別ルートに入りました
さて、無事俺は狙った高校に合格した。勿論夜雲もだ。しかも、何故か亜里沙も同じ高校だよ。全くこいつもいじらしいな。
ここからは前回とはフィールドが違う。つまり前回の経験があまり使えないのだ。でも俺には今回の実績があるからな。今度こそは中の上あたりの人生を狙うぜっ!
そして今回は天が味方したのか俺は夜雲と同じクラスになった。残念ながら亜里沙は別だ。くくくっ、地団駄踏んで悔しがっているだろうな。まぁ、俺が取り持ってやるから安心しろ。でも夜雲はモテるらしいからな。如何にお前が美人でもうまく行くとは限らんぞ?
「よう、久しぶり。何だ、随分老けたんじゃないか?彼女と別れ離れになって人生の希望を見失ったか?」
開口一番がそれかよっ!いや、夜雲よ、如何にお前とは言え今その事を言うのか?本当にこいつは俺に対して遠慮がないな。後、老けたんじゃねぇっ!成長したんだよっ!お前だって僕から俺に一人称が代わっているじゃねぇかっ!
「ぬかせっ!俺はお前みたいにモテモテじゃないからひとつの出会いに対して真剣なんだよっ!」
「あはははっ、まぁそんなに僻むなよ。モテ過ぎるのも結構大変なんだぞ?」
くっ、言ってくれるじゃねぇかっ!まぁ、確かに大変なんだよな。俺も異世界で経験しているからね。もっとも俺はあっちの世界では全部面倒みたけどさ。いや~、懐かしいなぁ。でも俺のモテモテはチート故の偽りの感情だったはずだ。そう考えると彼女たちには悪いことをしたな。いや、ちゃんとやることはやったんだ。魔王との戦いは命がけだったからな。それくらいのご褒美はあって然るべきだろう。・・そうだよね?
「まっ、こうして同じ高校に入れたんだ。精々お前のモテ振りを観察させて貰うさ。」
「ふんっ、俺のことよりお前自身の心配をした方がいいんじゃないか?お前絶対なんか憑いているぞ?ちゃんとお祓いしているのか?呪いってやつは甘く見ていると後悔するらしいぜ?」
何だよ、こいつ何時から霊感少年になったんだ?そうゆうのは女の子の特権なんだからお前がしゃしゃり出たら駄目だろう?いや、付き合っている女の子がそっち系なのか?
「お祓いは2年前に済ませたさ。それよりお前、今付き合っている子はいるのか?」
「なんだ、いきなりだな。いや、いないよ。というか俺はお前と違ってひとりに絞ると周りが煩いんでね。あーっ、全く代わって欲しいもんだ。俺もお前くらいだったら静かな学生生活を送れるのにな。」
うんっ、夜雲も俺と久しぶりに面と向かって会えて嬉しいのだろう。口が軽やかに回っているよ。
「そうか・・、まぁ、お前ならその内、他の女の子がとても適わないと思うような女の子から告白されるさ。いいねぇ、待っていればいいだけの青春だなんて!全国のぽっち男子から非難の声が押し寄せるぜ。」
「お前もその中のひとりなのか?あんまり彼女を寂しがらせるなよ。」
「あっ、見る?ほら、これ俺の彼女!可愛いだろう!」
俺はお正月に神社で撮った着物姿の千里を特別に夜雲に見せる。なははははっ、ほれ、悔しがれ!俺の中学生活はリア充だったんだぜっ!
