30 ――大悪鳴動――
「ああ、そうそう。アル宛てにぼくの荷物届いてない?」
大鎌を肩にかけた格好で、ジズが言った。
椅子に腰掛けたままのアルトゥールは、紅茶をカップに注ぎながら答えた。
「アレのことか?」
くいっと親指で地面に置いてある布袋を差したアルトゥール。
「ああ、ああ! これこれ! 良かった、ちゃんと届いてたんだね」
「二日ほど前にな」
「中身は見てくれた?」
ジズの言葉にアルトゥールが「ふっ」と笑う。
「お前が寄こした荷物など、不吉過ぎて見る気もしない。大鎌もだが、ここに持ち込むには苦労したぞ。何しろお前のせいで、私は今軟禁状態なのだからな」
「え、なんで?」
「フリードリヒが謀反を起こした、そして『奴隷制度』を自分の城で復活させるという禁忌を犯した。そのせいで私もあらぬ疑いを持たれている」
自分の息子であるデルトリア伯が大変なことを起こした。
彼をデルトリア辺境の伯爵に指名したのも、『大公爵』であるアルトゥールだ。
当然、疑いの目はアルトゥールに向かうこととなる。
あまりにも事が大きいため、尋問もその分長くなる。そのため、アルトゥールはこの塔の牢に幽閉されている。
「お前の仕業だろう?」
「な、なんでそう思ったのかな」
焦るジズに対して、
紅茶をゆっくり飲み干して、アルトゥールが言う。
「魔境アトラリアの魔物と伝手があるなど、お前しか考えられない」
デルトリア伯が特級の魔物と組んでグレアロス砦を襲ったことは王都にも伝わっている。
自分の息子がそこまでの事をしでかした。
一族郎党処刑されてもおかしくないほどの大罪だ。
しかし、アルトゥールはグラデア王国が誇る『四大英雄』のひとりだ。
彼の存在はグラデア王国にとって、あまりにも大きい。
幽閉と言ってもそこまで自由が無いわけではなく、王城を行き来する自由はあるし、今のように優雅に紅茶を飲むことも出来る。
アルトゥールがこの塔で大人しくしているのは、自身の潔白を証明するためだ。
追及されるままに真実を答える。
堂々とした受け答えで信頼を取り戻すためだった。
今回の件に関しては、事実アルトゥールは無実であった。
何しろ、ジズとデルトリア伯が組んで何かをしているなど知らなかったのだ。
「突然グレアロス騎士団に入りたいと言ったお前を、試験官に金を握らせて無理やり合格させてやった。グレアロス砦に行くお前の口添えで、レオナルドを一緒に行かせた」
アルトゥールが「ハァ」とため息をつく。
「ジズ、お前のワガママを聞いた結果がコレだ」
結果だけ言えば、アルトゥールは王国に疑われ、こうして塔でおとなしくしているしかなくなった。
元はといえば、全てジズのせいであることは間違いない。
「ゲハハハ、ごめんよぉ」
「謝っているようには見えんが、お前にマトモな感性を期待しても無意味なのは知っている。長い付き合いだからな」
ニヤリと笑い、アルトゥールが言う。
「話してもらおうか。お前が今まで何をやっていたのか」
「分かったよ、長くなるから座っていい? 椅子は無い?」
「地べたで十分だろう? お前に椅子は贅沢すぎる」
言われるままにジズはその場に座り、これまでの事を話し出した。
かいつまむと、
アルトゥールに内緒で隠し持っていったグリモア詩編をデルトリア伯にプレゼントした。
デルトリア伯の目的を助けるため、『悪魔の写本』を狙うことを提案した。
同じく、グリモアに興味を示していた『最古の六体』の一柱であるエストヴァイエッタに情報を流し、協力を促した。
紆余曲折を経て、ヴォゼとウートベルガが人境レリティアに向かうことになった。
そうしてデルトリア伯とウートベルガが組むことになったことを話した。
ちなみに、ヴォゼは好き勝手にレリティアへ向かったため、約束の場所に来たのはウートベルガだけだった。そのため、ヴォゼはジズと面識が無かった。
偶然にもヴォゼが悪魔を先に見つけたため、ジズにとっては色々と面倒なことになっていた。
「そのウートベルガとやらの目的は?」
「多分、結界の破壊だったんだろうね」
「『最古の六体』をアトラリア『禁域』から出させない魔法の結界か」
うんうん、とジズが頷いた。
「アレの要は聖国『アルア』にあるからね。フリードリヒ坊ちゃんと組んで、グラデア王国を制圧してから、聖国アルアと戦争させて潰す予定だったんじゃないかな」
そのウートベルガの目的が闘いの途中で、もうひとつの『大命』である『反逆の翼』……つまりエルドアールヴの正体を知ったことで、エストヴァイエッタにそれを知らせることに変わったのはジズも知らない事実である。
