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町へ

ここ。


町、です。


師匠の家は、森の中にあって、しかもその森は絶賛真冬中。でも、何故か今私は町にいる。

しかも、よく分からないけどかなり大きい。白を基調として、高くも低くもない丁度いい高さの建物が規則正しく並んでいる。


「何で、今、一瞬で、ここに」


戸惑うわ。

ええ、戸惑いますよ。


ドア、開けて、踏み出した、師匠、居ない。

私、恐る恐る踏み出す。

ここにいる。


「転移術だ。お前、そんなことも知らないのか」


帰ったらみっちり勉強させてやるからな、と。

はあ、と返すしかない私は、じゃあ、と足を踏み出した。

師匠も私と一緒に歩き出す。


市、だろうか。結構活気があって、そこら中に声が響いている。

この町は天候が良くて、気温も高い。そのような場所まで転移出来るのは、おそらくきっと凄いことなのだろう。この星の反対から来たんだ。私たち。


「ここは、……俺の家からそんなに遠くないぞ」

「嘘よ!だって、あの森、あんなにいっつも吹雪いて、ほんとにたまにしか太陽もまともに見えないじゃない!」


人がこの星の反対から……とか、やってたのに、もう、もう!

心の中のことだけど、私は少し恥ずかしくて、話を逸らすことにした。


「そ、そんなことはいいわよ。師匠。お金持ってるの?」

「馬鹿にしてるのか。本当に、お前は、俺を師と呼びながら、敬っているのか、馬鹿にしているのか……」

「ふーん……。あ、あのお店はどうかしら」

「お、いいな」


師匠がお金を持っていることは分かったし、あの様子だとかなりため込んでいるみたい。遠慮なく服を買って貰えるってものよ。

でも、この店、適当に良さそうだと思ったけれど、師匠が入るにはちょっとぶりぶりし過ぎかな。外面は町の景観を保つためか白だったけど、中はぴんく、ぴんく、ぴんくだ。

ししょー?と、隣に立つ黒づくめの男を見てみると、


「なんだ」


しれっとしてた。

なんだ。なんだかよ。師匠場違い。完全にアウェイだから。気づかないの?単に羞恥心がないだけなの?

おい、私より先に歩くな。周りの女の子が怖がって……


「師匠……」

「なんなんだ、さっきから」

「さながら、王子様ね」

「は?」


服こそ完全に不審者だけど、師匠は白い髪……もうこの際銀髪といおう。そして金の瞳。そして高身長細身で、顔のパーツは、これでどうだ!と、おそらく神様が渾身の一作として作り上げ、それを天女があーでもない、こーでもないと長年どの位置に置くのが最も素晴らしい出来になるかを考え抜いた末に誕生した……。と言ってもまったくもって、過言ではないくらいに整っているのだ。


当然そのような男……青年を、この店にいるような小さい女の子は、本の中で読んだことがあるだろう。まさに王子様。


「なにを馬鹿なことを言っている。俺には、王族の血など、一滴も流れてないぞ」

「はいはい。じゃあ、服見ましょう」

「あ、ああ……」


王子様は、なぜ小さな子が自分を見ているのか説明を私に求めたが、先ほどの私の心の中で行った彼へのべた褒めをここで披露(正しくは人前で。壁に向かってなら言ってもいい)するのははばかられたので、さあ、と分からないふりをした。


「お、これなんかどうだ」

「!?」


吹っ切れた師匠は、私の服をいろいろと見て回って、私に数着持ってきた。

私の髪は赤い。だからだろうか。

必死に作った職人の技が見える繊細なレースをふんだんに使用した人形用かな?というようなもはやワンピースではなく、ドレスだ。

やはり私の髪の色に合わせるような色は、赤か白か黒か。水色は最悪だし、緑系は植物チックだし、紺やボルドーは淑女だし、ぴんくにするなら赤にしろって感じだし、黄色は目がちかちかするし……。


「不満か」

「……そんなフリルのついた服で私に家事をさせるつもりなの」


もしや、こいつやっぱり変t「これならどうだ」


彼が手に持っていたもう一着の服を見ると(彼が手に取るまで丸めてあって見えなかった)、青いワンピースで、Uネック。袖はパフスリーブになっていて、動きやすそうだ。腰のあたりにリボンが一周まかれていて、後ろでくくる形になっている。そこから切り替えがあって、少し寄せられたギャザーのスカート部分。裾には申し訳程度のレースが着いているが、よく見ると細いが、非常に細かく、繊細なレース。脱ぎ着は背中の部分のボタンで行うようだけど、これ、自分でできるかな?


「き、気に入ったわ」

「上から目線だなおい」


師匠は私の頭をごりごりした。


「痛い痛い痛い」

「お、お客様、どうなさいましたか」


ほら、店員が心配そうにこっちを見ているぞ。

でも、師匠は慌てふためく様子を一切見せずに一睨みして店員を追っ払った。


「本当に気に入ったわよ? 青っていう概念がなかったもの。私には」

「そうなのか?藤色も案外悪くないぞ」

「そうね」


そうして、気づけば一時間は経ってから店を出た。荷物は師匠の転移術とやらで家に送ったらしい。

家を出たのが四時くらいだったから、今は大体五時過ぎくらいだ。師匠はなんだか少し怖い顔をしている。なぜ?

しかし、このまま帰る前に私は師匠に、この、期限が悪そうな男に、もう一つだけ頼まねばならないことがあるのだ。


「師匠、その、とっても言いずらいのですけども」

「そうか、弟子よ。話してみるがいい」

「その……私の下着類なども買って頂けると、嬉しいのですが」


……。


「そ、そう、だよな。悪かった。ああ、本当に悪かったと思っている。忘れていたわけじゃないぞ。本当だ」

「……」


もう、睨むしかない。

何よ、あの間。


「じゃあ、ちょっと行ってくるわね。……ついてくるつもりは無いわよね?」

「もちろんだ。お前は俺を変態か何かだと思っているだろ」


思っていますとも。


どんなものを買ったのかは明記しないことにする。……けれど、ここで真っ赤な下着だけは買っていないことを主張するくらいはしておこうとおもう。

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