澄菜のことだ。俺が助けずとも連れ去られる途中で大騒ぎして、誰かに助けられるか通報でもされていただろう。

 もっと言えば、そういうことをされそうになっても、こいつなら相手の腕でも足でも噛みついて逃げ出しそうだ。下手したらチ〇コにでも……。いや、マジでやりそうだな……。

 そんなことを想像したら、恐怖で股間が縮み上がってきた。

 さっきの連中も那澄菜の性格を知っていたならば、己の大事なモノを口に含ませようなどとは思いもしなかったろう。それこそ自殺行為になりかねないしな……。

 

「ほら、帰ろうぜ。立てよ」

「…………。う、うっせー!オレは後から帰るから、先に行けよ!」


 せっかく助けてやったのに、そうまでして俺と並んで歩きたくないのか……。


「わかったよ。けど、いつまで座ってんだよ、制服が汚れるぞ」


 その時になって、俺は妙なことに気付く。なぜかはわからないが、那澄菜は地面に座り込んだまま動こうとしないのだ。さらによく見れば、体をプルプルと震わせている。

 

「お前……。もしかして、腰が抜けて立てないのか?」

「うっ……、うっせーよバカ!」

「ハァ……。お前なぁ……」


 体は動かないくせに、態度だけは天下無敵だ。

 この期に及んで悪態をつく那澄菜に、思わずため息が漏れる。だがこの状態のまま、こんな所に放っておくわけにもいかない。

 

「ほら、起こしてやるから立てよ」

「バッ……、バカ!触んなっ!!」

「お前、いい加減に……!え……?あ……」


 那澄菜の手を掴んで引き起こした俺は、その足元に黒い染みができているのに気付く。同時に、黒く濡れたスカートにも……。

 

「う……、うぐっ…………。ひっ……、ひっく…………。見んなよバカァ……。スケベヤロー……」


 泣きながらも悪態を吐く那澄菜だったが、やはり女の子なのだ。さすがに怖かったのだろう。悪いところを見てしまった。

 このまま知らんふりをして帰った方がいいのかとも思ったが、お漏らししたままのこいつを置いて行くわけにはいかない。

 

「な、なにすんだよぉ……!?」


 俺は黙って制服のシャツを脱ぎ那澄菜の腰に巻くと、そのまま抱え上げる。


「ババ……、バカッ!汚ねえだろ!?テメェの制服まで汚れちまうぞ!いいから降ろせよ!」」


 一瞬、俺に触られることが汚いのかとも思ったが、さすがにそれはなかったようだ。まあ、こいつなりに気を遣ってくれたんだろう。

 

「降ろしたところで、腰の抜けたお前じゃ歩いて帰れないだろ?」

「ぐっ……、うっせーよ!まあ……、それはそうだけど……」

「だったら大人しくしててくれよ。さすがにこの抱え方は恥ずかしいし、おんぶに変えてくれるとありがたいんだがな」

 

 そう、さすがに今のお姫様抱っこ状態では目立ちすぎる。まあ、おんぶでも十分に目立つんだが、今の状態よりはマシだろう。

 

「う…………。わかったよ」


 自分の置かれている状況に気付き、さすがに恥ずかしくなったのだろう。少しばかり顔を赤らめようやく大人しくなった那澄菜をおぶって、俺たちは家へと向かったのだった。


☆ ☆ ☆


「もう……いいよ。ここで降ろせよ」


 那澄菜が俺の背から降りたのは、家から少し離れた場所だった。

 相変わらずの態度だったが、こんな姿を家族には見られたくないだろうし、心配もさせたくないのだろう。その気持ちを思えば腹も立たないし、俺も素直に従う。

 

「その……、お前の制服だけど……。悪かったな……」

「別に構わねえよ。シャツの替えはあるし、ズボンだって洗えば大丈夫だろ。それよりも、那澄菜の方は大丈夫なのか?さすがに家での洗濯は、怪しまれるんじゃねえか?」

「オレは……、とりあえずコインランドリーに持っていく。その……、なんだったら、お前のシャツも一緒に……」


 さすがに俺のシャツをオシッコまみれにしてしまったのには、気が引けたのだろう。

 

「いや、大丈夫。運動して暑くなったし、今からちょっと公園で服ごと水浴びしてくるわ。柔道着でもよくやってたしな」

「そ、そうか……。いや、遠慮なんかしなくても……」

「いいって、軽く洗ったあとに洗濯機にぶち込んどきゃ平気だ」

「そ、そうか……」


 そう言いながらも、那澄菜は何かを言いたそうに、俺が手に持ったシャツをチラチラと見ている。

 

