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キャンプっ!しかもお泊りっ!

さて、夜雲が推薦したキャンプ場は結構山の中なので俺たちには交通手段がない。でもそこは兄ちゃんが車を出してくれることになった。実はああ見えて兄ちゃんはアウトドア派である。キャンプ用品も結構ちゃんとしたのを一式持っているのだ。


車だって普通のセダンではなくでかい8人乗りのワンボックスだ。まぁ、中古だけどね。そして何より兄ちゃんが付き添いとなってくれたおかげで、各自の親から1泊する許可が出たのだっ!ありがとう、兄ちゃんっ!この恩は1年は忘れないぜっ!


そして今俺は兄ちゃんに叩き起こされて荷物を車に運び入れている。兄ちゃん、まだ朝の4時なんだけど・・、昨日は嬉しくて寝付けなかったからすげー眠いです。


何でこんな早くから準備しているかと言うと、キャンプ場までは結構距離があるので早めに出発することになったのだ。これは朝のラッシュを見込んでのことだそうです。俺は前の時もあんまり運転はしなかったので道路事情に関しては疎い。もう全部兄ちゃんにお任せである。


頼朝よりとも、あんまり飛ばすんじゃないわよ。他の家の子を預かるんだから慎重に運転しなさい。」

「判っているさ、大丈夫だよ。」

うんっ、そう言いつつも兄ちゃんは前科持ちである。スピード違反ですでに3回も捕まっているのだ。まぁ、ぎりぎり免許停止は免れているようだが家族からは信用がない。


「道は判るんだろうね?」

「お袋、今はカーナビってやつがあるんだ。知らない場所でも迷う事はないよ。」

お袋はなんやかんやと兄ちゃんを心配している。普通の人ならこんなに構われると嫌がると思うが兄ちゃんは気にしない。というか嬉しそうだよ。本当に兄ちゃんはママっ子だ。


「よしっ、行くぞ。佐野輔、案内しろ。」

「はいなっ!まずは亜里沙んちからだ!」

俺は助手席に座って亜里沙の家までナビをする。というか兄ちゃんも亜里沙の家は知っているから迷う事はない。


俺たちが着くと亜里沙たちは既に家の前で待っていた。

「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」

亜里沙と千里が兄ちゃんに挨拶する。いや~、女の子ってここいら辺はちゃんとしているねぇ。


兄ちゃんは、見送りに出ていた亜里沙の両親に一言挨拶して車を出した。


「さて、次はどこだ?」

「夜雲の家は駅の向こうだから。○○スーパーって知ってる?」

「ああ、判る。」

「じゃ、そこまで。夜雲は駐車場で待っているはずだ。」

夜雲の家の周りはちょっと道が狭い。だから近くの駐車場で落ち合う事にしたのだ。まぁ、歩いても10分のところだから下手に対向車とかち合うよりはマシとの判断である。


駐車場に着くと夜雲とお袋さんが入り口で立っていた。


「待ったか?」

兄ちゃんが車から降りて夜雲に声を掛ける。

「いや、大した事はないです。今日はお世話になります。」

夜雲は兄ちゃんとも顔見知りなので挨拶は軽く済ます。それよりもお袋さんから挨拶されて兄ちゃんはうろたえているよ。がはははっ、そうだね。兄ちゃんは夜雲のお袋さんに会うの初めてだもんね。びっくりするよな。


「本日は息子がお世話になります。これ少ないですけどガソリン代にして下さい。」

「いやっ、そんな気を使わないで下さいっ!俺も行くんですからそうゆうのは無しでお願いしますっ!」

うんっ、やっぱりあれだけの美人に面と向かって挨拶されるとテンパるよな。兄ちゃんも漸くママっ子卒業か?


「夜雲、あんまりはしゃいじゃ駄目よ。特に川には気を付けるのよ。」

「うん、判っている。それじゃ行ってきます。」

「亜里沙ちゃんたちも気をつけてね。」

「はい、気をつけます。」

うんっ、亜里沙は夜雲のお袋さんの前では従順である。それに比べて千里は普通だ。まぁ、昨日会っているからな。こいつ、女性に対しては物怖じしないんだよな。


「お土産買ってきますね!」

おいおい、俺たちキャンプに行くんだぞ?お土産なんか売っているのか?

「うふふっ、楽しみにしているわ、千里ちゃん。」


そして夜雲のお袋さんに見送られて俺たちは出発した。でも何故か兄ちゃんが寄り道をする。

「あーっ、ちょっと寄るから。」

「えっ、どこに?」

「実はもうひとり乗っける。」

「えっ、誰?」

「俺の彼女。」

おーっと!なんだっ!兄ちゃん、彼女いたのかよっ!全然そんな素振りなかったじゃんっ!


うんっ、まぁ俺たち4人はカップルだからな。兄ちゃんひとりが独り身では寂しいもんな。しかし、いきなりの展開だよ。びっくりだ。兄ちゃん、いつママっ子を卒業したんだ?


そして町外れのコンビニで兄ちゃんの彼女は待っていた。あれ?可愛いじゃんっ!いや千里には負けるけど・・、いや一般的には千里より上か?うん、でも俺には千里が世界一だからっ!


「初めまして、頼朝よりとも君の彼女をやっている高坂 玲奈 (こうさか れいな)です。よろしくね。」

おーっ、さすがは大人の女性だぜっ!自分をちゃんと兄ちゃんの彼女って言い切ったっ!


「あっ、俺、兄ちゃんの弟です。こいつらは俺の同級です。」

「高校3年生かぁ、いいなぁ、私なんかもう昔過ぎて思い出せないくらいだもん。」

「あっ、そうなんですか?」

「うふふっ、その事は後でね。さぁ、道が混む前に行きましょう。」

俺たちは玲奈さんに促されて車に乗り込む。俺は助手席から後ろに回った。勿論助手席は玲奈さんだ。いきなり知らない人が飛び入りしたので俺は困惑したが女の子たちは気にしていない。夜雲も別段普通だ。あれっ?ビビっているのって俺だけなの?


そしてキャンプ場に着くまでの3時間、玲奈さんは兄ちゃんとの馴れ初めを話してくれた。何と玲奈さんは兄ちゃんと同じ高校でクラブの先輩だそうだ。因みにクラブは吹奏楽である。そう、兄ちゃんて見かけによらず多趣味なんだよ。本当に俺と兄弟なのかな。いや兄弟だけどね。


そして玲奈さんが卒業する日に何と兄ちゃんから告ったそうだ。これには俺もびっくりだ。あの兄ちゃんが自分から告るだなんてどうしたんだ、兄ちゃんっ!そんな事ではママっ子の名がすたるぞっ!・・いや廃らんがな。


そして、最初は遠慮して玲奈さんの話しに感心を示さない振りをしていた亜里沙たちもここら辺からは大興奮である。思わず俺は玲奈さんと席を交換させられた。亜里沙よ、お前酷くね。千里も少しは文句を言えっ!まぁ、女の子には興味深々な話題ではあるんだろうけどね。


兄ちゃんは、時々後ろで挙がる歓声にも動じず淡々と車を走らす。でも今回のキャンプに玲奈さんを連れ出した事を後悔しているのは傍からでも判った。なんでまた連れて来たんだろう?あっ、お袋に紹介する前に俺を懐柔しておきたかったのか?でも、ちょっと浅はかだったね。女子高生ってやつはかしましいのさ。

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