25/ 旅たちのEたち
パニールの所持金は650トラ。
コイーワゲーマーズメイトで薬草などを仕入れたかったが、朝っぱらなので開店していなかった。
(昨日行ったじゃん!買っておけよお〜僕!)
というわけで個人店で購入することにした。
コイーワゲーマーのような量販店でないため高くつくがしかたない。
僕らは《超市場》に向かった。
「らっしゃいらっしゃい〜安いよ安すぎて僕たちは困るよ〜」
威勢がいい。
超市場は活気に満ちている。
薬草、毒抜きドリンク、楽しめる聖水、おにぎり各種、スーパーパンなど様々な食品が青空に陳列している。
「よ!そこのお姉ちゃんたち!」
僕は素通りした。
「あなたよあなた!ジプシーファッションの麗しきユー!」
「僕?」
「もちろん!」
「僕は男の子だよお!」
「だっははははは!」
笑われた。笑わしにいっていないのに笑われるのは本当に嫌なものだ...
「姉さん」
「パニールさん..」
僕は半泣きでパニールをみつめた。
「姉さんはどう思われたいのですか?」
「え」
「だって今の姉さんは踊り子の衣装、どうみても女性です。姉さんも承知して歩いているはずです。女性だと思われることは成功であり、狙い通りであり、誇らしく思うのが自然だと思うのですが」
「うっ...」
言葉に詰まった。
パニールの言っていることは筋が通っている。
踊り子の格好をしている、女性にみられる、それは扮装としては成功だ。
ただ..
僕は空を見上げた。
雲の破片を探せないくらいの青空。
思えば..
踊り子は僕が選んだ職業ではない...
村娘に無理やり踊り子の衣装を着せられ、
住み込みの場所を求めてウロウロしていたら座長にスカウトされ..
一週間踊っていたら板についてしまって..
踊り子の能力が開花され、魔法まで使えるようになっただけだ..
...僕は男の子だ。
女の子が好きだ。
女の子にみられることに..うん、喜びなどない。
・・・
元の世界に戻るためだ。
魔王を倒し「元の世界に戻る」という願いを叶えるため、
僕は踊り子として進む。
この世界の踊り子は美しき女性。
踊り子として進むということは、女の子としてみられ続けるということ。
だからこれでいいんだ。
これでいいんだ!
・・・
「これどうだい?飲んでよし、かけてよしの聖水!今日は大サービスしちゃうよ!」
「ふたつください」
「あーりがとございます!楽しめる聖水!ふたつお買い上げ〜!」
パニールは50トラを支払った。
さらに僕たちは超市場をまわった。
薬草を4つ、毒抜きドリンク4本、おにぎり8個、スーパーパン8枚を購入していった。
残金は220トラになっていた。
「買いましたね」
「ですね」
「よし!」
僕たちは村と外の境界線に立った。
一歩を踏み出せばモンスターたちのウヨウヨ領域だ。
「笹木くん、パニールさん」
「?」
後ろから声がした。
僕たちは振り返った。
「!!」
つづく
【施設 vol.6】
超市場...食品関係を陳列している青空市。個人店であり、独自に定めた値段設定が特徴。
【アイテム vol.6】
薬草...15トラ。食べると元気になる。
毒抜きドリンク...20トラ。飲むと解毒する。
楽しめる聖水...50トラ。飲んだりかけたりするとモンスターが嫌がる。
おにぎり各種...10トラ。いろんな味がある。美味しい。
スーパーパン...20トラ。食べると覚えづらい魔法を暗記できる。