14 アンデッドとリビングデッド
「エルドアールヴよ。
その不死の命――頂戴いたす」
すぅ、と大きく息を吸い、『剣豪』レオナルド・オルグレンが腰を深く落とした。
ひりつくような殺気が彼の体から発せられる。
「…………」
対峙するクロは背中に担いでいる大戦斧と斧槍に手を伸ばす。
その手がふたつの柄に触れた瞬間、
「ハッ!」
短く一喝。
レオナルドが肉薄する。
音を置き去りにしたかと思うほど速い足捌き。
瞬きの一瞬で、剣が届く間合いに入る――と同時、
鋭い剣閃が夜の闇に光った。
「――――ッ!」
しかし、それに対応できないクロではない。
レオナルドの剣速が届くより更に速く。
姿勢を低くして斧槍を抜き、その勢いで一足。
地面がえぐれるほどの踏み込みで、斧槍を振り抜く。
クロとレオナルドが交差する。
互いに背を向け合い、距離が開く。
「ふっ……ふふ」
レオナルドが笑う。
これは賞賛の笑いだ。
「噂に違わぬ……強さ、です」
ガクッとヒザをつく。
その胸には、斧槍の大斬り傷が出来ている。
「…………」
逆に、クロの方は頬に一筋だけ斬り傷が出来ただけ。
しかし、この傷をつけられたことはクロにとって驚愕するものだった。
確実に自分は剣を避けていたと思ったが、一撃を入れられた。
これを可能にしたのは彼の剣速の速さにある。
レオナルド・オルグレンは想像以上に強く、そしてまだ奥の手を隠し持っている。それはこの一合の交わしで理解した。
油断は出来ない。
迅速に倒すのが最適解だと判断する。
「ふッ!」
逡巡は一瞬で、クロは即座に動く。
反転し、先ほどよりも更に速く、強く踏み込んだ。
「ぐッ……ぁッ!」
まだヒザをついたままのレオナルドの背を、斧槍で突く。
背から胸まで、一撃で貫通させる。
容赦ない追撃。
奥の手を隠し持っているのなら、何かをやられる前に決着をつける。
「……ハァッ!」
片手でレオナルドの体ごと斧槍を上に持ち上げ、そのまま振り抜く。
遠心力によってレオナルドが斧槍の穂先から抜けて、遠くに飛んでいく。
「……普通なら、これで決着はついたはずだけど」
地面にうつ伏せになったレオナルドを見る。
胸を大きく斬られ、背後から心臓を貫かれて、更に投げ飛ばされた。
これで死なない人間はまずいない。
しかし、
「……やっぱり立つか」
レオナルドはすぐに立ち上がる。
その口元に笑みを浮かべて「ガハ……ッ」と血を吐いた。
「……如何にも、です」
「蘇生者の力。
どうやら思ってた以上に、死者を弄ぶみたいだな」
「ふふ……そのようで」
心臓を潰したハズなのに喋り、動いている。
あり得ない。
まるで不死のようなタフさだ。
「あなたの体の内に、グリモアの魔力を感じた。それがあなたを動かしている原動力か」
つまりは、それを全て消し飛ばすレベルの攻撃でないと倒せない。
いくら斬りつけても、叩いても、刺し貫いても、グリモアの魔力を少し散らすだけで倒すに至らない。
「……さすが、ひと目で気づくとは」
レオナルドが剣を構える。
まだ闘いを続行する気だ。
「普通の殺し方じゃ倒せないか……厄介だな」
「ふふふ……それはこちらのセリフでもあります」
クロの頬傷が、黒い霧で覆われてすぐに修復されたのを見たレオナルドがそう言った。
「…………」
不死者と死者。
互いに尋常の生物ではない。
「アルトゥール大公は、我々のことを『生ける屍』と呼びました」
「我々? そのリビングデッドは他にもいるのか」
「……ッ!」
クロの指摘に、レオナルドが苦い顔をした。
「なるほど……油断ならない人だ。些細な会話でも情報を読み取りますか。いや、今のは私の語りが悪かったのか……ふむ、剣術だけを考えて過ごした故、如何せん言葉の機微は難しい」
