表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/77

17 か〇かい上手の澄麗さん(&秘密子さん?) からかい4

「やれやれ。あいつら、こんなに夜更かしするようになったのか?」


 チビどもがようやく寝静まったのは、夜の10時を過ぎた頃だった。連絡を入れておいたとはいえ、早く帰らなければ華澄さんたちも心配しているだろう。

 

「いいや。あの子たちは、普段は9時には夢の中さ」

「だよなぁ……。でも、今日は何度聞いても眠くないって。いったいどうしたんだろうな」

「フフ、だから鬼一は鈍いのさ。あの子たちが寝たくない理由……。そんなものは決まっているだろう?朝起きたら鬼一がいない……。そんな現実を忘れるために、少しでも長く一緒にいたかったのさ」

「…………。それは……悪かったよ」


 少しばかり気まずい空気が流れた気がしたが、秘密子の顔を見るかぎりは、本気で言っているわけでもないようだ。


「冗談さ。どっちにしたって、春からはいなくなる予定だったんだし。むしろ定期的に帰ってくる約束をさせたぶん、良かったのかもしれないけどね」

「心配しなくたって、また会いにくるさ」

「ふ~ん。会いにくるのは、あの子たちにだけかい?」

「は?それって……。い、いや、お前には学校で毎日会ってるだろうが」

「特進クラスと一般クラスで、接点はほとんどないけどね。さて、もう遅いし、そろそろ帰らないと愛しい彼女が心配するよ」

「だから、彼女じゃねえよ。だいたい、澄麗さんは滅茶苦茶モテるらしいし、俺なんかからかい甲斐のある弟みたいなもんだ」

「……。まあいいさ。今は(・・)そういうことにしておくよ。少年漫画や赤神君ふうに言えば、敵は強いほど燃えるもんだしね。鬼一にとっては恋愛小説より、そっちのほうがわかりやすいだろ?」

「は?なんだよそれ……。余計にわかんねえよ」


 意味深な言葉をつぶやいた秘密子は、俺の質問を無視すると、ガラリと雰囲気を変える。

 

「それよりも……。昼間は僕が悪かったよ、鬼一」

「な、なに言ってんだよ。そりゃあ、あんなとこ見られたら勘違いしたって仕方ないさ」

「たしかにね。美人相手にデレデレしてた鬼一が悪い」

「あのなぁ……」

「でも、不安だったんだ。鬼一が新しい生活に慣れて、そっちの方が楽しくて、僕やあの子たちのこと、この施設で一緒に育った皆のことを忘れてくんじゃないかって……」

「ば、馬鹿言うなよ!お前だって、チビどもだって、ここの仲間たちだって、俺の家族同然なんだよ。新しい家族ができたからって、忘れるはずないだろ」

「そっか……。そうだね、鬼一は昔からそうだったね。無駄にデカくて、コワモテで、不愛想で、人の言うことを聞かなくって……」

「ぐっ……。悪かったな」

「そんな見た目と反対で、いっつも自分のことは二の次で、周りに気を遣って優しくて、週に一度は帰ってくるって約束は、馬鹿正直に守るお人好しで……。でも、そんな鬼一だからこそ、僕は……」

「秘密子……?お前、なに言って……」

「ねえ鬼一……。一つお願いがあるんだけど……」

「な、なんだよ?」


 少しばかり顔を赤らめ、恥ずかしそうに俯く秘密子。

 無言の時が流れ、やがて秘密子が俺に歩み寄ってくる。そして、ゆっくりと顔が近付いてきて……。

 

「おっ……、おい……」

 

 そんな姿を見れば、いくら鈍い俺だって気付く。もしかして秘密子は、俺のことを……?

