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きれいな髪

 俺の村であるグリュヘルは、ラシュータ国の中央にそびえたつフラメ山脈の麓にあった。少し西に行けばタオゼー湖もあり、自然に恵まれていた。酪農が盛んで、俺たち家族は豚を飼って、生計を立てていた。

 フラメ山脈は、燃え上がる炎のような形をしていた。岩肌はむき出しであまり草木は生えていなかった。冬には山頂に雪が積もり、白い炎のようで美しかった。俺は冬のフラメ山脈を見るのが好きだった。タオゼー湖は少し遠かったので、そんな頻繁には行けなかったが、それでも時折、妹や弟、姉たちと一緒に釣りに出かけた。秋のタオゼー湖周辺は木々が赤や黄色に色づき、きれいだった。俺は、自分が生まれたこのグリュヘルが好きだった。

 俺には2人の姉と3人の弟、1人の妹がいた。それに加えて両親、祖母が2人、母さんの弟であるおじさんと住んでいた。いつも賑やかで、食べ物をめぐって弟や妹とたくさん喧嘩をした。おじさんは昔から体が弱く、離れに住んではいたけれども、調子がいい時は一緒に食事をした。毎日毎日生活はぎりぎりで、姉や母さんは近くの村に豚の世話を手伝うことで金を得ていた。それでも何とか生活できていて、楽しい日々だった。

 けれども、何年もかけて築き上げてきた生活は、雪解けのようにあっという間に消えてなくなった。

 飼っていた豚が次々と病気にかかり、死んでいった。病気は瞬く間に隣町にも広がり、ひどい下痢のせいで、次々に豚は死んでいった。何もできなかった。昔ながらの治療を試しても効かなかった。人間には全く影響がなかったのは救いだったけれども。

 飼っていた豚があっさりと死ぬとは、俺は夢にも思っていなかった。生まれた時から豚と過ごして、10年近く面倒を見ていた。豚を殺し、近くの町に売りに行ったことも数え切れない。自分達が殺すことはあっても、勝手に死んでいくなんて思いもしなかった。豚はそうそう死ぬわけない、そんな錯覚があった。 

 俺たち家族と同じように豚を飼って生計を立てていた村人のほとんどは、村を去った。俺たちは代々受け継いでいた家を離れたくなかった。わずかな土地を耕し、芋や麦を作り始めた。けれども土地は痩せていて、うまくいかなかった。

 姉たちは歩いて3日はかかる街に出稼ぎに出ることになった。俺も一緒に村を出ることにした。両親はすでに高齢で、出稼ぎに出られるほど体力はなかった。弟、妹たちは両親と病気がちのおじさんの世話、少しばかりの畑を耕すため、うちに残ることになった。

 村を離れ、最初は姉たちと住み込みでソーセージを売る大きな商店で働いた。稼いだ金は仕送りし、家族の支えにした。けれども俺はさらに多くの金を稼ぐため、店をやめ、ラシュータ国の王都ヒンメルまで出た。

 初めてヒンメルについた寒い冬の朝のことを、俺は忘れない。

 あと数キロ歩けば、王都の城壁の門をくぐるところまで来ていた。雪が降っていて、朝日を受けた雪はキラキラと光り輝いていた。木が一本も生えていない荒涼とした平野の真ん中に、王都ヒンメルはあった。ヒンメルは灰色の城壁に囲まれていた。遠くからでも王のいるだろう城は見え、灰色の城の屋根に白い雪が積もっていた。灰色と白が混ざった城は美しかった。俺にとって雪をかぶった城は、懐かしいフラメ山脈を思い起こさせた。吐き出す息は白く、指先はかじかんでいた。夜通し歩いていたので、体は重かった。けれども、頭はすっきりしていた。そして唐突に俺は思った。ここを俺は、好きになる、と。