マトモな殺し方では殺せないリビングデッド。
やはり詩編。
想像を超えた、危険な代物だ。
「あなたのような蘇りの死者を増やして、アルトゥールは何をする気だ?」
「…………」
レオナルドは無言を貫く。
アルトゥールは『殺戮の軍神』という戦名のとおり、兵を使うのが得意な英雄だ。
マトモに死なない蘇りの死者。
どれぐらいの規模なのかは分からないが、複数人を率いている。
死者を蘇らせる能力。
レリティア中を混乱の渦に巻き込むだろう。
それがどれほど危険な事なのか、分からないアルトゥールじゃない。
「あなたはいつ、蘇ったんだ。最近ってワケじゃないだろ?」
話題を変えた。
とにかく揺さぶる。
何としてでも情報を得たい。
「さて……いかがでしょうか」
「それぐらいは答えてくれてもいいんじゃないか」
彼の中で、自分が蘇っていることへの動揺などが微塵も見られない。
それはつまり、時間が経って慣れたのだとクロは推測した。
死から復活するという異常事態。
ここまで慣れているとなると、数ヶ月というわけではあるまい。
「ふむ……そうですね。それぐらいなら、いいでしょう。私は、あのフリードリヒとの決闘で自刃した後、すぐ蘇らされました」
十数年前からすでに、レオナルドはリビングデッドだったらしい。
同時に、アルトゥールがずっと以前からグリモア詩編を持っていたことも意味している。
「私は死体からそのまま蘇ったおかげで、こうして生前と変わりない意思を持っています。なので、少々ワガママを言わせていただいたのです」
「……ワガママ?」
気になることを言ったが、今はあえてスルーした。
「一度でいいから――あなたと闘いたい」
レオナルドは真っ直ぐ、まるで夢見る少年のような瞳をしていた。
「アルトゥール大公は、最初は反対されておりましたが、ようやく叶いました。三ヶ月もこの村で待ち続けた甲斐がありました」
レオナルドが自分と闘うことを反対した。
つまり、レオナルドを自分の手元に置いておきたい、あるいはレオナルドを失いたくはないという思考が見えてくる。
そのことから、アルトゥールは戦力が欲しいと思っていると推測される。
戦力を欲する理由は何か。
闘うためだ。
レオナルドほどの実力者はそうそういない。
彼はグラデア王国の騎士団で比べるなら、副団長クラスの力を持っている。
リビングデッドだということを加味するなら、もしかすると団長……英雄クラスの力があるかもしれない。
そして、反対はしたが、結果的にレオナルドがここに来ている事実。
つまりそれは、彼と同じか、彼よりも強いリビングデッドが他にも複数人いると考えられる。
それほどの戦力を有するアルトゥール。
その彼が、一体何と闘う気なのか。
「……ジズが連れて来たと言ったな。あいつの口添えか」
「ええ。あの道化に借りが出来てしまったのは些か不満ですが……」
嫌な予感がする。
ジズが『宮廷道化』としてアルトゥールの傍にいたのは知っている。
知っていて、手が出せなかった。
アルトゥールはデルトリア伯とは違い、まったく尻尾を出さなかった。
デルトリア伯がやっていたように人類三大汚点のひとつ『奴隷制度』を自分の城で復活させていたでもなく、魔物と結託していたわけでもなく、罪の無い人々を理不尽に殺していたわけでもない。
アルトゥールは表面上、グラデア王国のために動くマトモな英雄だった。
付け入る隙が無かったのだ。
デルトリア伯の時のように、決定的な大義が無かった。
他国に所属する自分がグラデア王国の英雄に手を出してしまったら、最悪、戦争が起こる。