 

「目を……瞑ってくれないか」

「な、なんで……?」

「お願い。このままだと……恥ずかしい……から」

「お……、おう……」


 こんなシーンを、どこかで見た覚えがあった。

 もちろん俺自身が経験したわけじゃないが、漫画やアニメなんかでは定番のシチュエーションだ。そしてここから先に訪れるであろうことを想像すると、痛いほどに心臓が高鳴る。

 だが、いいのだろうか。俺と秘密子はそんなんじゃないはずだ。いや、少なくとも秘密子は、俺のことなど何とも思っていないはずだ。それがなぜ……。

 もちろん俺だって、秘密子のことは兄妹同然に思っている。でも、この胸の高鳴りはなんだろう。もしかして俺は、気付かなかっただけで秘密子のことを……。

 いつしか俺は、腰をかがめて姿勢を低くしていた。それは、頭一つ分以上身長差のある秘密子では、俺の顔に届かないだだろうと思ったからで……。

 やがて、俺の顔に温かい吐息がかかる。それはくすぐったくも、春の暖かいそよ風のようだ。

 そして……。

 

「痛ぇ!!」


 想像していた唇への柔らかい感触ではなく、いきなりギュッと鼻をつままれた痛みで目を開ける。

 

「あははは!なんて言うと思ったかい?それにその顔……、真っ赤じゃないか。ふふっ、もしかしてキスされるとでも思った?なるほど、そうやって鬼一は魔性の女どもにからかわれ、遊ばれてるわけだね」

「ぐっ……。こんな露骨なことはされてねぇけどな……」


 だが、楽しそうに笑う秘密子を見ていると、からかわれても悪い気はしない。


「それよりも、持っていきなよ」

 

 不意に秘密子は、後ろ手に持っていた紙袋を突き出してくる。


「なんだこれ?あ……」

「僕には当面の間必要ないからね。しばらくは貸してあげるよ。居候の身じゃ、お小遣いの余裕もないだろうし。ま、それで女心ってのを勉強するといいさ」

「あ、ああ……。悪いな」

 

 紙袋を渡しながら、秘密子は俺の手を包み込むように握ってくる。もちろん、俺と比べればはるかに小さな手だ。

 だが、燃えるような熱さを持ったその手に、先ほどのこともあって内心ドキリとする。

 とはいえ、借りると言っても……。

 時間も遅いし、なんとなく言い出すタイミングも逃してしまい、結局俺は紙袋を抱えて帰ることになったのだった。

 

☆ ☆ ☆


「お帰り~。なぁんだ、今晩はしっぽりとお泊りじゃなかったんだね。ふむふむ、やっぱりお姉ちゃんの魅力に気付いて、帰ってきたわけだにゃ?んも~、それじゃあ今夜は、キーくんを寝・か・さ・な・い・ぞっ」

「そんなわけないでしょ。何度も言いますけど、秘密子とはそんなんじゃないですから」

「ケッ、そのまま帰ってこなくてもよかったのによ。まあ……、美澄がお前が帰ってこなくてムクれてたから、それはそれで許さねえけどな」

「んも~、那澄菜ったらツンデレなんだからぁ」

「ツッ……、ツンデレじゃねえ!美澄がって言ってんだろ!」

「すみません。美澄ちゃんには明日謝っておきます」


 この場にいない美澄ちゃんは、もう寝てしまったようだ。

 無理もないだろう、すでに夜の11時近いのだ。いくら大人びていたって、まだまだ小学生なのだ。風呂場から水音が聞こえるということは、華澄さんはお風呂だろうか。

 

「んふふ~。那澄菜ちゃんは素直じゃないにゃ~。キーくんが帰ってきて嬉しいって、正直に言えばいいのに」

「んなっ!そ、そんなわけあるか!だいたいこいつは……」


 相変わらず仲良く?姉妹喧嘩を初めた二人を横目に、俺は部屋に戻ろうとする。だが、そこで澄麗さんが目ざとく俺の荷物に気付く。

 

「ん?なにそれ?もしかして……、エッチな本かにゃ?いやぁん、そんなもの買ってこなくても、お姉ちゃんがいくらでも見せてあげるのにぃ。そうそう、後で約束の勝負おパンツをプレゼントしてあげるからね。今日のデートで使用済みの、脱ぎたてホカホカだよん」

「テテテ……、テメェ!そんな汚らわしいもん持ち込みやがって!やっぱオレたちを、そういう目で……」

「ち、違うって!落ち着けよ」


 俺は慌てて紙袋の中身を取り出す。そこから出てきたのは……。

 

