表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/31

えっ、赤ちゃんプレイ?

なんか明るいな。

俺が初めて思ったことはそんな事だった。確かに明るい。しかし視界は無かった。もしかしたらまぶたを開けていないのかもしれない。脳が目覚めただけで体はまだ眠っているのか・・。


音も全然音になっていない。強弱は判るが意味は不明だ。試しに俺は腕を振ってみる。頭では振っているつもりなんだが反応は無い。ぎりぎり指だけは動かせるようだ。


なんだろう?俺は戻ってきたんだよな?まだ体が馴染んでいないのか?あっちの世界に飛んだ時はこんな事はなかった。参ったなぁ、でも焦ってもしかたないか。なんだかすげ~眠くなったよ。取り敢えず寝ちゃうか・・、起きたらすっきりして感覚も戻っているだろう。


そして俺は眠りにつく。しかし、このやり取りは俺がこっちの世界に戻ってから既に何回も行なわれていたのだ。俺は眠り、そして目を覚ます。そんな事を何回も繰り返した。そして漸く視界がはっきりしてきた。音も音として認識できるようになった。指だけでなく腕と足も動かせるようになった。

その結果、俺はひとつの結論に達する。


俺、赤ん坊になってるぅ~!


ぎゃ~っ!じじいっ!やりやがったな!これって転移じゃないっ!転生だぁっ!

くっ、じじいめ!やけに素直に事を進めると思ったらこうゆう事かいっ!ああっ、俺は一体誰の子供として生まれ変わったんだ!元の俺はどうなっちゃうんだ?もしかして行方不明ですか?スマホの最終発信地点は神奈川県のアパートですか!


元の世界に戻ってから多分半年くらい。俺は自分の置かれている状況をやっと把握できた。うん、こんなに時間が掛かったのは俺が赤ん坊だから。赤ん坊はお乳を飲んで寝るのが仕事だ。よって俺は1日内20時間くらいは寝ていたかも知れない。起きている時もお乳を飲むのが忙しくてあんまり他の事を考えられなかったんだよな。


俺を産んでくれたのであろう女性は優しかった。俺がおぎゃあと泣けば飛んで来てあやしてくれた。おっぱいだってしゃぶり放題である。まぁ、この時点では性欲より食欲が勝っているので飲んだら余韻も味わずに寝ちゃうんだけど・・。そして俺にはどうやら兄がいるらしい。これがまた俺を構うんだ。ほっぺを泥んこの手で触るのなんてかわいい方で俺が寒くないように布団をこれでもかと被せやがるのよ。こらっ!それって普通に死んじまうからよせっ!うわっ、顔に被せるな!息が出来んだろうがっ!


まぁ、大抵は母親がすぐに見つけてくれて事なきになるんだが、兄と思しき子供はめちゃくちゃ叱られている。うん、悪気はないんだろうけど止めてくれ。何時かなんか兄に抱っこされてそのまま下に落とされたからな。下が布団だったから良かったけど首から落ちていたら死んでるぜ!子供ってこえ~よ。穢れなき殺人者だね。


そんなサバイバル生活を1年も耐え抜いた俺はとうとう真実を知る事になる。


うわっ、この母親ってお袋だよっ!若いから判んなかったぜ!となると、あのいたずら小僧は兄ちゃんかっ!がーんっ、親父も若いぜ!じいちゃんもばあちゃんも生きているっ!いや、ばあちゃんは俺が24の時もちゃんと生きてたな。


なんてこった!俺って俺に転生したの?地方の領主の八男じゃなくて農家の次男坊なの?じじいっ!これって転生じゃねぇっ!やり直しって言うんだよ!道理で体の馴染みがいいはずだよ、これって俺の体だもん!今後24年間童貞を守り抜く綺麗な体だもんっ!


しかし、俺はここである事に気付く。

ぎゃーっ!また学校に行かなきゃならんのかぁ!やっと、やっと勉強から開放されたのにもう一度あの苦行をしなくちゃならんのかぁ!


「母ちゃん、なんかサノスケが騒いでいるよ。」

状況を理解しパニクった俺を見ながら兄ちゃんがお袋に言う。

「あら、ウンチかな。頼朝よりともオシメ持って来て。」

「うんっ!」

そう、俺の兄ちゃんは頼朝 (よりとも)と言う。さすがは元豪族の家系だ。子供の名前もかっこいいぜ!


「あれ?ウンチじゃないわ。なんだろう?お乳の時間にはまだ早いし・・。頼朝いたずらしたんじゃないでしょうね!」

「してないよ!サノスケが勝手に騒ぎ始めたんだ!」

「そう・・、はぁ~い、佐野輔ちゃん、なんでちゅかぁ。」


お袋は俺を抱き上げて軽く揺すりながらあやし始めた。するとどうしたことだろう、あんなにパニクっていた俺はあっという間に幸せな気持ちになる。もう、何も考えられない。だだこの時間がずっと続けばいいとしか思えなくなった。しかも、体は正直である。多分パニクった時に頭に血が集中してエネルギーを使いすぎたのだろう。俺は3分もしない内にお袋の腕に包まれて眠りについた。


さて、一眠りして落ち着いた俺は色々確認することにした。まずこの赤ん坊は俺だ。そしてお袋は若かりし頃のお袋だ。兄ちゃんはただの糞ガキである。兄ちゃん、俺に鼻くそを食べさせるのは止めろっ!俺はまだ体の制御権を把握していないんだ。口の前に出された物は何でも食べようとするんだから止めてくれ!


さて、ここでひとつの疑問に突き当たる。お袋は俺が向こうに飛んだ時、既に50を超えていた。しかし、今俺にお乳を飲ませていているお袋はどう見ても30前。俺の計算が正しければ28歳のはずである。そう、俺は転生しただけでなく時間跳躍までしていたらしい。


じじい、お前俺に何か恨みでも・・、あるな。あり過ぎだな。でもそれって逆恨みじゃないのか?初めにミスをしたのはお前だぞ?しかも俺はちゃんとお前を庇って2年間も異世界に行ってやったぞ?その恩を忘れてこの仇かっ!許さんっ!上級神にチクってやる!お前なんか使いっぱしりの天使に降格だっ!


しかし参ったな。俺は記憶と意識は保持しているが体の制御が出来ん。どうやら魂と体の接続がうまくいってないらしい。というか赤ん坊の俺の頭の中って飯のことしかないよ。あっ、こら!おもちゃのアヒルを食うなっ!ぎゃーっ!馬鹿兄ちゃん!ビー玉なんか持ってくるな!絶対拾って食おうとするぞ、この赤ん坊は!


これは話が違うぞ!俺が読んだラノベでは金髪の若妻のおっぱいをしゃぶり放題、揉み放題のウハウハ体験が出来るはずなのに、幾ら若いといってもお袋相手にそれは出来んだろう!


ああっ、一体どこで間違ったんだ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