19/ 僕は中学三年の修学旅行で愚息を湯船からだすように言われた
「あ、あのお..」
「は、はいい」
店員は我に返り、口周りの唾をふきとった。
「えっとお..デンジャラス・ブーメランと..オートユミ!を..ください..」
上目遣いをしてみた。
きっと上手くできているはず..はっ!!
店内にある鏡に映った僕...
上目遣いすぎてほとんど白目だよ!!
やばい!
これじゃ店員は...!
大丈夫だった。
店員は僕の脚をジーっとみていた。
ほっ..よかった....
.........
やだっ...
この視線...
僕の肌に特定の熱をあてるようなこの視線...
あのころ...あのころを思い出す...
ーあのころー
2年前..中学三年の春...
「はーい!今日は腕相撲大会をしまーす!」
なんだよ腕相撲大会って..
唐突だよ..
野球部とサッカー部がウェイウェイいってる...嫌だな..
僕の身体は小さかった。
骨格が小さく、女子のようだった。
スカートを履いていないことが僕が男子であるという唯一の証明とさえいえた。
しかしジャージはみんなズボンだ。男女デザインも一緒。
ジャージを着た後ろ姿の僕...女子に間違えられる日々...
嫌だった。
隣の芝生は青く見える、無い物ねだり、僕は逞しい骨格に、太い筋肉、男らしく大きな肉体に憧れた。
努力もした、つもりだ。
筋トレもたくさんした。ご飯もできるだけたくさん食べた。
それでも骨は太くならず、逞しい肉が乗っかることはなかった。
そして..体毛も薄かった。
髪の毛と眉毛とまつ毛以外、一ミリくらしか生えてこなかった。
・・・・
髪の毛と眉毛とまつ毛以外・・・
ー修学旅行・大浴場ー
「おい!甘口!なに隠してんだよ!」
「え..いや、ははは」
「タオル禁止〜はいタオル禁止〜」
「え、ちょ、だめ、だめだってば..」
バッ!
・・・・あ
「おーい!おおごとだ!」
「なんだなんだ〜!」
「え!うわ!」
ざわざわざわざわ...
「うっ・・うっ・・」
「おい!甘口のやつ、パイチンだぜ!」
「マジか!こんなの5年ぶりくらいにみたぜ!」
「おれは4年ぶりだ!」
「パイチーン!甘口かりはパイチーン!」
間に合わなかった。
高木が僕のタオルを奪い取ったとき、代わりとなるべき僕の右手が。
間に合わなかった。
無残にさらされた僕の愚息。
その後はひどかった。
僕はクラスメートに両手両足をつかまれて、神輿のようにかつがれながら洗い場を通り過ぎ..
パイチンパイチンいわれ..
湯船に放り投げられたのだ..
その後はもっとひどかった。
ツルツルネッシー!ツルツルネッシー!
大合唱の中、
愚息だけをお湯から出すようにいわれ、
僕は愚息の先端を湯船からだした。
そして「スースーッ」って感じで前後左右に動かした。まるでネッシーが泳いでいるみたいにね。
あははははははは!
はははっははは!!
・・・・・
うっう...
..ん?なにか愚息にひときわ熱い視線が...
笑い者にされる感じの視線ではなく..こう、なにかもっと情欲的な...
熱い視線が...
僕は視線の先を探った。
高木だった。
脱衣所で僕からタオルをとった張本人だ。
その高木が湯船から頭を出して踊っている僕の愚息に熱視線を送っている。
・・高木くん..
!!!
僕は慌てて湯船から愚息を引っ込めた。
危なかった...
僕は僕の反応に戸惑いを隠せなかった。
ーーーーーーー
(...あのとき、高木くんが送ってきた視線と同じだ...)
つづく
【キャラファイル vol.5】
高木...甘口かりの中学時代の同級生。地元のラグビーチームに所属しており、ガチムチである。