戦争という大きなうねりは中々止められるものじゃない。
何の罪も無い人々が戦いに命を散らしてしまうことになる。
レオナルドがこの村に来た三ヶ月前というと、過去の自分やジズがグレアロス砦で予備兵として働き始めた頃だ。
その頃から既にジズは準備をしていたのだ。
間違いなく、デルトリア伯やアルトゥールに詩編を渡したのはジズだ。
ジズが関わっている以上、とんでもないコトが起きるのは間違いない。
デルトリア伯が起こしたグレアロス砦防衛戦ですら、前哨戦にすぎない可能性すらある。
「ふふ。やはりあなたもあの道化には手を焼いているご様子」
「…………」
どうやら顔に出てしまっていたようだ。
ジズのことになると、冷静に徹することが出来ない自分がいる。
「大変でしょう。同情しますよ。
アレと二千年前からずっと闘い続けているあなたに……」
レオナルドはそこで、ふぅ、と息をつく。
苦虫を噛みつぶしたような表情で、言った。
「……やはり止めましょう。アレの話は気分が悪い」
どうやらジズはレオナルドに相当嫌われているようだ。
「今はそう、かつてあなたに憧れたひとりの剣士として……あなたと闘いたい」
「……狙いは俺だけなのか?」
「ええ。ですが、あなたと一緒にいる者も皆殺しにするという約束を、アルトゥール大公としましたので」
レオナルドは臆面も無く言った。
デオレッサはおろか、村にいるエリクシア達をも殺すつもりだ。
他にも刺客がいる可能性も考えたが、ここから村は比較的近いうえ、何よりエーデルがいる。
危険があれば彼女が風の魔法で、それと分かる知らせを打つことが出来る。
「…………」
このままレオナルドを倒さなければ彼女達に危険が迫ることは間違いない。
そうはいかないと、クロが二本の斧を構えた。
エルドアールヴとして、本気で闘う戦闘態勢だ。
それを見て、レオナルドが動く。
「――『流るる水は石穿ち大地を削る。死出のせせらぎの詩を聞け』――」
レオナルドが戦技の詠唱を始めた。
戦闘中の戦技は基本、無詠唱で行われる。
魔法の詠唱と同じく、大きな隙になるからだ。
そのため、詠唱――エーテルを練り上げる工程を飛ばし、威力を大幅に下げて放つのが通例だ。
しかし、レオナルドはあえて無防備に詠唱を行っている。
つまりは、誘っているのだ。
戦技での対決を。
「――『水手折るは自然への反逆。偉大なりし無名は川傍で黄昏れる』――」
意図を理解し、クロも戦技の詠唱を始める。
心を燃やすようにエーテルを練り上げて、体の周囲に強く纏う。
レオナルドがその応対に満足したような笑みを見せ、
「戦技『刺鉄』――」
真っ直ぐ突っ込んで来る。
腕いっぱいに剣を引き、その勢いで一気に突く気だ。
もはやそれは単純な刺突ではない。
鉄すら斬る『斬鉄』に並ぶ、鉄すら穿つ『刺鉄』の戦技。
「――奥義『流水』ッ!」
ここに至るは剣の極地。
一突きで千の壁を突き破るとまで謳われた剣士の妙技。
かつて『流水』の使い手が走った跡は、魔物の死骸が一直線の道になったという伝説がある。
これこそが刺突の極上。
あらゆる物を突き崩し貫き通す、数多の剣士の夢の業。
されどエルドアールヴ。
『剣豪』レオナルド・オルグレン渾身の『流水』を真っ向から受けて立つ。
「――戦技『止水』」
これこそは、無名の男が人生を懸けて編み出した自然への反逆。
戦技『刺鉄』のように誰もが知る業ではなく、使い手は今やクロ・クロイツァー唯独り。
故に派生の業はなく、奥義もなし。
ほんの僅かなミスも許されない、デメリットの方が遙かに大きい技だ。
戦闘にはまったく使い道がない戦技。
しかして、エルドアールヴが使うとなると話は別。
