17/ クールな妹は同人誌コーナーでお熱お熱♪
5Fの武器コーナー。
ワニのエスカレーターを上がると、すぐに《新作!》と書かれたエリア。
「おのおのおのおのFおのの♪」
な、なんだこの曲は!?
サビの部分が無限ループ!!
おのおのおのおのFおのの...
僕はいつの間にか口ずさんでいた。
...洗脳だ。
洗脳だ!!
このままでは新作の「おのサイズはFサイズ!」というネーミングの斧をレジに持って行きかねない!1000トラもするぞ!ちょーど全財産だよ!
別のゾーンへ小走りで移動!
とことことこ...
パニールも無表情のまま小走りでついてきた。
小走りする褐色の美少女・パニール、かわいい。
いろいろあるんだなあ..
僕はぶらぶらと武器コーナーをめぐった。
《ゆみや系》
《やり系》
《おの系》
《ハンマー系》
《ムチ系》
《ブーメラン系》
様々な形態の武器があり、種類も豊富だった。
あった!
《かたな系》
これこれ、やはり刀だよなあ。
短めの刀、身近な刀、熱めの刀、厚めの刀、柔らかめの刀、冷ための刀、極寒の刀、常夏の刀...
なんだかネーミングが和風、という文章的だ...
勇者の剣!とかファントムソード!とかそういうかっこいいネーミングはひとつもない...
中世ヨーロッパ風なこの世界観と合致しないよ...
(あ..これだ)
長めの刀。500トラ。
手頃な値段だし、攻撃力そこそこ、なにより形がいい!
「これにしよう!」
「いや、ちょっと待って..」
「すいませーん」
僕は店員を呼んだ。パニールがなにか言おうとしていたような気もするが。
「試技したいのですが」
「パワー証明書ございますか?」
僕はパワー証明書を手渡した。
店員はさっと目を通し、笑顔で頷いた。
「・・・」
パニールが難しい顔をしている。
いつもの無表情と微妙に違う、少し眉間にしわを寄せているような..
「どうぞ」
店員がショーケースから長めの刀を取り出し、僕に手渡した。
「!!」
重い!
重すぎる!!
僕は長めの刀を抱えたまま倒れ込んでしまった。
長めの刀の下敷きだ...
「助けて〜!」
店員は長めの刀をどかそうとすると、パニールが制した。
「え..パニール、さん?」
「姉さん...パワー証明書を不正で発行してもらっても、実際のパワーが伴ってなければ結局はこうなります」
「.....だね」
しかたない...
当初の目的に戻り、デンジャラス・ブーメランを購入するか...
。。。
うっ!!
腹が痛くなってきた!
僕はトイレに駆け込んだ。
ブーメランで戦い抜く不安なのか、ブーメランの扱いに対する自信のなさなのか..とにかく強いストレスを感じたのだ..
fuu..
トイレから出てきたが、パニールの姿がない。
いた!
1Fにいた。
「パニールさん」
僕が声をかけるとパニールはビクッとしてなにかを後ろに隠した。
「パニールさん?」
「・・・い、行きましょう」
パニールは後ろ向きのまま店を出た。
ここは同人誌のフロア。
今、ふたなりスライム本が、熱い。
つづく
【アイテム vol.4】
おのサイズはFサイズ!...かなり太い斧。「おのおのおのおのFおのの...♪」というテーマ曲があることから、かなりのプロモーションをかけられて販売されている。1000トラという強気の値段設定。
長めの刀...長めの刀である。リーチがあるが重量があり、購入にはパワー証明書の提出が必要である。500トラで販売。
ふたなりスライム本...流行りのジャンル。メススライムに男性器が生えてしまい、混乱と喜びの狭間でメススライムと情事に溺れる、というのがストーリーのテンプレとなっている。