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序章 『はじまりの雪原』

目覚めた場所は見知らぬ雪原だった。


さ、寒い!どこだよここ!?夏の真っ只中だったはずだぞ。昨日だってたらふく西瓜を食べたばっかりだ!


ーーここは彼が今までいた場所とは別の軸に在る、異世界の地。

理解を超えた目の前の出来事に驚き、そして身に打ちつけられる吹雪の寒さに彼はちぢこまってしまう。


「あら、ボクは竜種を召喚したはずなんだけどねぇ?」


振り向いたら1人の女性がいた。雪の結晶のような美しい瞳と、同じ色の透き通るような髪。吹雪の中にあっては寒そうな装いだが不思議と違和感を感じさせないこの雰囲気。

彼は突然現れたこの女性に関心を抱きつつも、妙な胸の高まりに緊張を隠せずにいた。


「可愛らしい坊やじゃないか。名前は?」


「失礼な!他の小わっぱどものような扱いをしてくれるな!オレは伊達政宗だ!」


「これは失敬!マサムネ君。そうだね、君の言う通りだ。偉大な”白の魔女”のこのボクが召喚したんだ。ただの子供ではないのだろう。それはそうと、人系の眷属か。悪いけど少し背中を拝見させてもらうよ?」


彼女はそう言うとマサムネを後ろ向きにし、いきなり上着をまくり背中を触ってきた。もともと夏の装いだったのに、その上外気にさらされた素肌は吹雪に凍える。


「して、その眼帯はどうしたんだい?」


「病気だよ。見栄えが悪いもんだから切り落としてやったんだ」


「なるほど。隻眼か。それに、その様子だと契約はーーー結ばれてしまったみたいだね。しかし人系の風貌でありながら契約刻印は竜系眷属のもの、か。これまた変わりダネを引いてしまったな」


契約?大人が難しい話をしてるときによく使ってた言葉だな。


「な、なんだよこれ!」


背中を見てみたら彼女の胸元にある独特な模様と似たアザのようなものが出来ていた。もちろん幼い彼に刺青を入れた経験なんてあるわけもない。


「契約って、なんなんだ!?それにお前、何者なんだ!」


マサムネの必死な問いかけに、彼女はまるで実の弟に接するような、そんな優しい語り口で答えた。


「ボクの名はミラジェーン。ミラと呼ばれているよ。契約の内容については、少し話が長くなりそうだ。それに、ボクも魔性とはいえ幼子をこんなところに置いておくのは気がひける。隠れ家で温かい飲み物でもご馳走しよう。話はそれからだ」


そう言うとミラはマサムネの手をとり雪原を歩き出そうとする。


「離せ!オレはまだ何も付いて行くとは言ってないぞ!」


「あら、こんな美人なお姉さんの誘いなんだよ?と、冗談はさておき。ついて来てくれたら良いものをあげるよ」


「欲しいものなんて無え!」


気恥ずかしさと反抗心が頭の中で乱立するマサムネは繋がれたその手を遂にふりほどく。

そんな素直になれない彼に対して、なおも優しくミラは語りかけた。


「男の子なのに無欲なもんだね〜。でも、君はきっとついてくるだろう」


「なんでそう言い切れるんだ」


「交換条件に、ボクはその右眼をあげられるからだ」


顔の眼帯を撫でられながらそう言われたマサムネは、決意する。

再び差し出された手を仕方なくとり、共に歩き出す。大小2つの人影はいつしか吹雪と共に雪原の景色へ消えた。


ーーーこれが独眼竜と魔女の出会い。

長きに渡る、新しい世界での冒険の始まりでもあった。

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