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小説の味
小説の味
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ドグラマグラ太郎
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小説はなんとしても「美味く」あって欲しい。
美味くなくては喜びというものがない。
美味いものを読むと、人間誰しも機嫌がよくなる。
必ずニコニコする。
これが健康をつくる源になっているようだ。
現実逃避である小説を読む事は怠惰だ。
怠惰に耽溺するのは恥ずかしいことだ。
けれども、実は肉体の全部が現実逃避を要求している。
どうもそう考えられる。
心というものも、常に喜びを理想としている。
心さえ楽しんでくれれば大丈夫だ。
他に少々間違いがあっても問題無い。
上書きされるようである。
成人した者は、だんだん、だんだん、少なくなる。
現実から受け取る喜びが少なくなる。
現実を生きている実感が少なくなる。
だからこそ。
自分の好きな小説を読んで楽しむことが大事だ。
名高い小説かどうかは関係ない。
自分に合わなければ栄養にはならない。
誰が美味いと言ったかも大事だ。
これで判断するのも一つの手だ。
甘い事を言っているかもしれない。
しかし甘言こそが劣悪な現実を瞞着する秘密である。
いずれにしても、適量になるよう慎むべきであろう。
(令和二年)