「なんだよ、まだなんかあんのか?」


 口を開きかけては閉じるという、いつもからすればらしくない態度の那澄菜だったが、やがて意を決したのか口を開く。

 

「そ、その……。か、か……りすんじゃねえぞ」

「は?」

「だ、だから……、その……、に……、匂いを嗅いだりするんじゃねえぞって言ってんだよ!」

「は……!?いやいや!するわけねえだろ!!お前は俺をどんな変態だと思ってんだよ!?」

「え……?しない……のか?だ、だって、澄麗姉のパンツ欲しがってたし……。それにあの変態ヤローは、オレと美澄の脱いだパンツの匂いを嗅いで喜んでたぞ。それで正体を掴んで、家から追い出したんだからな」


 キョトンとした顔で、『お前も同類じゃなかったの?』みたいに言われ、軽くショックを受ける。いや、澄麗さんの脱ぎたてパンツに惹かれたことはたしかだが、そもそも貰えなかったし!

 けっして僻んでいるわけではないし、ひとまず澄麗さんの脱ぎたてパンツは置いておこう……。

 つーか罠って、そんなもん仕掛けてたのか。もしも華澄さんのいない時に、その気になって襲い掛かられでもしたらどうするつもりだったんだよ……。

 それよりも、華澄さんはしゃべってないって言ってたけど、やっぱり俺があの男絡みで何かしたことを気付いてたんだな。

 

「ご、ごめん……。男って、その……、みんなそうだと思ってたから……」

 

 もっとも、那澄菜にも本当の父親の記憶はほとんどないだろうし、新しく父親になるはずだった男もあんなクズだったのだ。ましてや今日絡まれた男の一人もかなり特殊な性癖を持った変態だったし、多少の誤解は仕方ないのかもしれない。

 つーか、こいつ男運悪すぎるんじゃねえのか?

 もっとも那澄菜からしてみれば、俺との出会いもその中に含まれるのかもしれないが……。

 だが、男に対する偏見はともかく、いつもの那澄菜らしさが戻ってきたようで少しばかりホッとする。

 

「とにかく、那澄菜が心配してるようなことはしねーから安心しろよ。それに、早くしないと澄麗さんが帰ってきちまうぜ。あの人にかかったら、隠し事は通用しないのわかってるだろ?」

「う……、うん……」

「んじゃな。さっさとコインランドリーに行ってこいよ」

 

 そして俺は公園へ、那澄菜は家へと向かい歩きかけた時だった。

 

「お……、おい!」

 

 不意に那澄菜が振り返る。

 よほど俺が信用ならないのだろうか。心配しなくたって、俺にそんな趣味はねーよ。そう言いかけたときだった。

 

「その……、今日は助かったよ。もしもお前が来てくれなかったら、どうなってたか……。お前がいなかったら、今頃オレはアイツらに……」

「んなこと気にすんなよ。あんなチンピラどもなんぞ、何人いようが俺の相手にもなりゃしねえさ」

「で、でも、ナイフまで出されたんだぞ!も、もしも刺されたりしてたら……。それなのにオレ、怖くて何もできなくて……」

「あのなぁ……。俺を誰だと思ってんだよ。この体を見てみろよ、美澄ちゃんお墨付きの固くて太くて逞しくて、おまけにピクピク動く筋肉だぜ。この鬼の体に、あんなちゃちなモンが刺さるわけないだろ?刺さる前にへし折れるのが関の山だぜ。俺を刺したきゃ、日本刀でも持ってこいってんだ」


 もちろんハッタリではあるが、思った以上に気にしているふうな那澄菜に、実は怖かったなどと言えるはずもない。

 これがラブコメ漫画であったなら、この事件で那澄菜が俺に惚れてデレ始めるってところだろう。さしずめ、ツンデレキャラってところか……。

 しかしながら、那澄菜が俺に……、いや、男にデレるなど想像もつかない。


「で、でも、もしかしたらってこともあるし……。だ、だからその……、あ……、あり……、あり……がとう……。き……、きっ……、鬼一(・・)!!」


 それだけ言うと、顔を赤らめ那澄菜は家へと向かい走り去っていった。そしてそのありえない姿を見て、唖然としながら俺は思う。

 

『うちの不良娘(なずな)がこんなに可愛いわけがない!』と……。

当初からおわかりかと思いますが、ツンデレ娘です。ツンデレ純情ヤンキー貧乳隠れ美少女……、色々詰め込み過ぎた感もありますが……。少々?下ネタ及び不快成分多めでしたがご容赦ください。次回は龍虎の拳……ではなくて、もう少しお気楽回です。

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