No.03 新世界へようこそ
投稿は非常に遅いですが続けていきます……!
──不思議な感覚だった。
水の中にいるかのような浮遊感。
それでいてベッドに寝ているかのような安定感。
ウォーターベッドに寝たらこんな感じなのかなとも思う。
もう少しこの感覚を味わっていたい。
が、時間がそれを許してくれないみたいだ。
少しずつ身体が引っ張られ重くなっていく。
そろそろ覚醒する時間なのだろう。
これからどんな生活が待っているのだろう。
なるべく楽しいとありがたいな――
☆
「ん……んんっ……」
――冷たい風が頬を撫でる。
それをきっかけに少しずつ目を覚ます。
今の感覚は寝落ちをかました翌朝のよう。
身体は重く感じるし、意識もまだ覚醒していない。
とりあえず再び寝ないようにするため身体を起こす。
片目だけ開けて状況を確認し、また寝ようと思った。
が、視界に入った情報がそれを許さなかった。
目に映るは一面に広がる森。
どこまで見ても木。木。木。木ばかり。
他に何か無いか注意深く見渡すと、前方右側に町のようなものが見えた。
――だが遠い。
散歩がてら寄っていく、というような距離ではない。
それに見知らぬ森を無策で進もうという無謀な賭けに出るには早すぎる。
それ以外に何かないか見渡すが、残念なことに森しか見えない。
――仕方ない。次は自分周辺の確認でもするか。
まず、自分の現在の状況を確認する。
今いるのは、山の麓にある洞穴の入り口のようだ。
地上から数メートルほどの高台で、細いが地上に降りる道もあった。
洞穴の奥は行き止まりになっているが、テニスコート2面ほどの奥行きはある。
天井もそれなりに高い。
……ここを拠点にするのもいいかもしれない。
しばらく洞穴を確認し、その後周辺の捜索もしたがこれといった問題も収穫も無かった。
「異常は無し。収穫も無し。さて、まったくのスタートに戻ったぞ……」
周辺の安全が確認できた、これは安心に大きくつながる。
が、しかし食料も水分も見つけられなかったのは同じくらい大きな痛手だ。
まだ陽は高い。今のうちに出来ることはやっておくべきだろう。所謂
となると次は、自称神様からもらった『ダンジョンキューブ』というものの機能でも確認するか。
ベルトにぶら下がってるそれを手に起動させる。
「スタート」
すると、さながらRPGのステータス画面といった表示が目の前に現れた。
実物でもホログラムでもなさそうだ。
「さてさて、何ができるのかしらっと――」
早速確認だ。
表示の右側に自分のステータスなどの基礎情報が書かれている。
が、数値はそれぞれにあるが基準がわからなければ意味がない。
肝心のD Pは表示右上の角に別枠としてあった。
今回の主目的となるものだ。わかりやすいならそれでありがたい。
次は左側。こちらは項目ごとに纏められていて、所謂メニューバーというものだった。
主項目は、『編集』、『管理』、『生成』、『その他』 と書いてある。
――てかここは『装備』とか『道具』とかじゃないんだね。
メニューバーはダンジョン用って感じなのかな。
じゃあまずは、『編集』から見ていくか。
すると勝手に『編集』の項目が開かれた。
――おぉ。これはあれか、意識しただけで操作ができるのか。なんと便利な。
どうやら項目のツリーはまだ続くみたいだ。
最初にある、『ダンジョン』という項目を開く。
すると中には、『作成』 『連結』 『削除』 の3項目があった。
ダンジョンを作る項目は『生成』じゃなかったのか、と頭の中でツッコミが入った。
でだ。とっても大事な『作成』を確認した、のだが――
→必要DP: 5,000 DP
「……ははは。これは、冗談だろ」
そう思いたくもなる。
だって自称神様からもらった半分を消費することになるんだぞ!
これでは気軽にダンジョンを作ることも出来ない。
――情報を得るための捨てダンジョンすら作れないということ。
作るのは大変だ。そりゃ高くても仕方がない。
そう割り切りほかの項目も見てみる。
『連結』
→必要DP: 15,000 DP
『削除』
→必要DP: 8,000 DP
――んだよこれはぁぁぁぁぁぁぁ!!
確かにあの自称神様が言っていたように、おたすけアイテムであってチートアイテムではない。
性能はチート級だが、使えなければ意味がない。
他に使えるものがないか必死に探すが全滅。
まず基本的に必要なDPが高い。
『生成』の中にある『食料』という項目には食べ物の名前がたくさん書かれていた。
しかし、どれもこれも『作成』とほぼ同じくらいDPを要求される。
『武器』や『家具』なんかも項目にあったがこれはもう桁が違った。
――なんだろ。高級スーパーにでも買いに来たのかな。
困ったことに完全に手詰まりだ。
とりあえず安全確保のために、自分が目覚めた洞穴の入り口に戻ってきた。
選択肢は二つ。
一つは、ここにダンジョンを創り行動できるまでのDPを稼ぐ。
一つは、ここを離れ町に向かう。
陽もそろそろ陰り始めてきている。
高台になっているとはいえここは森の中だ。何が出てくるかわからない。
悩んでいられる時間はない。
焦って決めてもいい結果にはならないとわかってはいるが、焦ってしまう。
――どうする。どうすれば。
ええい、ままよ!
そう思い決断しようとしたその時――
「おっ? そこにいるのは人間か?」
――高台の下から声が聞こえた。この世界に来て初めての声だ。
前回の投稿から5か月も経ってしまいました……
ちゃんと更新できるように頑張っていきます!