そしてグレアロス砦防衛戦はエルドアールヴの活躍により終結した。
ヴォゼをそのままクロにけしかける予定だったが、ヴォゼはクロと全力で勝負するためアトラリアに帰ってしまった。
ジズの計画を散々にかき回したのは図らずもヴォゼだったということだ。
「レオナルドはどうなった?」
剣豪レオナルド・オルグレン。
彼の存在は中々貴重で、アルトゥールにとっては失いたくない戦力だった。
「死んだよ。いや、もう死んでたから死んだっていうのはおかしいかな?」
「……お前……」
アルトゥールの持つカップが、ビキッと音を立ててヒビ割れた。
「ま、まぁ待ってよ。怒らないで。
ちゃんと『次』の布石になってるからさ!」
「次? まだ何か企んでいるのか」
「ゲハハハ……『次』が本番じゃないか、アル。フリードリヒ坊ちゃんのアレコレはただの思いつき。ぼくは最初から、『次』のために動いてたんだから」
「グレアロス砦に用があると言っていた件か」
「そういうこと」
ジズがニタリと嗤う。
「でもまさか、騎士団の試験でクロと出くわすなんて思わなかったなぁ」
「私の息子がエルドアールヴ誕生のカギとなってしまったのは奇縁と言うべきか、悪縁と言うべきか……微妙なところだな」
「でもおかげで、エルドアールヴになる前のクロとトモダチになれたから、ぼくは良かったかな!」
「……なるほど、そのせいで三ヶ月も音沙汰無しだったワケだな。私がお前を待っている間、お前は随分と楽しんだということか」
「お、怒らないでよ。しょうがないでしょ、ぼくも本当に驚いたんだから」
「……それで? その荷物が、グレアロス砦に行った理由か?」
アルトゥールは、ジズの持つ荷物に目をやった。
ジズは「うん」と頷いて、その荷物をほどく。
「これが、対エルドアールヴの『切り札』だよ」
そこには、赤い布に包まれた、小さな刃の欠片が入っていた。
ボロボロで錆びている。
武器には使えないのは見て分かるが、ジズはこれこそがエルドアールヴ打倒の切り札だと言う。
「……これが、か?」
「アルの目的には必ずクロが立ちはだかる。間違いなく闘いになるよね。クロは強い、とんでもなく。それだけじゃなく『不死』だ。どうしようもない」
「……それを、お前が言うか?」
ジズは転生して何度でも生まれ変わる事実上の不死身である。
人のことをどうこう言える立場ではない。
むしろジズの方がその特質上、どうしようもなさでは上だ。
「さっき闘って分かったけど、正直なところアルとぼくが組んで闘ってもクロには敵わない。それぐらい、今のクロは強い」
「ふむ……それほどのものなのか、本気のエルドアールヴは」
「うーん……今までのクロならどうにかなっただろうけど、『今』のクロはおかしい。『死力』で強くなったとか、そういうんじゃなくて、何かスゴい強いんだよ。今までぼくは何回もクロと闘ったけど、一回も致命傷を与えられなかったのは初めてなんだ。何でかは分からないけど、おかしいぐらいに強いんだ」
「……ふむ」
アルトゥールは少し考えて、
「悪魔を守るため……実力以上のものを発揮している、か」
納得した様子でそう言った。
ジズの話を聞くだけで、そこまで察するアルトゥール。
彼は『英雄』としての実力だけではなく、少ない情報で真実へと到達する頭脳も持ち合わせている文武両道の傑物である。
「ん? なにそれ」
「いや、お前には一生分からないだろう。『英雄』だからこそ分かる心得もある、ということだ」
「んん~?」
ジズは首を大きく傾げ、やり過ぎて頭が地面につく。
「まぁいい。それで、この刃の欠片をどうするつもりだ。随分と古い物のようだが」
「やだなぁ、分かってるクセに」
「私を言いように使うのはお前ぐらいのものだぞ、ジズ」
嫌味を言って、アルトゥールが椅子から立ち上がった。
ジズから赤い布ごと刃の破片を受け取る。
「ああ、ああ。その布は君へのプレゼントだよ」
「これは……」
その赤い布はアルトゥールには見覚えがあった。
「フリードリヒ坊ちゃんのマントの切れ端だよ。死体の方はクロが消し飛ばしちゃったからさぁ、頑張って探したんだよ」
ジズには人の心が無い。
だからこうして、父親に対して面白おかしく息子の死に様を伝えるのだ。
「なるほど。これも使えそうだな」
しかし、アルトゥールもまた、ジズほどではないが人でなしだった。
「蘇れ――フリードリヒ」
赤い布を手に持ち、アルトゥールが力を込める。
それは普通のエーテルではなく、黒い霧。
尋常のものではなく、異端の力。
グリモア詩編・第二災厄、無念の業『屍術』。