「ママの……、小説?」


 そして俺は、今日の出来事を話す。

 

「なるほどねー。あの子はママのファンってわけか……。しっかし……」


 澄麗さんは苦笑するようにリビングを見渡す。本に興味のない俺は最近まで気付きもしなかったが、よく見ればそこら中に置かれているものは……。

 

「キーくんは、我が家に売るほどあるものを借りてきたってわけだ」


 そう、そこらに無造作に置かれているのは、華澄さんの書いた小説だった。

 

「仕方ないでしょ。秘密子も親切心で貸してくれたんだし、断るのも悪いかと思って……」

「なるほどねー。キーくんは優しいにゃ~。それともなにかな?あの可愛い幼馴染に、いいトコを見せたかったのかな?」

「ちっ、違いますよ!」


 これ以上話していても、ろくなことにはなりそうにない。部屋へと戻ろうとした矢先、澄麗さんの表情が微妙に変化していることに気付く。なんというか、口の端が徐々に上がり始めたのだ。


「ん~。でも、昼間は美人のお姉ちゃんとデートして、夜は可愛い幼馴染とイチャイチャしてたのになぁんにもなかったなんて、男の子としてはちょっと消化不良というか、欲求不満だよね」

「……。そんなことはありませんよ」

「ホントにぃ?」

「…………。何が言いたいんですか?」

「大丈夫大丈夫。ちゃんとお姉ちゃんが、エッチな本の代わりにサービスショットを提供してあげるから」

「いっ、いりませんよ!」


 姉を守ろうとしたのか、そんな俺たちの間に那澄菜が割って入る。

 

「ちょ、ちょっと澄麗姉!そ、そんなことして、もしもコイツが興奮して、澄麗姉に襲い掛かりでもしたら……!」

「それはないから大丈夫だよん。だって……」


 澄麗さんの口元は、MAXまでニューっと吊り上がる。それを見た俺は、猛烈に嫌な予感がして慌てて部屋へと戻ろうとする。

 が、時すでに遅かったようだ……。

 

「ほいっ!」


 澄麗さんは掛け声とともに、パジャマの上着をめくりあげる。

 そこに現れたのは、真っ白い肌に細くくびれた腰回り。ちょこんとへこんだ小さなおヘソと、淡いブルーのスポーツブラに包まれた慎ましやかな(・・・・・・)胸……。

 

「ぎ……、ぎ…………、ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁあーーーーーーーーーっ!!」


 そして、家中に那澄菜の絶叫が響き渡る。

 

「ほら、サービスするのは那澄菜だからねん。だからアタシは大丈夫っ!」


 そして乾いた音とともに、なぜか俺の左頬に真っ赤な紅葉が舞い落ちることとなる。

 

「あらあら、騒々しいわねぇ。こんな遅くにいったいどうしたの?」

 

 ちなみに、那澄菜の絶叫を聞きつけた華澄さんが風呂から出てきたのだが、その姿はバスタオル一枚を巻き付けただけだった。

 しかも少しばかり慌てていたのか、巻き方が緩く今にも胸が零れ落ちそうになっている。おまけに下半身に至っては、少々長さが足りておらず……。

 

「かかかかっ……、華澄さんっ!?」

「マッ、ママ!?ななな、なんて格好してんだよっ!テテテッ、テメエも見るんじゃねぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

 そしてその姿を唖然として見ていた俺の右頬には、もう一枚の紅葉が舞い落ちることになるのだった。

 余談だが、ほんのちょっぴり……、いや、ホントのホントに欠片だけ期待していた澄麗さんの勝負パンツが、その後俺にプレゼントされることはなかった……。

澄麗編……のはずでしたが、後半から主役が変わっているような気も……。おまけにタイトルも追加となっています。もう少し後になりますが、もっと澄麗メインの回もありますのでご安心?を。次回からはツンデレ娘……じゃなくて、那澄菜編です。今回とは違う意味で、少しばかり過激な表現となりますがご容赦ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