「ほうっ、可愛いな。なに?俺に紹介してくれるのか?」
「誰がするかっ!」
こんな感じで俺たちの高校生活は始まった。リューズの報告では死神たちは今のところ大人しいらしい。というか遠くで戦争が始まった為、そっちの対応に追われて俺の事など構っていられないらしい。まぁ、戦争自体は他国の人間が起こした事だから俺とは直接関係がないけど、その恩恵がこんな形で俺に舞い込むのはちょっと嫌だな。
ん~っ、これが異世界だったら漁夫の利を狙って虎視眈々と状況を見極めるとこだけど、今の俺って一介の高校生だからな。背丈にそぐわない行動は慎もう。下手に歴史の流れを弄ると上級神に怒られそうだし。
そんな高校生活もはや1ケ月を過ぎようとした時、とうとう亜里沙が我慢できなくなって、放課後の廊下で俺に突っかかってきた。
「あら、久しぶり。相変わらずのほほんと生きているのね。」
開口一番がそれかよ。はいはい、俺が悪うございました。いや、紹介しようとは思っていたのよ?でも4月って色々行事が立て込んでいて大変じゃん。俺や夜雲もクラスや部活に馴染むのが忙しくてさ。
「あーっ、まぁね。うん、亜里沙も相変わらず見たいだな。噂は届いているよ。お前、既に学校一の美人としてファンクラブもどきが出来たそうじゃないか。いやはや、俺なんか口を聞いて貰えるだけで他の男子に羨ましがられるな。」
うん、これくらいは軽いジャブだ。亜里沙は気にもしないよ。全く、夜雲といい亜里沙といい美形はこの手の嫌味には慣れっこだよな。
「手に届くアイドル?あなたもそんな安易な流行に乗るの?千里の目が届かないからと言って馬鹿なことをするとメールしちゃうわよ。」
「あっ、てめぇ。言うに事欠いて脅しかよっ!というかお前、夜雲にメールしてなかったんだって?やつに聞いたら1通もないって言ってたぞ?」
「なっ、何で私が彼にメールしなくちゃならないのよっ!よ、用事でもなければ送ったりしないわっ!」
いや、お前わざわざ用事らしきものを捏造して俺から夜雲のアドレスを聞きだしたじゃん!
「用事って・・、まぁいいや。そうだ、夜雲の部活って月から水は自主練らしいんだよ。」
うんっ、ここの弓道部って人気があるから曜日によって部員が道場を使う日を分けているらしい。道場の設備自体はそれ程大きくないからやむ得ない措置だそうだ。でもそれで高校総体の常連高なんだからすごいね。錬度の水準が高いのか、はたまた指導がいいのか。まっ、両方なんだろうけどね。
「夜雲君・・。そっ、それが私とどう関係するのよっ!」
うん、亜里沙のツンが俺に炸裂したよ。
「だからさ、今度の月曜にでも同小でもある俺たちでどっかで昔話でもどうかなと思ってさ。いや、無理にとは言わないけど夜雲も亜里沙の事は覚えていたし、せっかく同じ高校にいるんだからクラスが違うだけで会わないってのも変だろう?」
自分で言うのもなんだけど、今の俺ってお見合いを勧めるやり手ババアみたいだな。俺っ、何でこんな事しているんだろう?でも亜里沙は見事に喰い付いて来た。
「そっ、そうねっ!うん、いいわよ!私は時間を合わせてあげるわ!げっ、月曜日ね!何時にどこっ!」
うんっ、このテンパリ振りは千里が俺に告白した時より酷いな。まぁ、こいつにとっては4年ぶりだろうからなぁ。いやはや、恋のキューピットってやつは段取りが大変だ。
「あーっ、それはまた連絡するよ。実はまだ夜雲にも言ってないんだ。決まり次第メールするからさ。亜里沙は何かリクエストはあるのか?俺としてはカラオケかボーリングくらいしか思い付かないんだが・・。」
「夜雲君、ボーリングなんかしていいの?弓道って手首とか大切なんでしょう?」
くそっ、夜雲に関しては随分気にするじゃねぇかっ!俺への態度もそれくらい労われよ!俺はキューピットなんだぞ!
「いや、だからまだ話していないんだってば。ほんじゃ、明日にでも聞いておくよ。放課後にでもメールするわ。」
「あっ、明日ね!判ったわ!絶対よっ!」
はいはい、絶対ね。こりゃ何としても夜雲を連れ出さないと俺は亜里沙に殺されかねんな。
そして何とか俺の画策により夜雲と再会した亜里沙だったが、俺への態度と180度違ってまるで借りてきた猫のように大人しかったのが笑えるぜ!まぁ、それ以降、夜雲も亜里沙と連絡を取り合っているようだし、4年ぶりの再会としてはいい感じになったんじゃないかな?
というか亜里沙のやろう弓道部にまで入部しやがったよ!どんだけ側にいたいんだ?