黒い霧がデルトリア伯のマントの切れ端を包み込む。
凄まじい異形の重圧が満ち満ちる。
「ゲハハハハ」
ジズはそれを見て嗤う。
「やはり遺品があると楽だな」
アルトゥールが感情の無い声で言った。
恐るべきことが起こっている。
これは生命の死に対する冒涜である。
死んだ者を蘇らせるネクロマンサーの力。
「ア……ァアア……」
黒い霧の中から、苦痛に満ちた、蠢くような声が響く。
やがて霧が晴れ、その全容が明らかになる。
「おやおや?」
ジズが興味深そうに覗き込む。
そこには、
「ア……アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
赤いモノがいた。
正確には、皮の無い人間だ。
筋肉や神経がむき出しで、全身が血の赤に染まっている。
体に黒い霧が纏わり付いていて、異様な怪物のようにも見える。
苦しげに訴え狂い叫ぶ彼こそが、デルトリア伯のなれの果て。
グリモア詩編で死から蘇ったフリードリヒ・クラウゼヴィッツである。
「ゲハハハハッ!」
その悲惨な姿を見て、ジズが嗤う。
「酷いやアル! どうしてこんなことをするんだい!」
嗤いながら楽しげに聞くジズは、それこそ悪魔のようだ。
「半端に蘇らせた方が使いやすいだろう。完全に復活させて、万が一にも自我を取り戻し、下手な野心を持たれても困るからな」
外道である。
実の息子であるデルトリア伯を、わざと中途半端に復活させたのだ。
「これ、ぼくが使ってもいい?」
「構わん。そのために遺品を持ってきたのだろう?」
「ゲハハ、お見通しだねぇ」
「ふっ」
アルトゥールは冷徹である。
デルトリア伯のことなど歯牙にもかけず、ただ使うための道具だと考えている。
息子への情など、心の片隅にも存在しない。
「それじゃ、遠慮なく」
そしてジズは、手の平をデルトリア伯に向けた。
瞬間、土の魔法を発動させる。
「アアアアアアアアアアアアッ!! ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」
涎や血を撒き散らし、暴れるデルトリア伯。
その彼を、魔法で作った鉄の鎖で拘束した。
首や胴体、腕や足に体中に何重にも撒かれたそれは、痛みを訴えるデルトリア伯の動きを完全に制御している。
「ん? 自我が無い分、筋力が強まってるね。これはけっこう面白いことに使えそうだ」
普通、人は体を痛めないように抑制制限がある。
通常は5分の1ほどしか出力は出ないが、今のデルトリア伯にはそのリミッターが無い。
筋肉の使う力を制限する自我すら無いのだから。
今のデルトリア伯は、ただ痛みに苦しみ、無意識に暴れる怪物だ。
「リビングデッドは普通そういう使い方をする。レオナルドが特例だったのだ。奴は死体があったうえ、無念の塊だったからな」
『剣豪』レオナルド・オルグレンは、ネクロマンサーにとって最高級の素材だったということだ。
おまけにレオナルドは忠誠心が強く、本人に良心があろうが、アルトゥールに付き従う最高の部下だった。
それをジズに使い潰されたアルトゥールの心境は穏やかではない。
「ご、ごめんって言ってるじゃないか」
「……それで、次はこの欠片の持ち主を復活させるわけだな」
眉間に皺を寄せたまま、アルトゥールが言った。
ジズはデルトリア伯の手綱を握りながら、嗤った。
「そう、それを手に入れるためにグレアロス砦に行ったんだよ」
「エルドアールヴの縁者か」
「何もかもお見通しだね」
「強い力は感じないが、本当にこれが切り札なのか?」
疑いの目をジズに向けるアルトゥール。
しかしジズは自信満々に答えた。
「クロは強い。ぼく達じゃ、とてもじゃないけど敵わない」
「実力行使では敵わない。ならば、他の方法か」
ジズの言いたいことを察したアルトゥール。
ニヤリとジズが嗤った。
「そう、心を攻めればいいんだよ。クロは精神も強いけど、それでも、心折れない人間なんて存在しない。そしてぼくは、その方法をよく知っている」
ジズとアルトゥール。
恐るべき外道がふたり。
正攻法ではない彼らは、あらゆる手を使う。
クロにとっては、あまりにも強大な敵である。
しばらくして、ジズとアルトゥールは塔から外に出ていた。
王城の外へと続く廊下をふたりで歩いている。
「その魔法は便利だな」
アルトゥールが後ろを歩くジズに言った。
「特異空間? 便利だよねぇ」
自分の体に特殊な魔法空間を作り出し、物を出し入れできる空間魔法である。
闇属性に入るもので、『影の収納』と呼ばれる魔法だ。
