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014~ティアの定食屋2~

**********

 

 

 

「お帰りなさい、アリス」

 

 店側に入ってきたアイリスを微笑みで迎えるティア。その手には既にパフェが存在しており、アイリスが入ってきたのを確認して"自分の前に"置いた。

 

「ただいま、ティア」

 

 とうぜん、パフェが置かれた場所の椅子に座るアイリス。

 

「お疲れ様。頑張ったアリスにデザートですよ」

 

「ありがとう、ティア。いただきます」

 

 ティアにお礼を言いパフェを食べ始めるアイリスだが、その少し横ではアリサがカウンターに突っ伏している。

 

「皆してハズレって言うことないじゃないですか。確かにティアさんには遥かに敵いませんが、不味くはないでしょう……」

 

「落ち込まないでください、アリサ。私は美味しかったと思いますよ」

 

 突っ伏しているアリサの肩に手を置き慰めの言葉を掛けたパラスだが、その言葉を聞いたアリサは勢いよく顔を上げて言い返す。

 

「元はといえば、あなたが『今はハズレの時間です』と言ったからでしょう!」

 

「美味しくてもハズレ、私はあると思います」

 

 パラスはアリサから顔をそむけつつもそう言った。

 そんなアリサにパフェを食べる手を止めたアリスは優しい言葉をかける。

 

「アリサ、私はあなたの料理も好きよ。安心して上達してね」

 

「アリス~」

 

 涙目でアイリスを見つめるアリサの様子を、店内の人達は微笑ましそうに眺めている。まるで普段通りといわんばかりに。

 

「まあ、誰1人として不味いなんて言ってないだろう」

 

「そうだ。俺なんぞ店で出せる料理すら作れるか怪しいぞ」

 

 アリサの左隣に座る、紺色の髪と金色の目をもつ微笑みを浮かべた青年――ポラリスと、さらに左隣に座る、赤色の髪と金色の瞳をもつやや小柄な青年――アキレアがアリサに告げた。

 

「カグヤよりは上手いから安心しろ」

 

「いい度胸ね、コロナ」

 

 アリサの右隣りに座る、金色の髪と橙色の瞳、そして人族の耳に当たる部分に小さめの獣耳をもつ青年――コロナの言葉に、さらに右隣に座る1人は黒色の髪と金色の目をもつ、コロナとよく似た耳をもった女性――カグヤは笑顔を向けつつ答えた。

 

「ところでアリス、明日はダンジョンへ行かず街で過ごしますよね?」

 

 そんな会話の中、ティアは微笑んだままアイリスに問いかけた。しかしその微笑みは先ほどと異なり、どこか心配そうな様相を含んでいる。

 

「たぶん」

 

「ダンジョンへ行かないと約束してくださいませんか?」

 

「……ティアがそう言うなら。ありがとう」

 

 少し嬉しそうな表情を浮かべて答えたアイリスを見て、ティアは安心したような表情を一瞬だけ浮かべたが、その表情はすぐにいつもの微笑みへと変化した。

 

「約束してくれたお礼に羊羹を出しますね」

 

「いいの!?」

 

「ええ」

 

 ティアは嬉しそうな声をあげたアイリスに答えながらも、すぐ後ろにある大きく白い金属のような箱の前部を開けた。そして冷気漏れるその中から切り分けられ羊羹が盛られた皿を取り出し、アイリスの前に置く。

 

「……アリス、1切れ分けてくれませんか?」

 

「嫌」

 

 美味しそうにパフェを食べているアイリスの横に置かれた羊羹を見て、羨ましそうな表情で問いかけたアリサにアイリスは即答した。

 

「そういえばリアの姿が見えませんが、別の宿なんですか?」

 

「リアはローザちゃんのところですよ」

 

「あ~……まあ、そうなりますね」

 

 ティアの答えに納得した様子でそう言ったアリサ。

 

「"あの"ローザさんですか?」


「おそらくそのローザです。ローザはリアが大好きですからね」

 

 やや驚いた表情で問いかけたパラスに、アリサは優しそうに微笑んで答えた。

 

「私も出遅れなければアリスを迎えたかったです」

 

「アリサ、諦めた方がいい。街に来てすぐに私は捕まった」

 

 残念そうに呟いたアリサに、アイリスは事実を告げた。

 

「ふふ。"運が良かった"です」

 

 微笑むティアを呆れた様子で見つめるアリサ、コロナ、カグヤの3人。

 

「見つけた誰かが迎えないとリアもアリスも危険な安宿に泊まりかねないからな。まあ、ティアさんが見つけなければ2人とも武器を買いに行った先でスターチスに見つかってたか」

 

「そしてスターチスがリアをローザ、アリスをティアさんのところに連れてくると」

 

 アキレアの言葉に、自らの言葉を続けたポラリス。

 

「相当運が良くないと私が迎えるのは無理だったのですね……」

 

「そうだな」

 

 気を落とした様子のアリサはポラリスの言葉を聞いて、さらに気をおとした。

 

「アリサ、塩飴をあげるから元気を出して」

 

「そこは羊羹をくださいよ。まあ、貰いますけど」

 

 アイリスが差し出した塩飴を受け取り、包みから出して口に放り込んだアリサ。そんな様子を眺めつつも料理を食べ進める客達。

 その日、街の端にある定食屋の明かりは夜遅くまで灯っていた。

 

 

 

**********

 きっとあちらとは別のアリサ。

 もしあちら側も見られている方がいましたら、現在難航しているのでもう少しお待ちいただければと思います。


20151218:

 重ねて表記してしまっていた箇所を一部修正しました。

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