No.00 空虚
プロットZEROで書いていく作品です。
終着点は考えていますがそれ以外は作者自身にもわかりません!
なのでお暇な時間で気軽に読んでいただければなと思います!
――夢を見ていた。
長い、とても長い夢。
今まで生きてきた長さと同じくらい、とても長い夢を見ていた。
ごく一般的な家に生まれつき、多少の不自由はあれどもとても幸せに生活をする。
大きな問題もなく、幼稚園から小学校、中学校、高校と進学をしていく。
大学受験では一度失敗してしまったが、その後無事進学ができた。
とても平和な日常を過ごしていた。
それなのに、何かが足りない。
物理的なものではない。
なにか、パズルのピースよりも大事で細かな何か。
おかしいところなど何もないのに。
大学生活も楽しく過ごし、気が付けば大学4年生になっていた。
周りのみんなは就活に勤しんでいる。
インターンに行ったり、先輩の話を聞きに行ったり。
自分で起業しようとしている奴もいた。
みんなが自分の将来のために必死に頑張っている。
そこで違和感を感じた。
――どうしてみんなが頑張っているのだろうか。
何もおかしいことはない。
自分の人生を良くしようと、謳歌しようとしているのだ。
意識的だろうが無意識的だろうが関係ない。
自分の人生は自分のものだ。
自分のために自分が頑張る。
――自分のため……?
この違和感はいったい何なのだろう。
とても、とても大事ななにかが欠損している気がする。
でもわからない。
数理物理学の講義が終わり、帰宅しようと準備をしていた。
ふいに隣から声がかかる。
「なぁ、この後は何もないだろ? 飲みにでも行かね?」
何気ない会話。
なのにそこで気付いた。気が付いてしまった。
今まで感じていた違和感の正体に。
足りていなかった大事な何かが。
――足りていなかったのは、『自分自身』だ。
生まれた時から今に至るまで自分を主体で認識していないことに気が付いてしまったのだ。
今まで、特に気が付かないで困ったことがなかった。
きっかけがなかったから普通に生活ができていた。
さっきの授業がきっかけとなったのか。
『シミュレーション仮説』
別にこの世界が作り物だと認識したわけじゃない。
ただ、今まで感じていたものを説明するとしたらこれが最適だと思ったからだ。
自分が存在しているのにいつも第三者視点で見ている感覚。
自分が受け答えしているはずなのに自分の考えじゃない感覚。
周りのことはよく見えているのに自分のことになると何もわからなくなる感覚。
まるで自分がゲームの中で生活しているような、そんな気分なのだ。
「……おい。 なんか反応しろよ」
「あ、あぁ悪い。 わかった、お店選びは任せた」
説明が付いたから万事解決。
と、そんな簡単な問題ではない。
むしろ説明がついてしまった故になあなあにすることも出来なくなってしまった。
自分自身と向き合う、いや、事実と向き合うのほうが正しいか。
とりあえず、今はこれくらいにしておかなければ。
次は心配されてしまう。
飲んで気分転換でもしてからまた考えよう。
手早く支度を済ませ席を立つ。
その後、俺は友達数人と飲み屋へ向かった。
その道中、なんの前触れもなく心臓発作を起こし俺は死んだ――