 それから俺は、軍に入隊した。自分の衣食住に困ることはなさそうだったし、なにより王都の城壁の門番である役人が、軍人は給料がいいと教えてくれたからだった。

 軍に入ってすでに7年になった。おじさんは5年前に亡くなったが、他の家族は元気にやっている。姉たちは2人とも、出稼ぎに行った町で婿を見つけ、子供をもうけた。うちの家族の遺伝なのか、両方とも7人兄弟で、毎日賑やからしい。王様の方針で戦いが多くなって、俺にとっては歓迎できることではないけれども、それでも家族が不自由なく生きていられるのなら、それで十分だった。

 だがもし俺が何か望むとするなら、俺は嫁がほしかった。


 朝の訓練の前に、俺は時間をもらうことができた。訓練場は城の入り口の脇にあり、城壁と城の外壁との間にあった。一度に50人くらいは余裕で動き回れるくらい広かった。訓練場と言っても、転んでも、大地にたたきつけられてもいたくない芝生が生えているわけでもなく、茶色い土がむき出しの広い平地だった。雨の日でも訓練は行われ、訓練の終わったとは泥だらけになって最悪だった。

 朝訓練をするのは、フィデリオ大将の指揮下にある兵士たちくらいだった。あとの兵士たちは昼間に訓練していた。俺たちは朝訓練のほかに、夕方にも訓練があった。けれども最近は、遠征の準備で朝訓練だけのことが多かった。

 ようやく空が白み始めていた。月も星も白く光っていた。今日も天気はよさそうだ。春が近づいてきたと言っても、早朝はまだ身にしみるような寒さで、息を指先に吹きかけ、両手をこすった。これからあのきれいな髪に触ると思うと心臓がバクバクと音を立てる。汚い手で触るのは気が引けて、薄く氷の張る井戸から水を汲んで、手が赤くなるほど洗った。

 きっとこれが一目ぼれというやつだと思う。

 フィデリオ大将と互角に剣で張り合う超絶美人が食堂にいると聞いて、慌てて食堂に向かった。俺が食堂についた時にはかなりの兵士がすでに集まっていた。人が集まっているのに奇妙なくらい静かで、それが不思議だった。人ごみの隙間から、大将達が見えた。そして見慣れない赤く長い髪。隙間風に時折、そのやわらかそうな髪が揺れた。その髪はろうそくの明りによってオレンジ色にも見えた。

 顔が見えなかったので場所を変え、再び人ごみの隙間から彼女を見た。食事中のその女性は、小さな口に合わせた大きさの食べ物を、次々に口に運んでいた。大口を開けることなく、流れるような動作に目が釘付けになった。淡々と、けれども優雅と言えるような仕草だった。髪が邪魔なのか時折、髪を耳にかけた。俺はその仕草にとてつもなく惹きつけられた。髪がさらさらしすぎているのか、幾度となくその仕草が繰り返された。無性に俺はその髪に触れたいと思った。


――もしもあの髪をくしでとかしたら、彼女は気持ちよさそうな顔をしてくれるだろうか?


 妹や姉も髪が長く、俺が髪をとかしてやったり、髪をまとめるのを手伝っていた。妹や姉はくしで髪をとかされるのが気持ち良いらしく、俺はよく髪をとかしていた。髪をとかしているときの妹や姉たちの、眠る直前のような穏やかな顔を見るのが俺は好きだった。

 ふわり。ひときわ強い風が食堂に吹き込み、赤い髪が鳥の羽のように宙に浮かんだ。髪の一本一本が光っているようだった。


「どいて、どいてくれ!」


 体が自然に動いた。彼女のもとに行きたい。彼女の顔をもっと見たい。あのきれいな髪を触りたい。髪に触って、それから、それから……ええと……とりあえず、俺の体は動いた。


――もうすぐだ。早く来ないかな……


 寒い中、両手をこすり合わせていると、次第に指先は温まり始めた。まだ他に兵士は誰もいなかった。朝の訓練までまだ30分ほどある。俺たちは10分くらい前に飛び起きるので、大概の兵士はまだ布団の中で眠っている。

