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競り合い

 緊張をするのは当たり前……。

 今から勝負するのだから、どんな選手であろうが必ず緊張をするだろう。

 あくまでも人によって程度が違うだけの話だ。

 ここで緊張していない! といえるのは勝負から逃げているか、強がりを言っているだけだろう……。

 俺はそう思う。


 ゼッケンの並びで、アナウンスが選手を紹介していく……。

 学校名と選手名が読み上げられ、呼ばれた選手は頭を下げたり手を挙げたりと反応を見せる。

 強い選手や注目されている選手だと、スタンドから声援が飛んでくる事は当たり前。

 俺も名前を読み上げられ、審判の方と自分の学校のテントの方に頭を下げておく。

 これはある意味俺のジンクスだ。

 清々堂々と戦うって意思表示をしているつもりだ!

 勝負だから……、自分に出来る事を全てやる!

 十二名の選手の紹介が終わる……、いよいよだ。


『谷は背が低いから……、中距離だと不利だ』


 先輩の心配は当然でしょうね……。

 中距離ならピッチよりスライドの走法のほうが断然有利だって分かっています。

 それでも、負けたくない。


 審判がピストルを構える。

 心臓の音が五月蝿いと感じる……。

 駄目だ、集中出来てない気がする!

 焦るな……焦るな!!


 “パァーーン”


 自分の耳にスタートの音が飛び込んでくる!

 音と共に意識せずとも足が動いてくれている!

 いける! 焦るな……俺!


 第三レーン付近からのスタート。

 場所は悪くない。いや、どちらかと言えば良いほうだ。

 視界には既に飛び出した他の選手の背中が映っている。

 そして、外側のレーンの選手がインコースへと迫ってくる。

 さぁ、勝負だ!


 ハッ、ハッ、と右の選手の息遣いが鼓膜に届く……。

 近い、肘が迫ってくるのをタイミングをずらし避ける。

 無理に避けようとすると自分のペースが狂わされてしまう!

 多少の痛みなら問題ない。

 余りアウトコースばかりに気を取られるとインコースの隙間・・を見逃してしまう……。

 いかにしてインコースに入るかも重要になってくる。何時までもアウトコースを走ると、それだけ他の選手より長い距離を走る事になる。

 隙間が無ければ作らないといけない……。

 でも、隙間の事ばかりを考えているとアウトコースの選手によって進路を奪われたりもする……。

 飛び出す事に成功した選手は、最初の競り合いに参加する必要がなくなる。

 それだけで、アドバンテージが増える。

 前には見えるだけでも五人は居る。

 自分は真ん中か……。


『最初の位置は重要だ』


 何回もコーチから言われた。

 特に俺のようなピッチ走法の選手はダッシュが弱い。

 全員に当てはまることじゃないけど、スライドの一歩とピッチに一歩は大きな差だ!

 分かってる……。


 少し団子状態の第二集団、右の選手もインコースに入りたいから圧力をかけてくる。

 あまり無茶はしたくないが、少し速度を上げる! インコースの選手も譲る気は無いのか速度を上げる!


 ――今だ!

 

 俺に釣られて速度を上げたインコースの選手の後ろに入る、後は目の前の選手がペースメーカーをしてくれる。



 長い距離を走るときは、引っ張ってもらう人が必要になる。

 確実に必要か? と言われればそうでもないが、前を走るより後ろを走る方が楽である。

 プレッシャーを感じるのは先頭を走る選手であり、後ろを走る方は然程プレッシャーを感じない。

 追い抜く際に体力を使うが、それでも他の選手を引っ張るよりは断然体力面で優位である。


 最初の三百メートルを通過する……。

 此処から三周すればゴールだ!

 コーナーを走りながら先頭を走るグループを確認する……。

 くそっ! すでに競り合いをしている間に二百メートル以上の差が出来ている!

 

 どうする……?


 仕掛けるか?


 いや、まだだ! 今前に出れば、この第二集団を引っ張る事になる!

 俺はラストスパートが苦手だ……。

 短距離が苦手だ……。これは中距離だと致命的だ。

 競り勝つ確率が落ちるから……。

 だから、俺はどこかで前に出て勝負に出ないといけない。

 だからと言って、焦って前にでて何回も失敗を経験した。

 冷静な振りをしてても、頭は熱くなっている……。

 言い聞かせるように、焦る気持ちを落ち着けていく……。


 ハッ、ハッ! ハッ、ハッ!


 俺の後ろで選手の入れ替えがされているのを呼吸音から分かる。

 少しでも前に出ようと思うのは当たり前だ。

 二百のコーナーを過ぎる時に後ろの選手が追い上げに出始める……。

 コーナーで抜くのはストレートで抜くより体力を消耗するから普通は誰もしない。

 これがラストならありえるだろうが、このタイミングは最悪だ。

 俺を追い抜く選手が視界に入ってくる……。


 米田!!


 なぜ、今抜きに入った? 間違いなく選択ミスだ。

 なんだ? 一瞬視線が合ったように感じるが……。

 俺の前を走る選手と並走するように走っている……。


 おい! 疲れるだけだぞ!


 声に出したくなる!

 でも、米田にも作戦があるのだろう……。

 ん? 一瞬俺の方を見た事に気がつく……。


 おい……、ついて来い! って言ってるのか?


 後輩に引っ張ってもらうのは気に喰わんが、引っ張ってもらえるなら利用するぞ!


 俺が後ろに付くと、インコースの選手を抜くために速度を上げる。

 やっぱり、俺を引っ張るつもりか……。

 でも、ありがとう……。

 これが勘違いでも、今のタイミングで引っ張ってくれるのは正直嬉しい。

 タイムを見る余裕なく、米田の後ろを付いていく……。

 あと二周で全てが終わる!

 スポーツを文章にして表現するのは難しいことですね……。

 読み手に風景が連想できるようにと書いているつもりですが、どこまで通じているか正直不安であります。ではではでは

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