1 積もる絶望は何処までも。魂壊の苦痛は何時までも。
長い、とても長い時が経った。
痛く苦しい日々。
永遠と思うほどの永い年月。
――待ってくれ――
そう思う度に、胸が張り裂けそうになる。
闘いの痛みなんて我慢すればいい。
自分が傷つくなんてどうだっていい。
ただ、これだけはどうしても慣れなかった。
――いかないでくれ――
不死者は願う。
心の底で叫ぶ。
この弱さはもう、どうしようもないものだった。
涙は涸れ果ててしまうと思っていたけれど、何時になって止まることはない。
十年、百年、千年と。
どれほどの時間が過ぎても、この辛さは耐えられない。
いや、むしろ時を過ごすごとに辛苦は更に増していく。
――俺を置いていかないで――
親しい人は死んでいく。
共に笑い合った友人。
腕を競い合った人々。
親しくなかった人も死んでいく。
慕ってくれていた人も死んでいく。
人は、いつか必ず死んでいく。
――いやだ、もう、いやだ――
たった独り。
不死者だけが生き残る。
何年も、何十年も、何百年も。
およそ二千年。
それだけの時間、去っていく人々を見送ってきた。
時間の流れはあまりにも無情で。
人は必ず死んでしまうということを、嫌というほど見てきた。
――誰か、お願いだ――
ある者は事故で。
ある者は魔物に。
ある者は病気で。
ある者は寿命で。
ある者は知らぬ間に。
助けた人。
助けられなかった人。
この手で殺してしまった人も。
自分のために泣いてくれた人も。
誰もが例外なく死んでいく。
不死者だけが、たった独り、生きてしまう。
――俺を、殺してくれ――
それでも、生きなければならない。
二千年後に来る、元の刻に辿り着く。
約束を果たさなければならない。
あの少女を守ると誓ったのだから。
――誰か、助けてくれ――
だからこの叫びは誰にも聞かせず、見せず。
独り、心の奥底にしまい込む。
それが、自分の何かを壊しているのだとしても。
その事から目を逸らして。
強く、強く在ろうとし続ける。
『最古の英雄』エルドアールヴ。
不死者の名はクロ・クロイツァー。
いつか来る破滅の道を、少年は食い縛りながら。
今も――歩いている。




