表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/95

聖女は彷徨いの森で彷徨いません

こっそりとタイトルを変えました_φ(^_^

 


「まずは彷徨いの森を抜けようか」


 ノワルの言葉に、みんなで歩き始める。

 彷徨いの森と言われるので、どんなに恐ろしい森なのかと思い最初はびくびくしていたけど、時折そっと吹く柔らかな風や木漏れ日が差し込んでいる穏やかな森だった。


 ラピスが、ぴょんぴょんとスキップするように跳ねて先頭を歩き、分かれ道になると、「こっちでいいー?」とロズに、こてんと首を傾けて確認している。

 天使と美少年のやり取りが目に眩しい。

 出発してからずっと長閑(のどか)な光景が続いていて、ほのぼのした気持ちになる。


 横を歩くノワルを見上げると、ノワルが視線に気付き、顔を向けてくれる。


「ねえノワル、彷徨いの森を抜けるのは、どれくらいかかるの?」

「早ければ二日、遅くても三日で抜けると思う」


 広い森なんだな、と思いながら頷いた。


「彷徨いの森って普通の森と違うの?」

「そうだな。普通は、目印なしで彷徨いの森に入ると、正しい道への方角を見失って、一生この森を彷徨い続けて死ぬことがほとんどだよ」

「えっ?」


 さらりとノワルが言った言葉に、もし三人に会えていなかったらと思うと、ふるりと寒気がして、思わず両腕をさすってしまう。

 

「それに彷徨いの森は、森の中に入った者の魔力を吸収するせいか、魔力濃度や時間の進み方が歪んでいるんだ。その影響で、この森の薬草の効能が高く、冒険者がギルドの依頼で摘みに来て、彷徨うことが多いかな。森の手前や奥によって少し変わるけど、彷徨いの森の一日は、森の外の一年くらいになるんだよ」

「ええっ? じゃあ三日かかったら三年経ってるの? たっくんに鯉のぼり返すの、すごく遅くなっちゃうよ……」


 思わず涙目になり、足を止めてしまう。

 ノワルの手が優しく私を引き寄せると、柔らかな感触が目尻の涙を掠め、驚いて涙が引っ込んだ。

 くすりと柔らかく笑うノワルが、もう片方の目尻の涙を、ちゅ、と音を立てるように吸い取ると「前の二人には、内緒」と人差し指を唇に当てる。

 その色っぽい仕草にも、顔に熱が集まってしまい、壊れた機械みたいに、こくこく上下に首を動かす。


 ラピスとロズに気づかれないように、歩くのを再開させる。パタパタと手のひらで扇いで、頬の熱を冷ましていると、ぽんぽんと頭をあやすように撫でられる。

 

普通なら(・・・・)、そうだよ。でも、花恋様は聖女だから普通じゃない。回転球のかんざしで、神様から結界を授かっているから、一日は一日だよ。それに、登龍門をくぐる時に召喚された時間に戻るつもりだから、この世界でかかった時間はあんまり関係ないかな」

「よかった、そうなんだね……」


 たっくんの鯉のぼりを待たせずに返せることに、ほっと安堵のため息を吐く。


「花恋様、危ないよ」


 ノワルに腰を引き寄せられ、優しく抱きしめられる。

 目の前の道に視線を戻せば、ぬかるんでいた。ずっと同じような森の道を進んでいたので、あまり前に注意をしていなかったと気付く。


「ちゃんと見てなくて、ごめんね。……ありがとう」

 

 ノワルの目を見つめてお礼を伝えると、にこりと笑って首を振る。


「花恋様は、旅慣れしていない女の子なんだから、無理はしないこと。ロズ、ラピス、そろそろ休憩にしよう」

「うん、ちょうど、お池があるのー」

「魔力池がありますので、そこで休みましょう」


 すごく女の子扱いをしてくれるのが、恥ずかしいような、くすぐったい気持ちになるけれど、慣れない森の中を長歩きしたので、足が重たくなって来ている。


「かれんさまー、こっちなのー」


 ラピスが小さな手で、私の手を引っ張ってくれる。

 ぴょんぴょんと跳ねるようにスキップするラピスに手を引かれると、目の前の枝や長く伸びた草が避けるように道が開けて行く。


「これは、ぼくのまほうなのー」


 不思議に思っていると、ラピスが得意げな顔をしながら教えてくれる。

 両手を腰に当てると、青色の瞳をキラキラと輝かせる。


「えっへんなのー」


 ラピスの様子があまりに可愛くて、くるくるな青い柔らかな髪を撫でてあげると、ふにゃりと嬉しそう笑う。

 もっと撫でてと言うように、手のひらにぐりぐりとくるくるな青い髪を押し付けるので、しばらくラピスのくるくる頭を撫でる。

 後ろを歩いていたノワルとロズも追いつき、枝や草が避けた道を抜けると、小さめな池にたどり着いた。


 池の一面に、つんつんした緑色の葉っぱに、白色や赤紫色、青紫色、紫色の花が咲き誇っているのが目に飛び込んで来た。


「わあ! アヤメの花がいっぱい咲いてるね……っ!」

 

 鮮やかな美しい光景に、思わず感嘆の声を漏らした途端。


「これは花菖蒲(しょうぶ)だよ」

「こちらは、花ショウブでございます」

「はなしょうぶなのー」


 息の合った三人から、花菖蒲(しょうぶ)だと、にっこり笑って突っ込みをされてしまった。


本日も読んで頂き、ありがとうございます♪


どうにもタイトルがしっくり来なくて…変えてみました(´・_・`)すみません。

まだ糖度低めなんですけど、絶対にどんどん糖度ましましになっちゃって、冒険が進まなくて、いちゃいちゃするような気がして……


だからタイトルも冒険よりは糖度に合わせて直しました_φ(・_・






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛作品を色々書いています୧꒰*´꒳`*꒱૭✧
よかったらのぞいてみてください♪
ヘッダ
新着順① 評価順② 短編③ 商業化④ お勧め作品⑤ 自己紹介⑥
ヘッダ
 

― 新着の感想 ―
[良い点] 美青年、美少年、天使! ほのぼの逆ハーレム、最高ですー♪ 私は密かに天使ラピスくん推しです。 「えっへんなのー」に、きゅんきゅんしてしまいました! 花恋ちゃん良いなー!私もなでなでしたい…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