俺はたまに何も考えず行動して、上司のヴィルさんや他の仲間に怒られることがある。今回も何も考えていなかったが、自分としてはよくやったと思う。自分から攻めないと、彼女に近づくことなんて、できっこない。彼女は古代兵器というよくわからない存在だけれども、とりあえず接近する。仲良くなってから、そのあとでいろいろ考えればいい。


「おはよう」


 背後を振り返ると、彼女が立っていた。ちょうど太陽が顔を出し始め、赤い髪を照らす。

まるで炎を背負っているように見えた。キラキラ髪が輝いている。目が釘付けになって、離れない。


「何してるの?ロルフ」


 はっとして、辺りを見ると、ヴィルヘルム少将が立っていた。眉間にしわを寄せて俺を見ている。少し離れたところで、ウーリ中将とフィデリオ大将がこちらを見ている。


「いえ、なんでもありません。おはようございます!!!」

「……朝から元気そうでうらやましいね」


 ヴィルさんは朝、機嫌が悪いのはいつものことなので、曖昧に笑みを浮かべて、彼女の方を見た。彼女は挨拶をした後、背後から昇る朝日を見るため、俺に背を向けた。彼女は寒くないのか心配になるほど、薄着だった。腰までの赤いコートに灰色の薄っぺらいシャツ。服の中に何か鎖の防具でも着込んでいるのだろうかと思うが、そういう服の下からの盛り上がりはない。

 彼女の横に立ち、眠そうにあくびをしているヴィルさんに声をかけた。


「あの、ヴィルさんや大将はなぜこちらへ?」

「え?……ああ、伝えてなかった?僕と彼女は遠征が終わるまで、行動を共にすることになった。そのため、後で話すが、僕の隊はフィデリオさん直属になるよ」

「え!行動を共にするとは四六時中一緒ということですか!?そ、それはいろいろと問題があると思われます!!」

「……そんなにべったりじゃないさ。一体、何を考えているんだ?あと、君が髪を結った後に、大将たちは彼女の能力を計りたいんだ。髪を結うのは手早く頼む」


 ヴィルさんは、見かけによらず沸点が低い。眉間にしわを寄せ、眼鏡のずれを直す。これはイライラしている証拠だった。わかりましたと返事をすると、朝日を見ている彼女に声をかけた。


「あの髪を結わせてください。ええと、それで申し訳ないですが、そこの大きな石に座っていただけますか?立ったままだとやりにくいですし」

「わかった」


 彼女が来る前に、彼女が座れるように大きめの石を運んでいた。そして、その石の上には、服が汚れないように、布を敷いていた。

 彼女は座った。俺は背後に回った。彼女の頭が、俺の腰くらいの位置にしていて作業しやすくなる。ヴィルさんは俺たちの右手に立った。


「あの、昨日話した通り、紐か何か持ってきていただけたでしょうか?」

「……これ」


 彼女は髪紐を俺に差し出した。昨日、食堂で声をかけたときに、彼女は髪をまとめるものを1つも持っていなかった。俺が使っている黒い髪紐はいつも予備を懐に手鏡と一緒に持っているが、結構使いこんだもので、それをいきなりどうぞ使ってください!とは言いにくかった。

 けれどもどうしても髪を触りたかった俺は、今日の訓練前に時間をもらい、彼女に髪を結う紐もしくは髪留めをもってきてくれるように頼んだ。

 彼女が手にしていた髪紐を受け取ると、その肌触りの良さに驚いた。受け取った髪紐は茶色で地味であったものの、手触りがよく、とても高級なものだとすぐにわかった。王様から渡されたものなのかもしれない。


