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エリクシアオブライフ ~不死の災いと悪魔の写本~  作者: ゆきわ
第二章『巨悪鳴動』編

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1 積もる絶望は何処までも。魂壊の苦痛は何時までも。


 長い、とても長い時が経った。

 痛く苦しい日々。

 永遠と思うほどの永い年月。




――待ってくれ――




 そう思う度に、胸が張り裂けそうになる。

 闘いの痛みなんて我慢すればいい。

 自分が傷つくなんてどうだっていい。

 ただ、これだけはどうしても慣れなかった。




――いかないでくれ――




 不死者は願う。

 心の底で叫ぶ。

 この弱さはもう、どうしようもないものだった。

 涙は涸れ果ててしまうと思っていたけれど、何時になって止まることはない。

 十年、百年、千年と。

 どれほどの時間が過ぎても、この辛さは耐えられない。

 いや、むしろ時を過ごすごとに辛苦は更に増していく。




――俺を置いていかないで――




 親しい人は死んでいく。

 共に笑い合った友人。

 腕を競い合った人々。

 親しくなかった人も死んでいく。

 慕ってくれていた人も死んでいく。

 人は、いつか必ず死んでいく。




――いやだ、もう、いやだ――




 たった独り。

 不死者だけが生き残る。

 何年も、何十年も、何百年も。

 およそ二千年。

 それだけの時間、去っていく人々を見送ってきた。

 時間の流れはあまりにも無情で。

 人は必ず死んでしまうということを、嫌というほど見てきた。




――誰か、お願いだ――




 ある者は事故で。

 ある者は魔物に。

 ある者は病気で。

 ある者は寿命で。

 ある者は知らぬ間に。

 助けた人。

 助けられなかった人。

 この手で殺してしまった人も。

 自分のために泣いてくれた人も。

 誰もが例外なく死んでいく。

 不死者だけが、たった独り、生きてしまう。




――俺を、殺してくれ――




 それでも、生きなければならない。

 二千年後に来る、元の刻に辿り着く。

 約束を果たさなければならない。

 あの少女を守ると誓ったのだから。




――誰か、助けてくれ――




 だからこの叫びは誰にも聞かせず、見せず。

 独り、心の奥底にしまい込む。

 それが、自分の何かを壊しているのだとしても。

 その事から目を逸らして。

 強く、強く在ろうとし続ける。




『最古の英雄』エルドアールヴ。

 不死者の名はクロ・クロイツァー。

 いつか来る破滅の道を、少年は食い縛りながら。

 今も――歩いている。





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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで読んで 出だしがスローペースなのでどうなるのかなぁと思いつつ読んできましたがすごく面白かった もっと評価されてもいいと思うんだけどなぁ…(´・ω・`)
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