ジズはこれを使い、大鎌とデルトリア伯などを収納した。
元々は地面に空いた穴や、洞窟のくぼみ、そういうものに入ってしまい、姿が見えなくなった生物に対して、他の者が抱いた感情の概念が、魔法という形になった概念現象である。
自然現象そのものではないが、人や動物が抱く特定の感情が結集し、概念現象となり、星の記憶として残ることが稀にある。
この特異空間の魔法は、そういう概念を元にして生まれている。
ある意味で、魔法の例外だ。
「それも『転生特権』で取ったものか?」
「うん。さっき取ってきた」
ナルトーガの荒野でクロに殺されて、『命の海』に還ったジズは、そこでこの魔法を取って『転生』して今に至る。
「思い通りに狙った力が取れないから、ちょっと不便だけどね。でも今回みたいに、たまに便利な力がもらえるから、ぼくは嬉しいけどね」
「便利なだけで何の力も無いその魔法が欲しかったと?」
「うん、ずっと前から欲しかったんだ、コレ」
「……つくづく思うが、強さに興味が無いお前には過ぎた『詩編』だな」
歩きながらそんな話をしていたところで、
「どこに行く気だ、アルトゥール卿」
道の先で待ち構えている人物がいた。
キッチリとした服装をしており、軽装ながら堅い印象を受ける青年のような男性だ。
背筋がピンと伸び、姿勢が良く、気品ある貴族といった風貌だ。
黄金の髪はさらりとしており、まさしく絵に描いた王子のような美男子。
しかし、この人物は20代前半の青年のように見えるが、実際は30後半の壮年である。
「こんなところで会うとは奇遇だな、アレクサンダー卿」
その人物こそ、グラデア王国方位騎士団・西の団長。
『英雄』アレクサンダー・アルグリロットである。
シャルラッハの実の父であり、『雷光使い』であり、そしてアルグリロット家の現当主である。
「我が城に帰るのだが、何か問題があるのか?」
「帰る? 卿は尋問の途中だろう? それに我々『団長』は王都を守る使命がある。気ままに行動するには立場が高すぎるんじゃないか?」
「王国議会のヒマ潰しに付き合う義理は無い。存分に付き合ってやったではないか。我々の使命もだが、卿ともうひとりがいるなら王都を守るには十分だろう」
「随分と勝手な言い分だな」
「ベルドレッド卿も無理やりにグレアロス砦に行っただろう。私もそうすることにしたのだよ」
「ベルドレッド卿は例外だろう。今回のことは特に」
「ならば私も、今回は例外にしてくれ」
その言葉に、アレクサンダーはその碧眼を鋭くした。
アルトゥールもまた、眉根を寄せて闘気を溢れ出させた。
「この人、ぼくの知ってるコに似てるなぁ」
英雄の闘気渦巻くこの場で、場違いな男がいる。
「……誰だ、キサマは」
「こんにちは! ぼくはジズっていうんだ」
両手を広げて挨拶するジズ。
その様子に、アレクサンダーは無言で警戒を強めた。
「あっ、思い出した! シャルラッハ……だっけ? に似てるんだ。もしかして、父親かな? ねぇねぇ、君も『雷光』を使うの? あのコの『雷光』はたいしたことなかったケド、君はどうかな?」
瞬間、アレクサンダーが動く。
「いっ!?」
ジズが驚きの声を出す。
突如視界から消えて、ジズの真横に移動したアレクサンダーは、腰に携えていた剣を抜き、ジズの胸を貫いたのだ。
急所を絶妙に外しているのはワザとだろう。
「――娘に、何をした」
アレクサンダーがジズごと剣を持ち上げる。
足が地面から浮いたジズは、今起こった出来事を頭の中で反芻する。
「…………ッ」
動きが見えなかった。
『雷光』だ。
シャルラッハと同じ『雷光』。
しかし速すぎる。いや、違う。
速度で言えばシャルラッハの方が圧倒的に速い。
真っ直ぐ自分の元に向かって来る姿までは見えたが、問題はその後だ。
目の前に接近する寸前で、一瞬にして姿がかき消えた。
アレクサンダーを完全に見失ったのだ。
速さ以外の力。
それがアレクサンダーの英雄たる所以。
ジズでさえ、どうやったのか、その真価が分からない。
「もう一度聞く。
娘に、シャルに何をした」
アレクサンダーの殺気を一身に浴びながら、ジズは嗤う。
そしてジズがその手をアレクサンダーの顔に向ける。
「……ッ!」
しかし、嫌な予感がしたのか、持ち上げていたジズを壁に向けて投げつけた。
「あぎゃッ!?」
壁に叩きつけられたジズに、その剣の切っ先を向けるアレクサンダー。
「返答によっては、殺すぞ」
「……まいったな。強いね、君」
ゆっくりと立ち上がるジズは、頬が裂けそうなほどに口を歪ませ、
邪悪に嗤っていた。