「ありがとうございます。それと、希望の結い方はありますか?」

「特にない」

「わかりました。とりあえず動きやすいようにしっかりとした結い方にします。では、結っていきますね」


 ごくりと唾を飲み込んだ。そっと髪に手を差し込む。


「うわぁ……!」


 思わず声が漏れてしまった。想像以上の滑らかさだった。やわらかく、指に1度も引っかかることなく指から髪が抜けていった。うまくまとまるのか不安になるくらいだ。


「どうかしたのか?」

「あ、いえ、なんでもありません」


 下から声が上がり、慌てて髪をまとめ始めた。声がかからなければ、ずっと髪を撫でていたかもしれない。ヴィルさんは横から不思議そうに俺を見た。俺は、ひとまず髪を左右に分け、片方ずつ三つ編みにすることにした。右側の髪の束から取り掛かった。緊張のせいで、掌が汗でぬれて、細い髪の毛が張り付いてしまう。何度もズボンに掌をこすりつけては三つ編みをしていく。


「そんなに驚くほど滑らかなの?その髪。……イルザ、髪を触ってもいい?」

「どうぞ」


 ヴィルさんは許可をもらうと、彼女のやや長めの前髪を撫でた。


「へぇ、見た目通りさらさらしているね、きれいだ」


 ヴィルさんは声を上げると、そのまま撫で続けている。時折、前髪をすくい上げ、落としていく。髪の1本1本が太陽の光でオレンジ色に輝く。彼女は何も言わず、されるがままだった。

 右側の三つ編みを終えると、彼女に声をかけ、編んだ先をもってもらった。あまりにもさらさらしているものだから、三つ編みでさえすぐにほどけてしまいそうだった。これなら編み込んで1つにまとめた方が良かったかもいしれない。左側の三つ編みに取り掛かった。


「ヴィルさん、いくら許可をもらったからといって、女性の髪をずっと触っているのはどうかと思います。」


 ヴィルさんがずっと髪を撫でているのが気になった。自分が触り続けていたかったというのもあるし、何より好意を寄せている女性の髪を、自分以外の男が触っているのが嫌だった。


「え?ああ。ごめん」


 そう言って、ヴィルさんは手を離した。その間に左の三つ編みも完成した。彼女は何も言わなかった。彼女の頭の上で作業しているので、彼女の表情も、どこを見ているかもわからない。彼女にもってもらっていた右の三つ編みを受け取ると両方の先を髪紐で縛り、根元からねじってまとめていく。ひっぱりすぎて痛くないように細心の注意を払う。けれども、あまり引っ張らないと、髪が指をすり抜けてしまう。妹や姉たちの髪と差がありすぎる。


「引っ張りすぎて、いたくないですか?」

「問題ない」


 淡々とした声だった。その声には、何の感情も読み取れない。気を使ってくれているのか、それとも本当にどうでもいいのか。


「できました」

「……うまいものだね、それにずいぶん手馴れている、驚いた」


 三つ編みにした両方の束をさらにねじって1つにし、後頭部に半球状にまとめた。根本にしっかりと茶色の髪紐を巻き付けたので、おそらく、なかなかはずれないはずだった。俺はヴィルさんの感嘆の声に、笑みがこぼれた。完成とともに手を離すと、彼女は石から立ち上がった。


「ありがとう」


 背後を向いていた彼女はこちらを向いた。髪をまとめたので、細い首が寒そうに見える。さらさらの髪なので、まとめるのに苦戦したが、なんとかできた。後れ毛が色っぽい。髪を下しているのもいいけれど、俺は髪を上げていた方が好きだ。後れ毛に触れたくて手を伸ばした。


「あの、明日も、というか、毎日髪を結ってもいいですか?」

「わんこ君、よくできましたね~」


 急に、ウーリ中将の声がして、伸ばした手をひっこめた。いつの間にか、ウーリ中将とフィデリオ大将が近くまで来ていた。ウーリ中将は俺のことをわんこ君と呼ぶ。周りからも犬っぽいと言われるが、自分ではよくわからない。上司2人に向かって礼をした。