これ以上ない機を逃さず、刹那の狂いが死を招くこれは、不死だからこそ出来る離れ業。
尋常ならざる永き人生の経験からくる絶大な戦闘の勘。
既知の未来を歩み続けた彼だからこそ出来る異常予測。
あらゆる未来の可能性を見定めてきた時空の異端は、敵の攻撃予測をほぼ完璧に近いレベルで的確に察する。
不死の慧眼からなる『止水』は絶対の防御となりて、既知の戦技を見事に受け止める。
「く……ッ」
手に痺れが出るほどの威力だった。
大戦斧の腹で受けたが、戦技『流水』の衝撃の全ては捌けなかったようだ。
「ハッ、ハハッ!」
レオナルドが笑う。
楽しくて楽しくて仕方がないといった様子。
自分の戦技が完璧に受け止められて、それでも彼は嬉しそうだった。
「瞬時に私の戦技を見抜く慧眼! 一瞬の躊躇いもなく受ける度胸! 不死とはいえ生半なことではないはず。戦技『流水』を真っ向から受け止められたのは初めての経験です! やはりあなたは私が憧れた英雄そのものですッ!」
続けて剣撃の連発を放つレオナルド。
このひとつひとつが怖ろしく速く、巧く、重い。
「……ッ」
剣撃を受けながら、視界の隅でデオレッサの姿を確認する。
今守るべきは彼女だ。
あの性格なら余計なマネをしそうなものだったが、意外とおとなしくしてくれているので助かる。
「その武器も、ただの鉄ではないようですね? 私の『刺鉄』で貫けないのなら、おそらくは魔力を組み込まれた呪われた武器の類いでしょうか!」
「失礼なことを言うな」
レオナルドの剣撃を全て受けきっているクロ。
まるで雨風のような剣撃だ。
戦技ではないとはいえ、これを捌き切るのは中々に至難だった。
「このふたつの武器は、ヒュームが設計して、ファーリーが素材を集めて、ドワーフが形を打って、エルフが魔力を込めた、レリティア四大種族の『絆』だ」
千年前、エストヴァイエッタとの闘いで半月斧を失くした。
それを知った当時のレリティアの人々が技術と想いの粋を集めて作り上げてくれた傑作の武器がこの『大戦斧』と『斧槍』と『鎖』なのだ。
それまで仲違いの多かった四大種族がようやく想いを繋げた結晶なのだ。
「この『人々の絆』が、そう簡単に崩されてたまるものか」
ギィンと、思い切り武器を振り抜く。
レオナルドはそれを剣で受け、たまらず後方へ跳んだ。
「なるほど……その武器の重みは、人々があなたに願う希望や期待ですか。人の身で持つには、あまりにも重そうです」
「…………」
「ふふ……呪われた武器と言ったこと、撤回しましょう。
申し訳ない」
レオナルドが頭を下げた。
彼がこちらから目を離したのは好機だったが、クロは動かなかった。
今この瞬間に隙を突くのはさすがに人でなしが過ぎる。
「…………」
レオナルド・オルグレンは強い。
戦技もさることながら、先ほど彼が見せた剣速の速さは凄まじいものだった。
異常と言ってもいい。
腕力や体術の諸々はクロの方が上だが、この剣速の一点だけが、遙かにレオナルドの方が速い。
剣速は剣士の才であり、不断の努力の証明でもある。
これほどの剣速なら、『斬空』を放つことも可能なハズだ。
その威力を見るに、『刺鉄』の他にも『斬鉄』も出来るに違いない。
この異常な剣速というただ一点だけで、『戦技』をいくつも扱えるレベルだ。
『剣豪』という戦名は伊達ではない。
「レオナルド、あなたは本当に……デルトリア伯に負けたのか?」
そう思わざるを得ない。
それほどに強いのだ。
このレオナルド・オルグレンという剣士は。
「ええ、負けました。完膚なきまでに、屈辱的なほどに」
「……『戦技』は使ったのか?」
クロが聞く。