「うまいものだな。それで君は毎日、髪を結いたいのか?」

「あ、はい!できればそうしたいです!朝の訓練は毎日ありますし、長い髪は邪魔になると思います」


 フィデリオ大将に話しかけられることはめったにないので緊張した。ウーリ中将は、俺の結った髪をじっくり観察していた。彼女は動くことなく、どこか遠くを見ていた。


「フィデリオさん、早く始めましょう。訓練の時間になります」

「ああ、そうですね。早くしないと。フィデリオ、許可してもいいと思いますよ。ただし、ヴィルも早起きしないといけませんね」

「……それはあまりよろしくないですね、僕はそんなに朝は強くないので」


 ヴィルさんは眠そうに大あくびをした。


――そういえば行動を共にするとか言っていたけど、見張り役ってことなのか?

 

 彼女を見るが、ぼんやりと遠くを見ていて先ほどからずっとこんな調子だった。なんだか心がもやもやする。古代兵器と言われているのは知っている。けれども、味方だ。国で5本の指に入るほどの剣技をもつヴィルさんが見張るということは、警戒レベルは最大ということだと思う。

 ウーリ中将やフィデリオ大将を伺うが、いつも通りに見える。とりあえず、ここは彼女との接点を作り続けることが一番だ。この人たちが、彼女をどのようにとらえているかはなんとなくわかった。けれども俺には関係ない。近づく。そして問題があるなら、その時考える。猪突猛進、無鉄砲。それが俺のいいところ。


「えーそんな!ヴィルさん、起きてください!ほんの15分早く起きてくださればいいです!それに、それに……」


 言葉に詰まる。結局髪に触りたい、彼女に近づきたいという欲望からの行動だったので、そんなことをこの人たちに言ってしまえば、絶対に許可してもらえない。必死に納得してもらえるような理由を考えていく。


「イルザさん!髪を結ったら楽になりませんでしたか?長いから、邪魔でしたよねっ!?」

「特に変わりない」


 ええっ!!と心の中で絶叫した。助け舟を出してくれるとは思わなかったが、ここまで無関心、無表情で言われると傷つく。さらに俺は考える。そろそろ時間が本当になくなってきたのか、ウーリさんとヴィルさんが歩き始める。まずい、まずい!


「ええと、それでは……ああ、そうです!そうです!これから訓練ですよね?訓練中は地面に転がりますよね?そうしたら髪が汚れます、痛みます!ヴィルさんも触ったからご存知でしょう、イルザさんのきれいな髪を。せっかくの美しい髪ですから傷んだらもったいないです!!」


 うるさいと言われる大きな声で、フィデリオ大将に訴えた。フィデリオ大将は表情を変えず、イルザを見た。ヴィルさんは、早く起きるのが本当に嫌なのか、どうでもよさそうだったけれども立ち止まった。


「イルザ、少し早く起きるのは嫌か?」

「問題ない」

「そうか、なら毎日髪を結ってもらえ」

「わかった」


 やったー!!と、声こそあげなかったものの、思わずガッツポーズをしてしまった。それと同時にヴィルさんの片眉が吊り上がった。フィデリオ大将は、ウーリさんの後を追って歩き始めた。彼女も大将についていく。俺もなんだかわからないが、ついていく。


「フィデリオさん、なぜ髪を結うことを許可したのですか?」


ヴィルさんはフィデリオ大将の横に並んだ。ヴィルさん本人は隠しているつもりだろうが、声から苛立っていることがわかる。


「本人はどうあれ、邪魔そうなのは確かだ。それに武器に髪が絡んでけがの原因となっては困る」

「……」


 大将、かっこいいです!ありがとう!心の中で、フィデリオ大将に感謝の言葉を大量に並べた。


「あ、イルザ!その髪形、とても似合っていますよー!」


 少し離れたところからウーリ中将が叫んだ。空が青くて、天気は快晴。早朝の引き締まった空気が気持ちいい。

 気になることはあったが、とりあえず万事良好。

 明日は色っぽい後れ毛に触れたらいいなと考えながら、俺は彼女の細い首筋を後ろから見ていた。


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