どうしても彼がデルトリア伯に負けたとは思えない。
「いいえ。フリードリヒは、仮とはいえ我が主の御子息でした。決闘とはいえ戦技を使うなど、出来るわけがありません」
デルトリア伯の父親であるアルトゥール。
彼に雇われて、彼の騎士団の面々へ剣の師事をしていたのがレオナルドだ。
「それに、嫌だったのです」
「……嫌だった?」
「フリードリヒは、私の剣技を受けるだけで自分の物にしていきました。難度の高い技術も難なく盗んでいくのです」
デルトリア伯は天性の才能を持っており、その成長速度はとんでもないものだった。
闘いの中で自分の剣技を盗まれていく。
それは剣士にとって、どれほど気味の悪い存在だったか。
「彼は『戦技』すら盗む才がありました。それは何が何でも防ぎたかった。剣技を盗まれる事ですら身を引き裂かれるほどの屈辱。盗まれるのが『戦技』なら、私は悔やんでも悔やみきれない……そう思ったのです」
だからレオナルドは戦技を使わなかった。
その結果、負けた。
「……なら、実力を出していないのと同じことだ。なぜあなたは……」
「自刃したのか、でしょうか?」
クロが頷く。
「決闘が『戦技』無しで挑んだものだったとしても、フリードリヒに剣の勝負で負けてしまったのは事実。私は自分自身を、許せなかったのです。
私の剣は、私の人生の全てだったが故に」
悔しさと屈辱の極み。
誇りを穢された苦しみ。
それは時に命よりも重くなる。
彼にとっては剣技の全てが誇りあるもので、だからこそ負けたことが許せなかったのだ。
「ですが、あなたは違う。あなたは真っ直ぐだ。良くも悪くも愚直に過ぎる。今、あなたと剣を交えてハッキリと分かりました。
あなたと闘うのは、真に、心地良い」
「……褒められてる気はしないな」
レオナルドが「ふふ」と笑う。
「エルドアールヴ。あなたの全盛期はいつですか?」
「……突然何だ?」
予想外の質問に、少し戸惑う。
レオナルドの言う全盛とは強さのことだ。
人生の中で、最も強い時期。
「私の全盛期は、今なのです。若かりし頃でも、死んだ時でもなく、私の全盛は、死後でした」
「…………」
「蘇った後、アルトゥール大公の元、城の地下で鍛錬を重ねました。そしてようやく完成したのです。我が夢、我が剣の行き着く果ての『戦技』が」
レオナルドは剣を優しく撫でた。
剣腹から切っ先まで、ゆっくりと。
「死後に何かを成すことが出来るとは思いもしませんでしたが、ようやくお披露目が出来ます」
レオナルドのその言葉に、デオレッサが僅かに反応したのを背後に感じた。
死後。
それはまさしく今のデオレッサも同じ状況だ。
悪魔の写本に囚われたデオレッサと、グリモア詩編で蘇ったレオナルド・オルグレン。
奇しくも死者という類似点がある以上、何らかの共感をよんでも不思議ではない。
「我が剣の果て、馳走いたしましょう。ご賞味あれ」
その瞳には濁りの色は一切無い。
単純な、剣士としての誇りと絶対の自信が見えた。
「来い。受けて立つ」
ならば全力で立ち向かうのが戦士の流儀。
いつかの過去、グレアロス騎士団で培った心意気は、今もクロの中に息づいている。
「ふふ……有り難き」
これは剣に生涯を懸けたひとりの男の晴れ舞台。
屈辱の死を超えて、彼は現世に舞い戻った。
その意思は唯ひとつの目的を成し遂げるため。
いつか幼少の日に焦がれた英雄譚。
それを己が剣にて打ち破る。
エルドアールヴ伝説を打ち倒すべく、剣豪レオナルド・オルグレンは剣を取る。
「いざ、参ります――」
レオナルドが跳び上がる。
高く、高く、地上より遙か高く舞い上がる。
己が生涯の全てを懸けて。
「――勝負ッ!!」




